自転車好きなら誰もが知っているのマルセル・キッテル選手。クイックステップというチームでは絶対的エースとして勝利を量産し、世代最強と言われたスプリンターが今年、事実上の引退に追い込まれました。

スプリンターとは、ゴール前の数百メートルで時速70kmという圧倒的なスピードで前進し、ゴールを狙うポジションです。そのゴール前までエースの体力を温存させた状態で持っていくために、チームの他のメンバーが風除けとして隊列=トレイ\ンを組みます。自転車競技においては、このトレインの位置どりの戦術レベルとスピードと意思の疎通が勝負を分けるのです。

しかし2年前にチームを移籍した後なかなか勝てないキッテルは、そのイライラをチームトレインに対する不満として爆発させてしまったのです。当然チーム内で孤立、悪循環が続き、自ら契約の解除を申し出る形になってしまいました。稀代のスプリンターでもたった1人では勝てません。チームとのコンビネーションがとれないほど信頼関係が崩れてしまえば、勝てなくなるのです。

彼のように仲間からの信頼を失わないようにするには、どうすればよかったのでしょうか。また「信用」を得るためには、どんな事を心得るべきなのでしょうか。それは「自責」という考え方です。全ての事象には原因があり、それには自分も関わっているという視点です。

ビジネスは、自分1人で完結する仕事の方が稀です。全ての職種の仕事は、他者と関わりを持っています。何かの失敗やミスがあった時も、他者の責任にすることや、犯人探しをするのではなく、「自分にも何らかの落ち度があった」と考えて、次にはどうしたらミスや失敗が起こらないか、自分にできることは何かを考え、実践できることが重要です。このようなスタンスや姿勢の積み重ねが「信用」という資産を他者の心に作り出すことになるのです。

ビジネスパーソンにとっても最も大事なのは、「信用残高」と言っても過言ではありません。信用とは蓄積が難しい無形の資産であり、自分にはその「信用残高」は見ることができません。信用とは、他者の中に築かれる「資産」という事になります。この信用という資産を築くことができれば、あなたは他者の協力を積極的に得ることができ、思い通りに仕事やプロジェクトを進めることもできます。また、会社の中での新しい挑戦を許されることもあるでしょう。

逆に信用を最も失う行為とは、「他人の責任にして、自分は逃げる」といった「他責」と呼ばれる行為です。前述のキッテル選手は勝てない原因をチームトレインのせいにしてしまいましたが、彼が自責として捉え、チームと連携を強めることができれば、必ず勝利を獲得できたと思います。また、ミスや失敗を共有し、全員で解決策を模索していくことでチームとしての底力がついていくのです。

分かっていても、あなたは自責を貫くことができるでしょうか? 感情に任せて、自責に立てないのは、自分が傷つかないように「守ろうとする」心が生み出しているように思います。そのため他者に対しても、自分を守るために攻撃的になり、責任を押し付けてしまうのではないでしょうか。感情をコントロールし、思考のベクトルは外へ、顧客、仲間のための何ができるのかを考える人が目指すべき人物像と言えるでしょう。

執筆:染谷剛史(そめや たけし)

ナレッジ・マーチャントワークス 代表取締役社長
1976年、茨城県生まれ。1998年、リクルートグループ入社。中途・アルバイト・パート領域の求人広告営業に従事。新人賞を受賞。マーケットプロデュース部門に異動し、WEB・モバイル系新商品開発に従事。2001年、株式会社デジットブレーン入社。副編集長、広告局マネジャー。大手ホテルやハウスウェディングのPRコンサルティングに従事。2003年、株式会社リンクアンドモチベーション入社(東証一部上場)。大手小売・外食・ホテルといったサービス業の採用・組織変革コンサルティングに従事。2012年には同社執行役員に就任。

以後も新規事業開発(グローバル事業立ち上げ、健康経営部門の立ち上げ)を経て、サービス業に特化した組織人事コンサルティングカンパニー長を担う。2017年、ナレッジ・マーチャントワークス株式会社を設立し、代表取締役に就任。多店舗展開型企業の経営・組織変革を目的にサービス産業に特化したシフトワーカーマネジメントアプリ「はたLuck」の開発を行う。

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