JRグループ各社が12月16日に来春のダイヤ改正の概要を発表した。実施日は2017年3月4日だ。春のダイヤ改正は一昨年まで、3月15日がある週の土曜日に行われていた。しかし昨年春は北海道新幹線開業に合わせたため、3月26日と遅かった。それだけに、3月上旬の改正はかなり早まった感がある。
2017年春のダイヤ改正は、2015年3月改正の北陸新幹線開業、2016年3月改正の北海道新幹線開業などの大物案件はなく地味な印象だ。それだけに全国紙、テレビなど報道各社の扱いが小さいように見受けられる。
本誌でもプレス発表をもとに来春のダイヤ改正を報じているけれど、当連載では視点を変えて、全国紙の地方版や地方紙が何に注目したか追ってみたい。ダイヤ改正に関しては、各鉄道事業者から記者クラブに対して説明会が行われるという通例があり、プレスリリースには現れない情報や、地元ならではの視点が書かれていて興味深い。
JR北海道 - 特急列車の分断化に不安の声
日本経済新聞は12月17日、札幌~稚内間・札幌~網走間の特急列車の一部を分断化し、札幌~函館間に新車を導入すると報道している。ただし、この記事のおもな部分は、札幌駅から帯広方面へのネット予約割引だ。高速バスに対抗するというしくみに注目したようだけど、稚内・網走方面と帯広・釧路方面の扱いの差も浮き上がる。
北海道新聞も特急列車の運行分断化を報じ、利用者の不安を伝えている。「乗り換えた列車に座れるだろうか」という声も紹介された。特急料金は直通の場合と同じになるから、両方の指定券を同時に買えばいい。もっとも、指定席と自由席の差額は520円だから、節約したい気持ちもわかる。
JR東日本 - 高尾発長野行の普通列車が誕生
12月17日の読売新聞福島版では、小高~仙台間で直通列車が1往復設定されることが報じられた。小高~相馬間は東日本大震災の被災区間で先行開業していた。今年12月10日に相馬~浜吉田間が復旧したため、孤立状態が解消された。しかし現行ダイヤでは仙台方面との直通列車は上り1本しかなく、原ノ町駅で運行系統が分断されている。小高~仙台間の直通列車は日中の1往復だけとはいえ、復興へ向けた前進ととらえられているようだ。
新潟日報は12月16日、平日朝に設定された上越新幹線の新潟発長岡行の臨時列車の運行終了を報じた。前後の列車の運行間隔が狭くなったためという。また、越後湯沢駅20時36分発の東京行「Maxたにがわ414号」を夕方出発に早めた。後述する北陸新幹線「かがやき」と同じで、東京在住者の帰宅時間の配慮が理由だろう。
その新潟日報は12月17日の記事で、JR東日本が糸魚川~新潟間の快速列車を廃止すると報じた。1日1往復で、北陸新幹線開業に合わせて廃止された特急「北越」に代わり、新潟へ直行できる便だった。乗客が少ないというJR東日本に対して、糸魚川市長が「非常に残念」とコメントしている。このうち、えちごトキめき鉄道線内の糸魚川~直江津間については、えちごトキめき鉄道が増便で対応する。
千葉日報は通勤時間帯の京葉線と内房線の増発、特急「成田エクスプレス」の増強を紹介。前向きな内容だ。一方、毎日新聞千葉版では、東京~館山間直通の特別快速の廃止を伝える記事の中で、館山市長の不満を伝えている。
下野新聞は12月17日朝刊で、烏山線の全列車を蓄電池電車に置き換え、気動車が引退すると報じた。鉄道ファンとしても注目の案件、地元も注目している様子がうかがえる。
信濃毎日新聞は北陸新幹線の金沢駅での接続改善に続き、塩尻駅で特急「スーパーあずさ33号」に接続する篠ノ井線下り普通列車の増発と、高尾駅14時2分発の下り松本行普通列車を長野行に変更すると報じている。これは意外な長距離鈍行の出現だ。長野駅到着は遅くなりそうだから、日照時間の長い時期に乗りたい。
JR東海 - 「ひかり」スピードアップに関心を寄せる静岡県
静岡新聞は12月17日、「東海道線島田-静岡間と三島-沼津間で朝の通勤時間帯の普通列車を各1本増発する」と報じた。三島発の列車は沼津駅で「ホームライナー」に接続し、「ホームライナー」は3両編成から6両編成になる。三島から静岡への人の流れを想定したダイヤ改正だ。また、定期「ひかり」がすべてN700Aタイプとなり、東京や大阪への所有時間短縮を伝えている。「のぞみ」停車駅がない静岡県にとって、「ひかり」の車両変更は重要だ。
JR西日本 - 北陸新幹線「かがやき」新高岡駅通過の無念
12月17日の毎日新聞富山版では、高岡市が要望していた北陸新幹線「かがやき」の新高岡駅停車が叶わなかったと報じ、高岡市長の「大変残念」というコメントを紹介した。現在は臨時「かがやき」が朝の上り、夜の下りに1本ずつ停車している。JR西日本は速達性の低下を理由に停車駅を増やさない方針で、今後も臨時列車のみの対応とのこと。こうした背景はプレスリリースでは伝わってこない。
同記事では他に、金沢駅15時52分発の臨時「かがやき530号」が15時55分発「かがやき510号」に定期化されたと紹介。その理由について、JR西日本が東京駅から自宅まで時間がかかる利用客にとって、夕方の早い時間帯に人気があると分析したという。北陸新幹線、上越新幹線、東北新幹線は大宮~東京間で、良い時間帯の取り合いになっている。あまり触りたくない区間だけど、細かい調整と試行錯誤が続けられている様子がわかる。
JR九州 - 特急「かもめ」増便の背景に地元との約束
佐賀新聞は12月17日、特急「かもめ」の上り2本増発と、佐賀駅止まりだった下り1本の長崎駅への延長を取り上げた。増発される上り2本のうち1本は佐賀発吉塚行となる。「佐賀-博多駅間の輸送力強化などを盛り込んだ佐賀県との包括連携協定の一環」とのこと。九州新幹線長崎ルートを見据えた施策のようだ。
同日、南日本新聞は九州新幹線の徐行運転解除を報じている。「約11カ月ぶりに正常運転」という文面から、地元の人々に朗報を伝えたいという気持ちがわかる。
あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道 - 地域密着へ努力
12月17日の日本経済新聞北陸版は、あいの風とやま鉄道の2017年春のダイヤ改正について報じ、富山駅の北陸新幹線との接続改善に注目している。東京駅からの「かがやき503号」と接続する列車(滑川・魚津方面)が現在の56分待ちから9分待ちに、「かがやき517号」と接続する列車(高岡方面)が現在の62分待ちから11分待ちに短縮された。関西からも「つるぎ」「はくたか」から乗換え可能な列車の増発を取り上げた。IRいしかわ鉄道については、土休日に運行開始する「IRホリデー号」を紹介している。
せっかく新幹線で早く着いても、接続列車が約1時間後では乗り換えてくれない。クルマの送迎に移ってしまう。北陸新幹線の開業効果も薄れ、あいの風とやま鉄道は定期外利用者が落ち込んで赤字転落の見込みだ。地域密着ダイヤに注力して業績回復を図る。
地方紙の記事はローカル列車の動向にも触れつつ、利用者や自治体首長のコメントもある。プレスリリースだけでは見えない部分から、列車ダイヤの意味が見えてくる。