若い世代のビジネスマンにとって、社内外でのコミュニケーションに悩む人は多い。そんな人にもってこいなのが『お笑い』のスキルである。

  • 企画を面白くする方法

    元芸人でベンチャー企業の代表を務める、中北朋宏氏

ここでは、芸人として6年活動するもトリオを解散。その後、新たな人生のスタートとして企業コンサルや人事業務の経験を積み、芸人向けの人材サービスやお笑いを取り入れた企業コンサルを行う「芸人ネクスト」の代表取締役社長・中北朋宏氏に『スベらない仕事術』を聞いてみた。第3回のテーマは、「面白い企画を考える方法」。

軸を決めたらブレない

企画と一言で言えども、その種類は多岐にわたる。懇親会の企画も企画であり、クライアントに依頼された状況改善案も企画である。だが共通して「気にすべきポイントがあります」と中北氏は語る。

「企画で重要なのは『目的が何であるかを明確にし、軸を決めること』です。これがブレる企画はミスしがちです。例えば、飲食店のコンセプトを和風と決めたのに、出てくる料理は洋風や中華が並んでいたらダメですよね」

企画のイメージを和風と決めたなら、外すとしても和風中華ぐらいにする必要がある。統一感のない企画は破綻しているように見えるだろう。方向性をしっかり決めることが基本にある。

そうした軸があれば、お笑い的な『あえて外す』というテクニックも盛り込める。「和食和食……と続いてきて、ラストがあえて中華をもってきたときにも、それには意味が生まれ、きちんとオチになるんです。順序立てたフリとオチを利かせることで、企画も面白くなります」

企画の『フリ』=『当たり前のこと』

企画において『フリ』とはどのようなものなのだろうか。具体例として中北氏は「新しいオフィスを考える企画」の話を始めた。

「そもそも、オフィスには面白い要素がない場合が多いと感じています。当然仕事する場所ですので仕方がないとは思うのですが……正直、だから出社したいと思えないという人も大勢いるはずです。だからこそ、企画においては『出社したいオフィスを作る』というのが大前提となります。雑談の生まれるオフィスという案もありましたが、そもそも面白くないオフィスには行きたくない。じゃあ、行きたくなるオフィスってなんだろう、と」

当たり前のオフィスではないのなら、それは行きたくなる。興味がわく。つまり、オフィスの『当たり前』が『フリ』になるということに気づかなければ、その改善策(オチ)を見出すことはできないのだ。

「例えば、社長が奥にいるというのは、オフィスの当たり前です。では、逆に受付を社長席にしてみたらどうだろうと考えてみます。あとは、タイムカードのピッという打刻音も当たり前。だから一週間に一回は課長の『おはよう』の声に変えてみるのもアリかもしれません」

確かに面白い。当たり前であることはある種の聖域のように考えられがちで、そこに触れることはなかなか思いつかない人も多いはず。だがフリとして捉えることで、オチを考えることができる。中北氏のオフィス改善企画の案はどんどん出てくる。

「世の中には陰口はダメだって暗黙の了解があるでしょう。そこで、逆に陰口オーケーなブースを作るのもアリだと思います。陽の光が当たる場所に緑豊かなブースを作って、そこに入ったら思いっきり皆で陰口を30分ぐらい言い合う。それを録音しておいて、後で聞いて笑い合うのも面白いかもしれません(笑)」

他にも満員電車を乗って苦しいのが当たり前だとされるので、出社時に一番混雑していた車両に乗った人にはプレゼントを贈呈するなんてアイデアも出た。いずれもフリを理解しているからこそ出る、逆張りの発想と言える。

コント作りから学ぶ、企画立案テクニック

このように中北氏はアイデアがどんどんと出てくるが、企画作りにおいて案出しは悩みの種。中北氏は「芸人時代のコントのネタ作りが役に立っている」と話す。

刑事ものや学園ものといったありきたりな設定のコントは、もうすでにやり尽くされた感がある。しかし、そこから新鮮な面白さを生み出さなくてはならない。そんなときに中北氏は次のように考えていたのだという。

「具体化して考えるんです。例えば、『職人』だとイメージが広すぎてアイデアが出づらいんですが、それが『寿司職人』と具現化された途端に台本を考えやすくなるんですよ」

テーマが明確なら、そこに具体的な要素を足していくだけで企画はより面白く進化する。ここで大事なのは、自分と時代を分析することだという。

「今の時代なら何がウケるのか、その流れを読んで企画に加えることで説得力が生まれます。そのうえで、自分の持ち味をどう活かせるかを考えれば、企画に独自性もプラスできます。こうしてできた企画を叩き台として、いろんな人に見せて、無駄を省略し、より面白く尖らせていくのがベストだと思います」