2019年も残すところ1カ月ほどとなり、東京五輪という一大イベントが行われる2020年がもう目前に迫っている。4年に1度の祭典開催ともなれば、飲食や観光などのさまざまな分野で商機が見込めるだけに、新たに資格取得を考えているという人もいるのではないだろうか。もちろん、東京五輪に関係なく、自身の転職やキャリアアップに向けた資格取得を狙っている人もいるだろう。

そこで本特集では、近年の社会人向け資格のトレンドや2020年以降にニーズが高まりそうな資格を紹介していく。第4回のテーマは「近年の資格のトレンド」だ。資格取得を目指す人々を全国でサポートし続けている大原学園に協力してもらい、最近の社会人における資格取得の傾向について取材した。

  • 資格取得をサポートする専門学校・大原学園

    資格取得をサポートする専門学校・大原学園

やっぱり人気資格は定番の士業

大原学園の調査によると、人気となっている資格は順位変動が多少あるものの、概ね同じだという。上位に名を連ねるのは以下の資格だ。

■簿記
■税理士
■介護福祉士
■宅地建物取引士
■公認会計士
■行政書士
■社会保険労務士
■ファイナンシャルプランナー

この中でも常にトップとなっている資格が「簿記」だ。簿記は、会社や商店の経済活動をルールに沿って帳簿に記入し、報告書にまとめて関係者に報告するまでの一連の流れを指すもの。経理や財務などの業務に生かせるだけでなく、会社の業績などの情報をしっかりと把握できるようになることから、あらゆるビジネスパーソンに求められる知識とも言えるだろう。

税理士や公認会計士などの他の資格にステップアップするための基盤となる資格でもあるため、社会人だけでなく学生からも人気が高く、多くの人が取得を希望しているという。

また、いわゆる「士業」と呼ばれる資格も人気が高い。税務のプロフェッショナルである税理士や、ますます需要が高まっている介護福祉士をはじめ、社会保険労務士、宅地建物取引士、公認会計士、行政書士などは、順位の入れ替わりはありつつも、大原学園では常にトップ10に入る資格だという。

やはり定番の士業は仕事に直結できるというイメージが強く、目指す人が多いようだ。この中でも比較的費用が安価で取得しやすい宅地建物取引士は、この資格を足掛かりに行政書士や税理士へとステップアップすることができる。

士業以外ではファイナンシャルプランナー(FP)も人気が高い。FPは年金、保険、税金など人生におけるお金の知識を身につけるため、これを足掛かりに税理士、社会保険労務士など次の資格取得も視野に入れられる。

  • 補助金などが支給される資格も

    補助金などが支給される資格も

AIに取って代わられないために

「昔は特にどの資格を取るかは決めておらず、『就職に有利になる資格は何か』という段階から相談にいらっしゃる人が多かったのですが、最近はある程度、取りたい資格や目標が決まっている人が多く、『どちらの資格のほうが有利か』といった具体性のある相談がほとんどですね」と、同学園の社会人広報事業部の峯岸一夫氏は語る。最近は自身のキャリアアップなど、資格を取る目的が非常にクリアになっている印象があるという。

確かにここ数年、さまざまな仕事でAIが普及しており仕事を取り巻く環境は大きく変化している。そう遠くない未来、AIに仕事が奪われてしまうような職業も出てくるだろう。そのため、より専門性が高く、AIが取って代わるには難しい業務を自分の強みとしようと考える人が増加傾向にあるようだ。

助成金や給付金を上手に活用しよう

資格を取得するためには、時間はもちろん、費用もかかってしまうもの。だが、会社として資格取得を奨励し、補助金などが支給されるケースもあるため、社会人になってから資格取得するということも珍しくない。むしろ学生の頃に資格を取るよりも、お得に資格取得できる場合も多いのだ。

そのため、20代のビジネスパーソンから定年後のキャリアを考えている50代、60代まで、資格取得を目的として受講する人々の性別や年齢の幅は非常に広くなっているという。また、講座によっては厚生労働大臣の指定を受けており、教育訓練給付金を利用できる場合もある。費用面のサポートが受けられるとなれば、資格取得へのハードルがグッと下がるという人も多いだろう。

資格は今後のキャリアを考えていく上で強い味方になってくれるもの。しかしながら、忙しさや費用を理由に、なかなか動けないと思っている人もいることだろう。 それでも、費用面で職場などの補助が受けられるパターンがあったり、意外と短い準備期間で取得できたりするような資格もある。自分自身のキャリアアップのために、今の自分にどんな資格があれば、よりよいビジネスにつなげられるかを考えてみてはいかがだろうか。