結婚前は常にスキンシップをとっていた2人も、夫婦として生活をしているといつの間にか「男女の愛」から「家族愛」にシフトすることはありませんか。男女の関係からは遠ざかり……、セックスどころか手をつなぐ頻度すら少なくなくなっていることも⁉ とはいえ、そもそも夫婦生活にセックスやスキンシップは本当に必要なのでしょうか? 科学的な視点から堀田先生に教えてもらいましょう。

■疲弊しているときこそスキンシップが必要

お互いの関係性の変化はもちろん、生活リズムのズレや疲労から、スキンシップの機会が減ってしまう……という悩みはよくある話。ですが、せわしなさや疲労で心がささくれだっているときこそ、触れ合うことが大切なんです。

カーネギーメロン大学のマーフィーの研究では、404人の健康な成人に対して毎日、電話インタビューを実施。2週間にわたって、日々の感情や行動内容、トラブルなどに加え、ハグの有無についても調査。すると、1日(24時間以内)に1回ハグをしていた人の93%が、トラブルに見舞われていても、精神的に穏やかで肯定的な気持ちでいることが判明。さらに、人間関係のトラブルも少なくなったことも明らかにされています。

■触れ合いが生み出す"幸せホルモン"

これらはみなホルモンの一種である「オキシトシン」の効果です。"幸せホルモン"とも呼ばれるオキシトシンは、人と触れ合ったり、会話をすることで分泌されるのですが、オキシトシンが分泌されていることで気持ちが穏やかになったり、幸福度が増したりすることは複数の研究から明らかになっています。

ブリガム・ヤング大学のホルト・ランスタッドらの研究では、夫婦をはじめパートナー間のスキンシップを増やすと、オキシトシンが増加することがわかっています。

ちなみに、カーネギーメロン大学のコーエンの研究では、ハグをしていた人は罹患(りかん)リスクが減少することも証明されています。人の免疫力さえも強化してしまうのがハグなのです。

と言われても、「ハグ」はハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。そんなあなたに朗報です。ハグが難しいという人は、手をつなぐだけでもプラスの効果があるようですよ。

■手をつなぐだけで、体の痛みや心の傷が緩和⁉

カリフォルニア大学ロサンゼルス校のサヒらの研究によれば、手をつなぐだけで体の痛みに加え、心の痛みも緩和される鎮痛効果が明らかにされています。

また、コロラド大学のゴールドスタインの研究においては、手をつなぐだけで2人の脳波が「同期」することが判明。鎮痛のメカニズムは本研究では解明されていませんが、手をつなぐことで脳波が同期され、相手に感情移入ができ、その結果痛みが軽減するといわれています。

ハグに比べると手をつなぐ行為は、ささやかなスキンシップに感じるかもしれません。ですが、そのささやかな触れ合いで同じ痛みを感じ、分け合えるのはすごいことですよね。


今回、"スキンシップをしない方がいい"という研究は見つかりませんでしたが、"スキンシップがあるとよりよい効果をもたらす"という研究は複数存在しました。そこからも分かるように、夫婦にとってスキンシップはあって損することはないようです。

必要か否かはそれぞれの判断ですが、「スキンシップがプラスにはたらく」ことを前提に、まずは手をつなぐことからスタートしてみるのはどうでしょう? せっかく一緒になった2人だからこそ、恥ずかしがらずに触れ合いを取り入れてみてください。