この日、訪れたのは小田急線「代々木八幡」駅の「八幡そば」。構内ではないものの、駅からの階段を降りてすぐの場所にある。また、東京メトロ千代田線「代々木公園」駅の1番出口からも至近だ。

  • 「いか天そば」(490円)。トッピングで「わかめ」(50円)

さながら代々木八幡宮の『門前そば』のような屋号のこのそば屋、現在代々木八幡駅が工事中ということもあり、2つあるうちの片方の出入口が少しふさがれた格好になっていて目立たない。通り沿いの出入口も自販機がせり出して被さっているので、注意深く歩いていないと通り過ぎてしまうかもしれない。

昭和の風情漂う、温かみある店内

外観通り、というか、鰻の寝床のような細長い店内。いかにも「昭和の時代からこの地で長くやってきました」といわんばかりの渋さがにじみ出ている。狭いが、温かみのある町の食堂のような雰囲気だ。出入口付近に券売機があり、奥に向かってカウンターが1列伸びている。全て着席タイプで、立ち食いはなし。突き当りが厨房と返却口だ。メニューは温・冷のそば・うどんに分けて、かき揚げやコロッケ、とろろ、月見など、ベーシックな取り揃え。ここは「いか天そば」(490円)にトッピングで「わかめ」(50円)をつけてみることにした。

時間は15時前、先客はおらず貸し切り状態。チケットを持って適当な場所に座ると、愛想のよい女将さんが水を持ってきてくれる。細かいところだが、水を運んできてくれる立ち食いそばは稀。たまたま食券制なだけで、やはりどちらかといえば一般的なそば屋に近いのかもしれない。時間も3分ほど待った。

やや濃く塩気の効いたダシが味の決め手

丼を横断するくらいの、十分なサイズのいか天。揚げたてではないが、柔らかくやさしい甘みを感じる。麺はやや太めで、もちっとした歯ざわり。ツユはやや濃く、塩気の効いたダシでパンチが強い。追加したわかめも大正解で、なかなか肉厚。コリコリした歯ざわりがたまらない。立ち食いそば店のせかせかした雰囲気がないので、ゆっくり堪能させていただいた。

  • 小田急線「代々木八幡」駅に立地する「八幡そば」

思えば、この店は立ち食いそばで、あの店は普通のそば屋、などといった明確な区分けなどない。食券制であったり、価格帯、提供メニューやスピードであったりなど、大まかな自分の指標はあれど、早くて安くてうまいそばに野暮な分類は不要。今後も広い視野をもって、次の一軒を探していきたい。

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。