大臣・副大臣・政務官(政務三役)の経験者が、在任中に公用の電子メールはほとんど使わず、私用メールやLINEを業務に使っていたことが明らかになった。LINEなどのSNSが我々の日常に深く浸透していることがよく分かるだろう。

私たち社会人も、仕事上やプライベートでSNSを日常的に利用している。しかし学生とは違い、様々な責任が生じたり、行動が所属する会社に影響したりするようになる。SNSで求められる発言の注意点について解説したい。

  • 匿名の投稿でもバレるって本当?

発言で株価下落の危険も

前回も言及した通り、SNSでは所属などを明らかにしていなくても、知り合いからは「〇〇社の××さん」と見られている。たとえばFacebookやTwitter上で所属を明らかにしていなくても、名刺交換した相手や元々の知人にとっては明らかだ。

「うちの社は~」という個人的な投稿も、すべて所属する会社のこととしてとらえられてしまう可能性が高い。発言内容によっては、会社にマイナスのイメージを与えてしまうことになる。たとえば化粧品会社の社員が「化粧品は肌に悪いのでしたくないけど……」と発言していたら、問題になるのは当然のことだ。

特に社長などの役職者が発言している場合は、消費者の反感を買ってしまうこともある。実際、社長の発言で炎上した例は非常に多い。発言後株価が大幅に下落したり、不買運動につながった例もあるので、不用意な発言にはくれぐれも注意したい。

匿名の私用アカウントでも問題に

匿名でプライベートに利用しているだけでも、問題になったことは少なくない。ある人は採用担当者だったが、候補者に対するセクハラ投稿をTwitterの匿名アカウントで投稿していた。ある時上司に呼び出されて行くと、自分のツイートがすべてプリントアウトされており、言い逃れができずクビになってしまったという。

また別の人は、匿名のTwitterアカウントでクライアントや上司の悪口や愚痴を投稿していた。これもやはり同僚に発見されてしまい、その中に守秘義務違反に当たることが混じっていたため、自主退職する羽目になってしまったそうだ。判明したきっかけは、相手の「おすすめユーザー」欄に表示されていたためだったという。お互いがある同僚のアカウントをフォローしていたことで、つながってしまったのだ。

Twitterを愚痴のはけ口として使う人は少なくない。しかし、匿名でも知り合いが見れば人物の特定は容易となる。ランチの店、最寄り駅、電車の運行状況、歓迎会や花見などの社のイベント、会社で配られた土産、窓からの景色などが共通していたら、「同じ社の人なのでは」と推測がつく。さらに年代や趣味、投稿内容などを見れば、個人の特定は難しいことではない。

Twitterアカウントには、鍵をかけておくと安心だ。しかし鍵をかけたり匿名で利用していても、自分の発言ということが判明すると不利益につながるような発言はしないようにしたい。ネット上に書いたことは残り、言い逃れができない証拠となる。どうしても言いたい愚痴などがあれば、信頼できる人に口頭で言うようにしよう。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『Twitter広告運用ガイド』(翔泳社)など著作多数。テレビ・新聞・雑誌・ラジオ等メディア出演多数。Twitterは@akiakatsuki。自身のブログ「高橋暁子のソーシャルメディア教室」で情報発信も行っている。