前回の準備編に続いて、今回はレース本番での学びをお伝えしたいと思います。 10時半に3周のレース(約17.5km)、その30分後に2周のレース(約11.6km)に挑みます。今回のレースの目標は、トップ集団内でゴールする、上位3割に入る、事故なく無事にゴールすることです。そして、一番大事なのは「楽しむ」ということ。せっかく、憧れの鈴鹿サーキットでレースができるのですから、心から楽しむことができれば、目標は達成できると思いました。

ついに、レースがスタート。トップ集団のパワーはどのくらいか?速度はどれくらいか?と周囲を観察し、どのくらいのレベルの選手たちなのかを把握します。それと自分の余力や心拍数などを比較して、どの程度の力で走ればいいかを判断するのです。

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スタートからすぐに400mくらいある斜度3%の直線が待ち受けます。斜度7%以上に到達する最初のコーナーまでの進入は、集団の中でどの位置にいれるのか?そんなことを考えながら走りました。 最初の飛び出しでトップ集団の前方に位置しましたが、斜度がどんどん上がっていく最初のコーナー進入時には追いつかれ、20人くらいに“らくしょー”に抜かれてしまいます・・・。 私の心の声は「俺は、ヒルクライムも得意だから、みんなを置き去りにしてやるゼェ。」でしたが、現実はどんどん抜かれていきます。

さらに私の心の声は、「何―――、俺様の登りのテクニックが通用しない???」となり、 心は砕け散りました。 精神的なダメージでそのままずるずる後退してしまい、トップ集団から遅れをとってしまいます。

自転車レースで大事なことは「集団を使って、風よけにして、脚を温存すること」です。しかし集団から離れてしまうと単独で走らなければならず、平均速度40km強の速度で走るサーキット走行の極めて大きい空気抵抗をもろに受けてしまいます。なんとか空気抵抗を減らしたい。そこでパワーを使って集団に追いつこうとします。限界ギリギリで集団に追いつき、安心した途端、集団が更にスピードアップを図り、人数を削りにきます。

三度、私の心の声、「え、ようやく追いついたのに!速度が上がっちゃったよーーー泣」。

愕然となる心、限界を訴えてくる脚の筋肉と心臓。心拍数が上がりきってしまい、これ以上ついていけないという精神的なダメージが襲います。粘ってきましたが、ついにトップ集団から取り残され単独走になってしまいました。最終的には3周の部は50位、2周の部は28位と目標は達成しましたが、トップ集団からは30秒もの遅れでゴール。なんとも悔しさの残るレースになりました。

今回レースに出て改めて思わされたのが、「メンタル(精神)」と「フィジカル(身体)」の重要性です。最初の3周の部では50位と目標に届かず悔しい思いをしましたが、その30分後の2周の部では、そのメンタルダメージを引きずること無く「トップ集団にできるだけついていく」という目標を追い続け、28位までジャンプアップすることができました。最後にトップ集団から遅れることにはなりましたが、目標の上位3割は達成できたことになります。 このように常に気持ちを切り替え、戦略に落とし込み、メンタルとフィジカルを高次元にマネジメントすることで成果を出すことはできます。スポーツもビジネスもこの本質は変わらないと確信するのです。

特に私たちのようなスタートアップ企業は、社員の人数は極限まで絞り込まれていますので、一人が担う仕事の量と範囲が大きく、重要な提案が連日続くことは稀ではありません。身体的にも精神的にも疲れますが、それでも成果を出さなければ、スタートアップに次はありません。投資された資金を使って約2年で結果を出せなければ、次の投資を得られず、会社は無くなる、それがリアルなスタートアップビジネスです。

いかにして、この緊張感の中でもメンタルを保ち続け、身体の調子を崩さず、継続的に成果を出し続けられるか、その「メンタルとフィジカルの高度なマネジメント」が私のような経営者、経営チームには絶対に必要なことなのです。 しかし、難しく考える必要はありません。具体的には下記3つのことにフォーカスすれば良いのです。 ①気持ちはポジティブに。自分を信じる事。 ②成果までの重要指標(KPI)に落とし込み(コラム第4回参照) ③KPI達成だけに集中して行動し続ける

ビジネスも運動やスポーツも本質的には同じ。自分自身の「メンタル」と「フィジカル」を常に鍛え続けることが、成果を引き寄せるために大切なのだと思います。