“ワンコインとちょっと”で味わえる、天国みたいな時間、それが銭湯だ――この連載では、毎週末の銭湯巡りを趣味とする街歩きライター・デヤブロウ氏が、都内&近郊の選りすぐり銭湯を訪ねて、湯の特徴や整うポイント、ちょい寄りスポットまでご紹介。今回は「大井町駅周辺の銭湯&温浴施設5軒」。


  • 大井町駅の北側に直結する大井町トラックス。その横には東京総合車両センターが広がる

    大井町駅の北側に直結する大井町トラックス。その横には東京総合車両センターが広がる

大井町は情報量が「多い街」である。JRの駅ビル『アトレ』は南北2棟に分かれているし、直近の『イトーヨーカドー』も含めれば、駅直結の商業施設がなんと3つ。駅北側ではJR東日本の『東京総合車両センター』が巨大な敷地面積を見せつけ、その西には2026年3月28日開業の最新スポット『OIMACHI TRACKS(大井町トラックス)』が威容を誇示する。その逆の東側にあるのは、昭和で時が止まったようなディープ過ぎる酒処『東小路飲食店街』だ。

  • 東小路飲食店街は隘路に呑兵衛が行き交う

    東小路飲食店街は隘路に呑兵衛が行き交う

また、大井町ではJR京浜東北線・東急大井町線・りんかい線(東京臨海高速鉄道)の路線、そして道路や市街が上下に織り重なっている。駅周辺は前述の車両センターに対して台地状になっており、アトレ2棟の間でも谷間のようにJRの路線が露出するので、街自体が薄皮のように線路敷地へ被さっている印象だ。初めて訪れると迷うことも多いが、慣れればコンパクトな範囲に新旧の店舗・文化がギュッと詰まった、独特の風景とアップダウンを楽しめる街でもある。

そんな大井町を一通り散策した後は、ぜひ銭湯などでスッキリしたい。大井町では「奇跡の復活」が話題となった銭湯が営業しているほか、若干離れた1駅隣の下神明駅近くにも良質な銭湯がある。他にもスーパー銭湯やサウナ施設もあり、意外と温浴施設が充実したスポットなのだ。

■老朽化で閉館後2022年に復活、新旧の設備&客層が入り混じる『すえひろ湯』

大井町駅の南側ロータリーと、そこに隣接する『阪急大井町ガーデン』の向こうは、中低層のマンションが続く住宅街となっている。落ち着いた街並みのところどころに個人経営の飲食店や居酒屋があり、雑然とした駅前とは打って変わって物静かなエリアだ。その中にあるのが、最初に紹介する『すえひろ湯』である。

  • 住宅街の中で明るく灯るすえひろ湯

    住宅街の中で明るく灯るすえひろ湯

すえひろ湯はかつて施設老朽化等のため閉店予定であったが、同じ品川区内にある人気銭湯『金春湯』のオーナーが営業を引き継ぐ形で、2022年にリニューアル・営業再開したことで銭湯好き界隈では知られた存在だ。建物は一般的なビル型銭湯であり、外観は四角いブロックを敷き詰めたような窓ガラスや植栽に飾られて、公共施設のような雰囲気である。入口横に掲げられた濃緑色の暖簾に「銭湯 サウナ クラフトビール」と書かれているとおり、現在は風呂上がりに缶・瓶・生のクラフトビールを飲める点も、改装後のアピールポイントだ。

  • 入口横には小さくかわいい看板もある

    入口横には小さくかわいい看板もある

内装はフロント・脱衣所・浴室まで、リニューアル前の構造と雰囲気を可能な限り留めつつ、ところどころを清潔化や新設備の導入でレベルアップさせている。白~ベージュのタイルが貼られた浴室内は、洗い場の配置が個性的。浴室中央に八角形のスペースを設けて、そこを囲う衝立部分の内外にカランを設置しているのだが、これもリニューアル以前から残る特徴である。

浴槽はマイクロバブル風呂、電気風呂、座風呂、寝風呂と一通り備えており、内風呂のみで湯温はいずれも中くらい。特にマイクロバブル風呂は浴槽が広めなので、長身の人でもゆったり脚を伸ばせる。身体に負荷をかけずに、心地よい温度とバブルのマッサージ感を味わえるだろう。

リニューアルによって大きく変わったのは、サウナと水風呂だ。サウナは格納式ストーブサウナの2段式で、室温は95℃とそこそこ高め。室内が奥に細長く、一番奥の上段でグワッと熱気に踏ん張り続けたり、逆に手前の下段でサッと済ませたりと、サウナ利用の好みや体質に応じた使い方が可能である。以前からあった浴槽の一部を拡張して水温15℃の水風呂に変更し、洗い場の横にととのい椅子のスペースも導入など、サウナー向けの親切設計である。

