副業元年と言われた昨年から、さまざまな副業が注目されているが、実際には副業をしたくても、何をどうすればいいのか分からないという人が多いのが現状だ。そこでオススメなのが「自分の得意なことを仕事にしてしまう」というパターン。この連載では、これまで起業の相談に応じてきたクライアントの中から、スキマ時間とこれまでの経験をいかし、自分の得意なことで収入を生み出している人を紹介していく。

  • エアブラシアートで起業したたちばなじんさん

    エアブラシアートで起業したたちばなじんさん

今回紹介するのは、家業の衰退から一度は退いた「エアブラシアート」を、副業からスタートさせて再び軌道に乗せてしまった、たちばなじんさん(57歳)。

もともと実家が車屋さんで、車両へのカスタムペイントとしてエアブラシアートを仕事としていたたちばなさんだが、本人がメニエール病を発症し、工場勤務が難しくなってしまったことと、カスタムペイントのブームが去ったことで仕事が激減。一旦はエアブラシアートから離れることに。

その後、ご主人の会社に経理事務として勤めるも、離婚が原因で無職に。それがわかった時点から、やむを得ず副業状態でエアブラシアートを再開させたという。

リスクの低いウェブからのスタート

「再開したのが、2004年頃だったと思います。パソコンはまあまあ得意なほうでしたので、自分でホームページを作って、エアブラシDVDの販売を始めましたら、よく売れました」。

これはとても大切なことだ。いきなり仕事を請け負おうとしたり、教室を開いたりしようとするのではなく、DVDの販売といった方法から始めるほうが、リスクも少なく、時間的拘束も少ない。筆者も副業の始め方としてオススメしている。

たちばなさんが手応えを感じ始めた頃、「直接、エアブラシアートの描き方を教えてほしい」といった問い合わせが入り始めたそうで、いよいよエアブラシアートを教える教室を開講することとなる。

  • エアブラシアートの描き方が知りたいと問い合わせが入るように

    エアブラシアートの描き方が知りたいと問い合わせが入るように

集客の課題を解消するためにしたこと

しかし、エアブラシアートそのものがそれほど知られているわけでもなく、非常に少ない生徒数でのスタートだったそうだ。

しかも、講座内容は1日で教えるワンデーレッスンのみだったので、常時新規の生徒さんを集めなければならず、教室運営は初めから難航したという。

「最初の頃、自分なりにカリキュラムを考えてやっていたのですが、初心者さんには難し過ぎたようで、皆さん、受講中から既に挫折しそうな雰囲気も漂っていたんですよね」。

しかしたちばなさんは、この仕事を本業にしなければならなかったため、猛勉強を始める。

「受講生さんの立場に立つと、1回こっきりで身につかない習い事よりも、何度も通ってしっかりした技術が身につく方がいいと思いました。生徒さんが極力挫折しないような内容も考えました」。

連続講座を作ったり、受講料の見直しをしたり、教え方も習い事として継続していける内容に変えたりと工夫した結果、受講のリピート率が上がり、新規の生徒も増えていった。

  • 集客の課題は徐々に解消していった

    集客の課題は徐々に解消していった

アートへの思いと生徒さんへの思いが原動力に

こうした努力により、今では月に25万~45万円の収入となり、本業として軌道に乗っているのだという。

また、女性限定の教室にしたことも、男性講師は苦手だと思っている方が来てくれるきっかけになっているとのこと。安心感が生徒さんを引き付けるのだろう。

そうして、たちばなさんを選んで来てくれる生徒さんが「できた!」と喜んでくれることや、だんだん上手になっていく様子を見ることが、たちばなさんのやりがいになっているのだそうだ。

そんなたちばなさん、今後の展望をこのように語ってくれた。

「エアブラシアートをするのは、昔も今も変わらず男性が多いですので、もっと女性にも広めたいですね。女性が、水彩画、油彩画を楽しんでいるように、エアブラシ画も普通に楽しんでほしいと思います。そのために、女性向けのエアブラシ教室を全国に広めたいです」。

一度は諦めた仕事を、違うスタイルとはいえ、見事に復活させたたちばなさん。マーケティングの勉強と実践への努力は並大抵のものではなかったことが伺える。すべてはアートへの思いと、生徒さんへの思いが、原動力となったのだろう。この流れのまま、全国展開してほしいと願う。