今回から2回に分けて、この夏休みに参加した日本最大級のロードレース大会「第36回シマノ鈴鹿ロード2019」で考えたことをお伝えしたいと思っています。

ロードバイクのコンポーネント※で世界シェアをとる「シマノ」さんが、なんとロードレーサーのために、あの鈴鹿サーキットを2日間も貸し切ってくれるというお涙ものの企画なんです。

かつ、私はF1世代でもあるので、あのアイルトンセナがホンダF1で駆け抜けた鈴鹿サーキットを、自分の愛車(ロードバイク)で走れることは、何にも代えがたい喜びがあります。

※ロードバイクの部品のうち、セットで設計・製造されるパーツ群のこと

という訳で、家族を連れて鈴鹿サーキットにレースをするために向かったのです。 私が出場するのは、鈴鹿サーキットを2周する種目と、3周する種目です。1周は約5.8km、かなりテクニカルなコーナーが何箇所もあり、なかなかの高低差もある難易度の高いコースです。車で走るのとは逆周りになり、最終ゴールは3−4%の斜度のある上りストレートのスプリントになります。

鈴鹿サーキットのレイアウトが気になる方は、同大会Webサイトのコース紹介ページをチェックしてみてください。

朝4時にサーキットが開門し、最初にやることは場所取りです。え? なんで? と思う方もいると思いますが、今回出場するのは"本気のレース"、しっかりとした「準備」は欠かせません。それができる場所を確保する必要があるのです。

今回は一緒にレースに参加してくれたメンバーが、チームのために朝一でコース間近の「ピット」内に準備する場所を確保してくれました。そこで私たちが出場する2周と3周の部までに、朝ごはんを食べ、音楽を聴いたりしてリラックスをし、その後「ウォーミングアップ(アップ)」を行います。

ここでアップが十分にできるかどうかで、ほぼレース結果は決まると言っても過言ではありません。私自身はスロースターターの部類に入るようで、いきなり最高パワーを発揮することはできません。いつもは30分以上自転車に乗ってから、ようやく本調子になります。なので、レースの1時間前からゆっくりとアップをし、身体の調子を整えていきます。

  • シマノ鈴鹿ロード出場 特別編(1)- 最高の成果を出すための「準備」とは

    鈴鹿サーキットピット内で準備する場所を確保し、ローラー台を使って、レース直前まで筋肉を動かし、身体を温めます

10時半からのレースが近づいてきました。初めての鈴鹿サーキットでのレースですが、それほど緊張もせずにスタートラインに立つことができました。これもしっかりと準備ができたという心理的な安心感があったからだと思います。そして、いよいよレースがスタートします。目標は全体の上位3割に入ること。何とか先頭集団の中でゴールしたいと思っていました。

  • スタート前の様子。こんなに沢山の人達と走るのかーーと

準備の重要性は、ビジネスにおいても同じです。私は若手社員が提案日の前日まで提案書に何も手をつけておらず、前日の夕方から企画書を書き始め、夜遅くまでかかけて完成させるというシーンを多く見てきました。

結果的には、誤字脱字があったり、しっかりと思考が通っておらず、骨子が曖昧で何を伝えたいのかが分からないものが出来上がってきます。これでは、お客様に響くような提案にはなりません。おのずと成果にもつながりません。

先にも述べたように、私は自分が「スロースターター」だと分かっているので、1週間前から提案のシナリオを練ることから始めます。必要なデータや事例が出てきた場合、それを集める時間を確保します。

もしかしたら違う部署の人にもヒアリングしたり、欲しいデータを集めるのに数日かかるケースもあるからです。カレンダーでスケジュールを抑えたら、提案当日までに確実にステップを刻み、骨太なメッセージがあり、お客様にとって「プレゼント」になるような提案を作り上げます。

ここで大事なのは、必ず前日までには絶対に70点は取れる状態を作ることです。もし前日に突発的な事象が起きても、そこまではしっかり準備できているという心理的な安心感から、焦らずに対処・対応することができるのです。結果は当然、コンペであれば勝ちますし、失注確率は圧倒的に低かったです。

このように、成果を出すビジネスパーソンほど"一夜漬け的な行為"を嫌います。成果を出し続けるためには、しっかりと準備を怠らず、準備にこそ時間をかけ、当日の提案書の出来栄えと、自分の心理状態を最高なものに持っていくことです。これで失注するはずがない。それだけ考え抜いたし、事例やデータも集めた。絶対に顧客にとってのプレゼントになるはずという確信があればこそ、プレゼンの場を自分でコントロールすることができるのです。

ビジネスもロードレースも、継続的に「成果」を出すためには、準備こそ、勝率を上げるための唯一のものだと思うのです。