  • すえひろ湯の暖簾には銭湯とサウナに並んでクラフトビールも書いてある

    すえひろ湯の暖簾には銭湯とサウナに並んでクラフトビールも書いてある

なお、すえひろ湯は今後の銭湯文化の継承にも向けて、親子での銭湯利用やランニングステーション(ランステ)としての利用も推奨しており、盛んに取り組みや情報発信を行っている。サウナや銭湯ランを目当てに訪れる若い客層と、以前からすえひろ湯に通っている高齢の常連客とが交差する、昔と今の銭湯文化を感じられる店舗だ。


『すえひろ湯』:東京都品川区大井1-42-4/最寄駅:JR京浜東北線「大井町」から徒歩4分/平日15:00~25:00、土日祝 10:00~25:00(火曜休)/料金:入浴550円、サウナ600円、レンタルタオルセット200円(フェイス・バス)/駐車場なし


■メタケイ酸の天然温泉&露天風呂が名物! 狸がマスコットの『西品川温泉 宮城湯』

  • 品川区立しながわ中央公園は親子の遊び場にもなっている

    品川区立しながわ中央公園は親子の遊び場にもなっている

東急大井町線で大井町駅から一駅先の、下神明(しもしんめい)駅。実は大井町駅からは徒歩距離で800m程度しか離れておらず、ここも大井町エリアの一部と言ってよいだろう。駅のすぐ近くには防災用のヘリポートや運動施設を備えた『品川区立しながわ中央公園』もあり、健康面・安全面でも住みよい環境だ。

  • 外観は普通のビル型銭湯だが、内部はかなり独特な宮城湯

    外観は普通のビル型銭湯だが、内部はかなり独特な宮城湯

その公園から、湘南新宿ラインと横須賀線(東海道新幹線)の高架下をくぐった先にあるのが、ビル型銭湯の『西品川温泉 宮城湯(みやぎゆ)』である(※以下『宮城湯』と記載)。ここは無味無臭で「美肌の湯」とも称されるメタケイ酸の天然温泉が売りであり、入口看板も和風の温泉旅館テイストだ。入口手前には狸の信楽焼が置かれているが、この狸は宮城湯全体のマスコット。フロントには可愛い狸のぬいぐるみが飾られており、狸のステッカーも販売しているほか、浴室内の飾りまであちこちに狸が潜んでいる。

  • 宮城湯のお客さんを見守る狸さん

    宮城湯のお客さんを見守る狸さん

宮城湯は男湯と女湯が毎週木曜日に入れ替わるタイプであり、入口から階段またはエレベーターで2階のフロントに上がり、そこから1階浴室に降りるか、3階浴室に登るかという珍しい構造だ。筆者が訪れた日は3階が男湯側の週であった。

脱衣所は真新しく、一部の壁が紺色でモダンな佇まいである。浴室は洗い場が壁沿いのほか、室内中央にも島のように点在しているのが特徴。室内の動線がかなりゆったり取られているので歩きやすく、他の客にぶつかりにくいのが良い。内装は白〜ベージュのタイルで、ところどころに老朽化が見えるものの、全体的には綺麗な印象だ。

設備はL字型で若干熱めの浴槽(ジェットとバイブラ込み)、寝風呂、水風呂、そして露天風呂スペースとなっている。とりわけ、この露天風呂が非常に心地よい。お湯の温度は若干抑えめで外観は岩風呂タイプとなっている。頭上の風景がとても開放的で、昼には青空、夜には星を眺めながら、メタケイ酸の温泉で肌を労ってやれる。都心にいながらも温泉地に来たような気分だ。

サウナは2段タイプで室温は100℃前後。他のサウナではウッドスタイルが定番の中、宮城湯のサウナは珍しい白いタイル張りだ。室内BGMはなく、目を閉じて瞑想するのに最適だ。かなりガッツリ冷やす方の水風呂とも好相性である。なお、サウナ利用時は男湯で2時間、女湯で3時間の制限があるほか、20名の人数制限もあるので要注意である。

  • 宮城湯の入口は和の雰囲気

    宮城湯の入口は和の雰囲気

とりわけ日曜日の夕方などは、フロントの休憩スペースで数人がサウナ待ちをすることも。フロント横の水槽では熱帯魚が飼われているほか、物販スペースもあるので、それらを眺めつつ暇をつぶすのも良いかも知れない。子供を遊ばせておく玩具も置かれており、ファミリー層向けのホスピタリティにも配慮した、地元密着の温泉である。


『西品川温泉 宮城湯』:東京都品川区西品川2-18-4/最寄駅:東急大井町線「下神明駅」から徒歩5分/平日15:00~24:00、土祝 13:00~24:00、日曜11:00~24:00(水曜休)/料金:入浴550円、サウナ400円、レンタルタオル50円(フェイス)150円(バス)/駐車場なし


■大井町は「お風呂やさん」集中エリア!

