曇天の肌寒い3月の日。都心から離れ、江戸川区に向かった。新宿駅から都営新宿線に揺られること40分。「篠崎」駅で降り、徒歩3分。京葉道路沿いの「立ち食いそば 絆」に入る。秋葉原や新橋などと違い、確かに電車でのアクセスはいささか難ありではあるが、幹線道路沿いということで車を仕事道具にするお客が主な客層になるのだろう。

  • 篠崎「立ち食いそば 絆」で、春らしい「桜えびそば」を味わう

    「桜えびそば」(470円)

営業時間も早朝から昼過ぎまでとのことで、その点もまた差異のひとつである。車内からでもはっきり認識できるよう、紺の庇と暖簾に大きな白字で「立ち食いそば」「そばうどん」と書かれている。

まだ真新しさを感じる立ち食い店

広くとられた厨房をL字の立ち食いカウンターが囲んでいる店内。午前11時前。この時、先客は1名。常連らしく、店主と談笑中であった。奥の大型テレビから情報番組が大きなボリュームで流れている。店内は整頓されて清潔感もあり、真新しさも感じる。もしかしたらそれほど古い店ではないのかもしれない。

左手側に食券機があるので、まずそちらで購入。おすすめと思しき写真入りのボタンが4つ。天玉そばや春菊天そばなどがこちらに並び、下段には月見、たぬき、きつね、わかめやコロッケ、カレー、紅しょうが、ソーセージなど立ち食いそばの定番が揃えられている。天ぷらの単品ボタンもあり、バットに整然と並ぶ多種多様な天ぷらを追加注文する場合はこちらから購入すると思われる。今日のチョイスは「桜えびそば」(470円)。そばである旨を告げて、渡す。

ボリューミーな一杯を最後の一滴まで完食

完成までは30秒ほど。立ち食いそばは一分一秒を大事にする人の食事であることは、どの場所でも変わらない。丼は一回り大きく、通常のそば店に比べややボリューミィ。紅しょうが天ほどではないものの真っ赤なかき揚げ天がその上に浮かぶ。桜えびと玉ねぎがミックスされている天ぷらは、もちろん揚げ置きなのでやや湿気気味なのは致し方ない。さっぱりとした甘みのツユに浸して崩しながら頂く。

  • 「篠崎」駅から徒歩3分の「立ち食いそば 絆」

ネギは刻みネギで細かく、多め。麺もやわらかな細麺でするするとした口当たり。卓上の調味料も豊富で、鷹の爪やかつお粉、ゆず七味やごま塩(おにぎり用か?)など自分なりにアレンジできる。

最後の一滴までしっかり頂き、カウンター越しに返却。「ありがとうございました、行ってらっしゃいませ!」の声もあたたかい。働くオトナの、束の間のオアシスだ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。