今回ご紹介する立ち食いそば屋の名前は、おそらく「味じまん」。なぜおそらくかというと、店頭の黄色い看板にはどこにもそれらしき屋号が書かれていないからだ。唯一「味じまん」のみ、書体が違って見えたのでこの名前で呼ぶことにする。ちなみに某大手口コミサイトでは「岩本町スタンドそば」と登録されている。

  • 「いわし天そば」(390円)

昭和風情漂う、昔ながらの一軒

場所は、都営新宿線「岩本町」駅を降りてすぐ、神田川のほとり。秋葉原駅が最寄りと言っても差し支えない。また当店の位置する昭和通り沿いは立ち食いそばの激戦区として、近隣の店舗のいくつかは既にこの連載でも取り上げた。

まるでタイムスリップしたかのような、これぞまさに昭和という外観(と内観)。良く言えば味がある、悪く言えばやや煤けた風。戸は既に開けられており、白いのれんをくぐれば即店内。右手に厨房が奥まで、着席カウンターがそれに沿っていて、奥のカウンターは数段の階段でやや高くなっている。入口に冷水機があるのでこちらで水を取り、適当な場所へ陣取る。店員は3名。平日11時前、客も3名。

壁には短冊でメニューが並ぶ。ケースに並んだ天ぷらを中心にそばうどんはもちろん、ラーメンや酒のメニューも貼られている。オヤジのチョイ飲み場としての機能もあるようだ。おにぎり(既成品)やいなり寿司、ゆで卵は既に殻が剥かれていて、ラップに包まれていた。さて、何にするか悩ましいところだったが、ここはせっかくだからあまり見ないメニューをと「いわし天そば」(390円)を口頭注文。アジ天はしばしば見かけるが、いわし天はなかなか聞かない。

甘みを感じるツユが食欲をそそる

支払いは代引き。1分足らずで眼前のカウンターに置かれる。七味と刻み唐辛子があったので、ここは刻みをトッピング。見た目にもパッと華が咲いた。東京の温泉のような真っ黒のツユ。その色に反して、塩辛さはほとんどなく、むしろ食欲をそそる甘みを感じる。麺はやや太めで、がっしりとしたボディをズルズルとすすっていく。

  • 都営新宿線「岩本町」駅を降りてすぐ、神田川のほとりにある「味じまん」

さて、いわし天。無論揚げ置きなので、結構ガリガリとしていたものの、やはりアジとは似て非なる食感。身に対して骨が比較的強めで、カルシウムを摂取しているな~という実感。悪くない。

秋葉原の夜は早いが、ここに来ればそばやうどんにもありつけるし、しかも格安で酒だって飲めてしまう。候補のひとつにストックしておきたい店だ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。