2019年も残すところ1カ月ほどとなり、東京五輪という一大イベントが行われる2020年がもう目前に迫っている。4年に1度の祭典開催ともなれば、飲食や観光などのさまざまな分野で商機が見込めるだけに、新たに資格取得を考えているという人もいるのではないだろうか。もちろん、東京五輪に関係なく、自身の転職やキャリアアップに向けた資格取得を狙っている人もいるだろう。

そこで本特集では、近年の社会人向け資格のトレンドや2020年以降にニーズが高まりそうな資格を紹介していく。最終回のテーマは「2020年以降に需要や人気が高まりそうな資格」だ。資格取得を目指す人々を全国でサポートし続けている大原学園に取材した。

  • 資格取得をサポートする専門学校・大原学園

    資格取得をサポートする専門学校・大原学園

2020年以降に要チェックの資格はこれ!

大原学園では簿記のほか、税理士、介護福祉士、宅地建物取引士などの士業がいつも人気資格の上位にランクインしているという。士業は仕事に直結しているイメージもあり、人気が高くなるのもわかりやすいだろう。

それ以外で2020年以降に要注目の資格をあげてもらったので、本稿で紹介していこう。

■基本情報技術者試験

近年、IT系の資格へのニーズが高まっているのは周知のとおりだが、中でも特にプログラミング言語「Python」(パイソン)に非常に大きな注目が集まっているという。基本情報技術者試験においても、2020年4月から選択言語のひとつであるCOBOL(コボル)が廃止され、代わりにPythonが採用される。

現時点でまだ一度も試験が実施されておらず、例題程度しか情報がないため、どのような試験内容・難易度になるかは不明だが、2020年がIT系資格の大きな転換点となるのは間違いない。現在、実務でプログラミングをしている人も将来的に使用する言語がPythonに変更される可能性も高いので、業界関係者は必ずチェックしておくべきだろう。

  • 日本語教師とキャリアコンサルタントに要注目!

    日本語教師とキャリアコンサルタントに要注目!

■日本語教師

2020年には東京五輪が開催され、多くの外国人観光客が日本にやってくることになる。そうでなくとも日本での就労を希望する外国人は増加してきている。すでに量販店や飲食店の従業員などの多くが、外国人労働者であることは珍しくなくなっているだろう。

そこでニーズが高まっているのが日本語教師だ。日本語教師は日本語を学びたい外国人に日本語を教える教師のことで、さまざまな外国の文化や違いを理解した上で日本語を教えていく必要がある。日本語を使って日本語を教えるため、必ずしも英語や中国語などの外国語ができる必要はない。

また、「介護現場での日本語」「IT業界での日本語」など、外国人と特定の業界をつなぐような専門性の高い日本語教師も、今後求められることが予想される。現在のキャリアを活かせるし、海外で日本語を教えるなど、世界での活躍も考えられる仕事だ。

現在のところ、日本語教師になるには3つのパターンがあり、いずれか1つを満たせば日本語教師になれる。

(1)学士の資格を有し、かつ、文化庁の届出を受理された日本語教師養成講座を420単位以上受講し、終了した者
(2)日本語教育能力検定試験に合格した者
(3)大学(短期大学を除く)又は大学院で日本語教育に関する教育課程(日本語教育科目45単位以上)を修了し、卒業した者。または日本語教育に関する科目を26単位以上修得し、卒業した者

2019年6月には日本語教育推進法が成立し、外国人への日本語教育はすでに国策としても推し進められており、文化審議会では、日本語教師の公的資格化が議論されている最中だ。公的資格となった場合、現在日本語教師の条件を満たしている人は、そのまま公的資格の日本語教師になれる見込みだが、どのような形になるのかは検討中とのことなので、今後の動向にも注目しておきたい。

■キャリアコンサルタント

日本人の働き方のスタイルが変わってきた中で、同校の講義を受講する層に大きな変化が現れた資格がキャリアコンサルタントだ。キャリアコンサルタントは、職業選択や職業生活設計、スキルアップ支援などを手掛ける国家資格。以前は定年退職後のセカンドキャリアとして受講する人が多かったそうだが、5年ほど前から社会保険労務士や税理士など、士業として働いている人が仕事に活かすためのプラスアルファの資格としてキャリアコンサルタントを取得するケースが増えているという。

これは、AI時代に突入しつつある中、AIには難しいであろうコンサルティングの分野を強みにしていく必要性を感じた人が増えたことや、2016年に国家資格化したことなどが理由として考えられる。また、以前は年1回だった試験も、年3回に増えている。そこには、国として働き方改革を推し進めていく中で、働くことについて専門性の高いコンサルティングができる人材を増やしていきたいという狙いも見えてくるだろう。

キャリアコンサルタントは、心理学や社会学、コーチングなど、さまざまな分野の知識も必要となる。キャリアコンサルタントで学べる技術は、個人に対する場でも、大勢に向けた場でも活用できるものが多い。そのため、中には教師などの受講生も増えてきている。

受講生の中には「上司の発言の意味が理解できるようになり、スムーズに仕事を進められるようになった」「部下への伝え方が変わった」などと話す人もおり、得た知識を活かして働く環境を改善できた例もある。つまり、キャリアコンサルタントは、働いている人すべてに寄り添うことができる仕事。どのような現場でも活躍できる資格といえるだろう。

世の中の変化に伴って、働き方も求められる人材も大きく変化しつつある。2020年からその先の未来までを考え、今、注目を集めている資格の取得を目指してみてはいかがだろうか。