上記のビル型銭湯2軒にも、実は大井町近辺には銭湯が多い。上記のすえひろ湯からさらに西向き(JR横須賀線・西大井駅の方向)に歩いていった場所にも、昔ながらの宮造り建築が見事な『東京浴場』『大盛湯』、ビル型銭湯の『みどり湯』と複数店舗が健在だ。これらの近くには光学機器メーカー『ニコン』の運営する企業博物館『ニコンミュージアム』もあるため、カメラファンであればここを見学し、ついでに近辺の銭湯へ行くという休日ルートも良さそうである。

加えて、大井町はスーパー銭湯やサウナ施設など、銭湯以外の温浴施設も複数あることが特徴。これらは銭湯(一般公衆浴場)よりも入館料は高額なものの、いずれも設備充実の良店ばかりなので、少しお財布に余裕があるならば利用してみたくなる。

●『おふろの王様 大井町店』

  • 「大井町のお風呂屋さん」と聞いてココを連想する人も多いのでは

    「大井町のお風呂屋さん」と聞いてココを連想する人も多いのでは

JR大井町駅南側の阪急大井町ガーデン2階にあるスーパー銭湯。東京では他に小平市花小金井や多摩市に店舗を構え、ほか埼玉県・神奈川県を合わせて計10箇所に構える「おふろの王様」系列の、都心部で唯一の店舗である。

天然石造りの露天風呂では温泉成分を再現した人工温泉に入れるほか、人気設備の炭酸泉は露天スペースと浴室内で合計2種類を用意(内風呂の方は『高濃度炭酸泉不感湯』)。サウナも露天スペースから入る屋外蒸風呂と、浴室内の広々したキングスサウナの2種を利用できる。レストランやマッサージスペースもあり、駅から直近でアクセスも良好。温泉で一日ゆっくりリラックスしたい人に推奨の店舗だ。


『おふろの王様 大井町店』:東京都品川区大井1-50-5 阪急大井町ガーデン3階/最寄駅:JR京浜東北線「大井町駅」から徒歩3分/9:30~翌8:30 ※1:00~6:30は入館不可(無休)/料金:平日大人1,500円、土日祝大人1,950円、平日朝風呂大人1,050円、土日祝朝風呂大人620円/駐車場30分ごと200円、24時間最大1,800円(特定日を除く)


●『泊まれるサウナ屋さん 品川サウナ』

  • 角ばった独特の外観にオレンジの「サ」が輝く

    角ばった独特の外観にオレンジの「サ」が輝く

駅南側イトーヨーカドーの裏側にあるサウナ・カプセルホテル兼用施設(※男性専用)。2024年6月にオープンしたものの、その後すぐにさらなる改良とブラッシュアップのためリニューアル工事を断行し、同年8月に再オープンしたという変わった経歴を持っている。

拘りが光るサウナは、最新サウナ設備のアウフグースサウナ【KUU】と、さながら洞窟のような雰囲気のセルフロウリュサウナ【ZEN】の2種類。水風呂も水深や水温の違うものを3種類備え、一番冷たいものはなんと8~9℃! ジャングルのような外気浴・露天風呂スペースや、プラネタリウム風のととのい部屋もあり、サウナの楽しみを徹底追求したデザインだ。もちろん、店名通り宿泊利用も可能である。


『泊まれるサウナ屋さん 品川サウナ』:東京都品川区大井1-6-1/最寄駅:JR京浜東北線「大井町駅」から徒歩1分/5:30~翌2:30(サウナ)15:00 in~翌10:00 out/料金:980円(~60分)、1,580円(~120分)、2,180円(~180分)、タオルセット180円(フェイス・バス)/駐車場なし


●『サウナメッツァ大井町トラックス』

  • 大井町の最新施設の中にも湯処が!

    大井町の最新施設の中にも湯処が!

2026年3月28日に街開きを迎えたOIMACHI TRACKS(大井町トラックス)の商業ゾーン「SHOPS & RESTAURANTS」4階に誕生した最新サウナ。最大の見どころは日本初の「トラムサウナ(※男性専用)」。日本各地で最先端かつ未来的なサウナを手掛けるサウナクリエイティブ集団・TTNEがプロデュースしており、大井町駅の電車をモチーフに独創的なサウナ空間を演出している。

浴室外も全てが最高品質であり、館内着はリカバリーブランド「テンシャル(TENTIAL)」がスポーツ科学に基づき機能性とデザイン性を兼ねた快適な製品を使用。Wi-Fi・電源完備されたコワーキングスペースもあり、大井町駅直結という利便性を最大限に発揮して、ビジネスと組み合わせたサウナ利用にも最適である。


『サウナメッツァ大井町トラックス』:東京都品川区広町2-1-3 OIMACHI TRACKS 4階/最寄駅:JR京浜東北線「大井町駅」直結/6:00~翌2:00/料金:男性2,480円(平日100分)、3,180円(土日祝)/女性1,980円(平日100分)、2,680円(土日祝)ほか、70分・130分コースあり/駐車場は大井町トラックスのものを使用


このように、昔ながらのカジュアルな銭湯から、最新鋭・ラグジュアリーなサウナまで、様々な価格帯&テイストの「お風呂やさん」が揃っているのが大井町である。JRで都心部や横浜方向にも行きやすいほか、りんかい線のおかげで湾岸部への交通も良好。東京ビッグサイト等でのイベント帰りに、ぜひ自分好みの湯処をあたってみてほしい。