――エフエム群馬に入社して、すぐ制作現場には行けたんですか?
いや、最初は営業職でしたね。それを3年ぐらいやって、そのあとに制作を2年間やって、合計5年間勤めました。
――入社する直前の研修時に、東日本大震災があって、いろいろと感じたことがあったそうですね。
2011年4月入社なんですが、卒業前の大学生は暇ですし、ずっと東京にいてもあれなので、群馬に戻り、2月頃からずっと研修をしてたんです。地震が起きたときも、先輩に連れられて営業車に乗っていて。あのときは先輩たちも新入社員に構っていられる状況ではなかったですから、とりあえずそこにいるだけでしたね。
当時、地元のデパートとタイアップしたイベントをやっていて、受付をやるために現地に行ったんですけど、計画停電で真っ暗になってしまって。そういう時期にみんなラジオを聴いていた姿を覚えています。もちろん僕はなんにもできなかったんですけど、なにもできないからこそ、今も自分の中に「ラジオでなにかをしたい」という気持ちが残っているんだと思います。
――社会人にすらなってなかったわけですからね。
そのとき、高橋優さんの「福笑い」がラジオからよく流れていて、それが強烈に印象に残っています。今でも「福笑い」を聴くとその時のことを思い出すというか、ちょっとエモくなってしまいますね。エモいって言うと薄っぺらく感じますけど、僕ってすぐにエモくなっちゃうんですよ。でも、そういうことが音楽にできることだなって今でもずっと思っています。別に僕がなにかできているわけじゃないですけど。
――それだけ金子さんの心に残っているものがあると。
来年の3月11日で10年経つので、自分にできることはないかなってずっと考えています。もともと好きだったBRAHMANやHi-STANDARDのように、当時もすぐに行動した人たちがいるのに、自分はラジオ業界に入ったけど、なにもできなかったという思いは残ってますね。新入社員だから当たり前なんですけど。いつか、そういう時に力になれる人間になりたいなと思ってます。
――営業職から制作に移ってからは、声優の内田彩さんやアーティストのmabanuaの番組を担当されていたそうですね。
群馬に縁のある方たちと仕事をしていました。内田さんやmabanuaさんって声優界や音楽界でトップランナーの方たちじゃないですか。そんな方たちとちょろっとですけど、一緒に仕事ができて。プロの人たちの仕事を見て感化されて、「東京に出て仕事をしてみたい」という気持ちになった部分はあると思います。
■サウンドマンへの転職「アルコ&ピースの『ANN0』がキッカケ」
――ニッポン放送の番組に関わるようになった経緯は?
2016年に今所属しているミックスゾーンの前身にあたるサウンドマンという会社に転職したんですけど、大学時代は東京にいましたし、J-WAVEに憧れてラジオ業界に入ったので、なんとなく「東京に行きたい」とは思っていたんです。なぜサウンドマンだったかと言うと、アルコ&ピースの『ANN0』がキッカケで。
――ここでようやく『ANN』の話が出てきました(笑)。タイミング的に言うと、放送後期ですかね?
そうです。番組が終わって、入れ替わるように僕はサウンドマンに入ったので。
――そういう方は本当に多いですが、ある意味、あの番組に人生を狂わされたというか。
そうですね。太字で書いてほしいです(笑)。
――音楽中心だった金子さんがどうしてあの番組に出会ったんですか?
もともとお笑いも好きだったんですけど、エフエム群馬で制作に関わることになったとき、逆張りをしたがるところがあるので、「AMのラジオを聴いてみよう」と思ったんです。AMのラジオと言えば『ANN』だろうと。もちろん以前から存在は知ってはいたんですけどね。
そこでいろいろ聴いたときにアルピーとも出会って、「この番組、メチャクチャカッコいいな」と感じたんです。それで、「この番組を制作しているサウンドマンという会社があるんだ」「作家で福田卓也さんという人がいるんだ」というのを認知して、ここで仕事をしてみたいなと思いました。
――特に印象に残っている回はありますか?
アンタッチャブルの柴田(英嗣)さんがゲストに来た「カワバンガSP」(2014年12月12日)ですね。当時は営業車の中で聴いてたんですけど、最後に伏線を回収される場面では、面白すぎて、車を脇に止めましたもん(笑)。なにが起きてるかわからなかったので、音声を巻き戻して聴き直しましたから。
■金子司
大学卒業後、2011年にエフエム群馬入社。2016年にサウンドマン(現在のミックスゾーン)に転職。現在はニッポン放送『三四郎のANN』(毎週金曜 25:00~)、『ファーストサマーウイカのANN0』(毎週月曜 27:00~)、『Creepy NutsのANN0』(毎週火曜 27:00~)などを担当。また、この秋から『オールナイトニッポン』のチーフディレクターに就任。