浅草橋のお目当てだった店が臨時休業中。なに、このあたりならばそばには困らないはず、と線路沿いをぶらりと歩くと、目に入ったこちらの立ち食いそば店が「ひさご」だ。JR中央・総武線「浅草橋」駅から徒歩2分。JRのガード下の電車の振動音がもろに響く小さな店で、実はこれまでにも数回こちらには訪れている。

  • 天ぷらうどん(340円)

こじんまりとしたガード下の一軒

紺色の短いのれんがかかる、開け放たれた出入口からは中がのぞける。平日の午前10時過ぎだったが、店内には先客が2人。狭い店なので、客同士の距離も近い。どことなく常連が集う赤ちょうちんのようなオーラも放っており、初見だと少し入りにくい人もいるかもしれない。

勇気を出して(?)一歩踏み込むと、L字カウンターの立ち食いスペース。全部で5人並べるかどうかで、立っている人の後ろは通りにくいくらいの規模感だ。それに囲まれた厨房に店の方が2人。入るやいなや、「いらっしゃい!ごめんね、ちょっと、麺時間かかる!2~3分くらい!」との声。「あ、別に全然いいです。天ぷらうどん(340円)で」と答える。

食券機などはなく、口頭・代金引換式。中ではAMラジオ、時折電車の振動。輪切りのレモンが入ったボトルから水を汲んで、ボォっと待つ。チラッと隣を見ると、本を読みながらそばをすすっている人もいる。この環境で読書とは、変わった人もいるものだ。

ホッとする味わいの「天ぷらうどん」

思ったより天ぷらうどんは早く完成。天ぷらは、すなわち「かき揚げ」のことだが、色白で、具というよりも天ぷら粉が多めで、揚げ置きもあってかモッチリした食感。ツユは、色も味も濃い。強めの塩気の中に、キリッとした酸味を感じる。こういうパンチのあるツユには、そばよりも麺太でダシをよく吸ううどんが合うと思う。予想通りまろやかな口当たりになり、やさしいホッとする味になった。

  • JR中央・総武線「浅草橋」駅から徒歩2分の場所にある「ひさご」

メニューはほかに、たぬき、のり、わかめ、たまご、きつね、山菜、おろし、ちくわなど。冷しもあるが、どれも400円でお釣りがくるし、かけにいたっては300円を切っており、コストパフォーマンスも高い。近くには競合他店も多いが、覚えておきたい店のひとつだ。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。