2024年3月卒業予定の大学生・大学院生の就職活動も、そろそろ終盤を迎える頃になりました。新型コロナウイルスの感染が落ち着きつつあり、経済回復を受けた企業の採用意欲は高まっています。「売り手市場」とも言われますが、日々選考を受ける就活生にとって実感は少ないかもしれません。内定を得た後も納得のいく結果が出るまで就活を続けている就活生は多いのではないでしょうか。

数ある業界の中で、多くの学生から毎年注目を集めているのが「コンサルティング会社」です。好待遇や任される仕事が大きい印象がある一方で、だからこそ「激務」の根強いイメージも。業界や企業研究を進める就活生の中には、実際の仕事内容や活躍する社員像のイメージがつかみにくく、悩む人もいるのではないでしょうか。

今回は、社員・元社員の「生の声」で企業が探せるクチコミ情報プラットフォーム「OpenWork」において、コンサルティング会社が実際にスカウトを送った社会人ユーザーのWeb履歴書を分析。どのような単語が多く使われているのかを「ワードクラウド」で可視化し、企業の求める経験や人物像を考察します。

東大生注目企業の上位にランクイン

コンサルティング業務を行う会社は、「戦略系」「総合系」「IT系」「シンクタンク系」「監査法人系」などに大きく分けられます。クライアント企業が抱える経営課題を解決するための戦略づくりを専門とする会社もあれば、戦略立案などの上流工程だけでなく包括的に幅広く支援する会社もあります。また、自治体の政策づくりに関わったりと、クライアントは民間企業に限りません。

企業や自治体が抱える課題を解決することは、社会的にも大きなインパクトがあります。クライアントの経営層に近い立場で仕事をしたり、若いうちから挑戦の機会が多いことに加えて報酬の高さも魅力ではないでしょうか。オープンワークによる「就職注目企業ランキング」では、東大生のランキング上位にコンサルティング・シンクタンク業界の会社が多数ランクインしており、高い関心を集めていることが分かります。

近年では企業のDX支援などの需要から、国内コンサルティング市場が拡大。市場支出額の予測では、21~26年の年間平均成長率は8.8%で、26年には8,732億円に伸長するとした調査結果があります(※IDC Japan「国内ビジネスコンサルティング市場予測」より)。一部外資系では需要の伸び悩みに備えて大規模な人員削減が発表されましたが、コンサルティング会社への注目は当面続きそうです。

スカウトを受ける履歴書の頻出単語は?

クライアント企業が抱える課題が複雑化する中、コンサルティング会社はどんな人材を求めているのでしょうか。OpenWork上の「コンサルティング、シンクタンク業界」のうち、コンサルティング職を募集する3社以上からスカウトを受けた社会人ユーザーを対象に、web履歴書の「職務内容」の項目で使われた単語を分析しました。スカウトを送った企業はどんな経験に注目したのでしょうか。出現の頻度が高い単語ほど大きなサイズで表示されます。

「プロジェクト」「顧客」「支援」「提案」などの単語が大きく出現しました。コンサルティング業界とは異なる業界や会社で働く人もスカウトを受けているため、業界を問わずコンサルティング業務に結びつきやすい仕事の経験がある人が戦力として注目されていることがうかがえます。

需要高まるIT人材

「IT」「Java」「言語」「AI」「DX」などの単語からは、コンサルティング業界がIT人材を求めていることが読み取れます。多くの企業がDX化への対応に迫られる中、ITを活用した戦略でクライアントが抱える課題を解決し、ビジネスモデルや組織に変革を起こすことできる人材の需要が高まっているようです。

プロジェクトマネジメントの後方支援やプロジェクトの進捗管理などを行う「PMO」(プロジェクト・マネジメント・オフィス)という単語も登場しました。ITや技術面に詳しいPMOは、プロジェクトチームと経営層とのコミュニケーションを円滑化するための役割を担っています。

退職者からも高評価

実際にコンサルティング業界で働いた経験のある社員は会社をどう評価しているのでしょうか。特徴のひとつが、「退職者からも愛される」傾向にある点です。オープンワークが調査した退職者が選ぶ「辞めたけど良い会社ランキング」では、上位10社のうち4社をコンサルティング会社が占めました。

ランクインした会社の「退職検討理由」のクチコミには、自身の成長のため新しい環境に挑戦する、といった前向きな声が寄せられました。「他社から魅力的なオファーをもらったから」などの退職理由であっても、高い評価点をつけている人が少なくないのも特徴的です。

「十分成長できたと感じ、外の世界にさらなる成長機会を見出したため」(マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社、コンサルタント、男性)

「会社自体に大きな不満はなかったものの、もともといつかは自分自身で事業をつくる側に従事したいと考えていた」(アーサー・ディ・リトル・ジャパン、戦略コンサルタント、マネージャー、男性)

「もともと長居をするつもりはなく、新卒数年で成長後、やりたいことを見つけて事業会社に行くことを想定していた。居づらさややりにくさを感じて退職したわけではない」(ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド、コンサルタント、男性)

パーソルキャリアの転職サービス「doda(デューダ)」は2022年6月に、入社直後に転職サイトに登録した新入社員の数は2011年と比較して約28倍に増加しているという調査結果を発表しました。終身雇用が前提の働き方が限界を迎え、人材の流動化が高まる中、主体的なキャリア形成が求められています。特にコンサルティング企業に就職した方は、経験を積んだのちに転職や独立する「卒業前提」での入社が多い業界であり、若いうちから明確な将来像やキャリアプランを持っていることがうかがえます。

おわりに

経営上の重要な課題に対し、決められた期間内で期待に応えなければならないコンサルティング会社の仕事は情報収集や資料作成、提案など多岐にわたります。担当するプロジェクトに応じて常に新しい知識やスキルの習得を求められることも。実際に、コンサルティング会社のクチコミには「忙しい」「ワークライフバランスがとりにくい」といった声も寄せられています。若いうちから成長できる環境である一方、こうした働き方がすべての人に合っているとは限りません。

また、転職を重ねてステップアップする道もありますが、一つの会社に長く勤めることで得られる経験や挑戦できる仕事もあります。就活生のみなさんには、企業のネームバリューや待遇だけでなく、自分自身の価値観や人生で大切にしたいことに合致しているかどうかを考えた上で選考に臨むことをおすすめします。