保健師の本田です。外は段々と寒くなり、家に籠ってコタツとミカンで一息つきたい季節がやってきました。

籠っているとなんとなく寂しい気持ちになったり、暗くなるのも早くなり少し感傷的になったりと鬱々とした気持ちになることはありませんか? 今回はその「鬱(うつ)」の感情に焦点を当て、さらに季節によって発症する「季節性うつ」について紹介していきます。

「うつ」の危険サイン

そもそも“うつ”ってなんでしょうか? 辞書だと「うつ=心が晴れ晴れしないこと」という意味となります。この感情は誰しもが感じることですし、感じない人はいないはずですよね。

ただ、このうつという感情が長期化(2週間程度)してしまうと危険となります。また、興味や喜びを感じられなくなることや疲れやすくなる、罪悪感を芽生え始めるなど変化があるのも要注意といわれています(※1)。

分かりやすい症状悪化の例を紹介します。もし、宝くじが当たった場合、

健康なうつな人の思考:「最近、嫌なことが続いたけど、たまにはいいことがあるもんだなぁ。さて、何に使おうかな?」

危険なうつな人の思考:「こんな私が宝くじに当たるなんて。きっとこの先もっと悪いことが起こるに違いない。怖い」

と思ってしまいます。

「季節性うつ」の特徴とは?

「季節性うつ」は秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春先の3月ごろになると良くなるというパターンを繰り返すというのが特徴です(夏季に症状が出るケースもあります)。冬に発症することが多いため別名「冬季うつ」や「ウインター・ブルー」、または「季節性感情障害」とも呼ばれています。

この病気は1984年にアメリカの精神科医のノーマン・ローゼンタールにより「冬季うつ病」として初めて報告され、広く知られるようになりました。

女性や若年者(20歳代)に比較的多いとされ、我が国の一般人口を対象に行なった調査では、「2.1%」に疑われたとも報告されています(※2)。

「季節性うつ」と一般的なうつ病とは何が違うの?

「季節性うつ」の症状は主に

(1)過眠
(2)過食(特に炭水化物、お菓子類)
(3)体重増加

と言われており、一般的なうつ病とは異なる症状が目立ちます。また、メンタル面でも「意欲低下や思考が進まない」「倦怠感がある」などの症状が中心で、抑うつ感はそこまで目立ちません。

どうして“冬”に発症してしまうの?

これには“日照時間”が大きく影響していると考えられています。

日照時間が短くなると、セロトニンやドーパミン等が減少し、うつを引き起こしやすい傾向にあります。こうした変化に敏感な人が、「季節性うつ」に陥りやすいと言われています(※3)。なお、セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳の疲れを防いで心を安定させます。

また、日照時間が短くなり、体内時計をつかさどるメラトニン分泌のタイミングが遅れ、「体内時計」が乱れてしまうのも原因とも言われています。例えば、時差ボケや深夜業の仕事、不規則な生活が続くと、体調不良が起こしてしまうように冬でも同じような症状が出現します。

すぐにできる!「季節性うつ」の対策!

兎にも角にも「朝の光を積極的に浴びましょう。しっかりと朝起きて太陽の光を浴びる、規則正しい生活習慣が効果的です。積極的に光を浴びることでセロトニン、メラトニンが作られますので対策だけでなく、 治療にも役に立ちます。

他にも

・バランスの良い食事をとる

セロトニンは、トリプトファンから作られます。 トリプトファンは体内で作ることができず、食物から摂取しなくてはなりません。

<トリプトファンを多く含む食物>(※4)

バナナ カボチャ チーズ、豆乳 など

・規則正しい生活を送る

就寝時間や起床時間を決めて、生活リズムを整えましょう

・有酸素運動を取り入れる

ウォーキングなど一定のリズムで行う適度な有酸素運動は、セロトニンの生成を促すほか、交感神経を抑え、回復と癒しを与える副交感神経を優位にすることができるので効果的です。

最後に……

季節性うつは簡単に自己診断できる質問票が開発されています(※5)。以下の表は“SPAQ (Seasonal Pattern Assessment Questionnaire)”と呼ばれ、アメリカで開発された質問票となっています。参考程度にぜひ一度ご確認してみてください(あくまでも目安です)。

合計点が、7点以下であれば「正常範囲内」、8点~11点であれば「季節性うつの前段階」、12点以上は「季節性うつの可能性がある」となります。

  • SPAQ (Seasonal Pattern Assessment Questionnaire)

コロナ禍の今、外出自粛やテレワーク等で部屋にこもることが増え、より日光不足、栄養の偏り、運動不足になる傾向となっています。季節性うつは誰にでもなり得る病気です。少しでもリスクを減らすため、できることから始めましょう。

心配なことがありましたら企業内の産業医や産業保健師にご相談、またはお近くの病院・クリニックを受診をしてください。

※1 アメリカ精神医学会(2015)DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引 医学書院.
※2 三島和夫(2016)『臨床精神医学』第45巻増刊号,p.178-180,アークメディア
※3 Lambert, et al. Lancet 2002
※4 文部科学省 日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表
※5 Melrose, et al. "Seasonal Affective Disorder: An Overview of Assessment and Treatment Approaches". Depression Research and Treatment. 2015 (ID 178564): 1-6.