日本企業は強さを取り戻しつつある

実際、日本の中小企業も、実は着実に力をつけてきているのです。中小企業というと常に大企業に押され、あるいは大企業との格差が拡大して、年々苦しくなっているというイメージがあります。しかし意外なことに(!)、日本の中小企業は、ここ数年で過去最高レベルの利益を上げるようになっているのです。

それは法人企業統計という統計データを見るとよくわかります。この統計は、財務省が全国の中小企業を含む2万数千社を対象に4半期ごとに調査・発表しているもので、それによると、資本金1億円未満の中小企業の経常利益合計額は2013年度に16兆3,700億円と過去最高を記録し、その後も2017年度まで5年連続で過去最高を更新しました。2017年度の経常利益額は24兆2,500億円で、2013年度からの増益率は48%にも達しています。2018年度は減益となりましたが、利益額は前年度に続く2番目の水準でした。

さらに注目すべきは利益率です。同統計によると中小企業の売上高経常利益率は2011年度に2.3%となり、年度ベースで過去最高を記録しました。その後、2017年度まで7年連続で過去最高を更新し、2017年度は3.5%まで上昇しました。2018年度は3.4%と0.1ポイント低下しましたが、それでも過去2番目の高水準です。

  • 日本の中小企業の利益は過去最高レベル

    日本の中小企業の利益は過去最高レベル

利益率を四半期ベースでみると、2019年1-3月期は5.1%まで上昇しています。四半期ベースの利益率はブレが大きく、年度ベースと集計対象も若干異なるため、単純比較はできませんが、それでも利益率が5%台というのは、バブル期や高度成長期でも達成していなかった高い水準です。

この水準は、数年前までの大企業を含む全規模企業の利益率と同じです。大企業でも利益率が3%~5%台のところは数多くありますので、今の日本の中小企業が大企業に引けをとらないレベルに達していると言っても過言ではありません。

  • 中小企業の売上高経常利益率の長期推移

    中小企業の売上高経常利益率の長期推移

まさに日本のラグビーのようです。日本の多くの中小企業は、全体としては大企業に比べてまだまだ厳しい環境にありますが、その中にあっても独自の技術力を磨き、サービスを充実させ、地力をつけてきているのです。これまでの苦しい時期を必死の努力で乗り越えて世界市場で高いシェアを握るようになった中小企業も少なくありません。私は長年にわたって数多くの企業を取材してきましたが、そうした経験を通じて、大企業と互角に戦う実力を身につけるようになった中小企業が増えていると実感しています。

もちろん、多くの中小企業が依然として厳しい戦いを強いられているのも事実です。ちょうどラグビーW杯で日本が準々決勝で敗退したように、日本の中小企業がもっと強くなるには多くの課題があるのは確かです。それでも、日本経済と中小企業が着実に力をつけているのは間違いありません。簡単な道のりではありませんが、ラグビーも経済も、令和の時代にはもっと強くなっていくことを確信しています。