東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「サーフィン」にフォーカスする。

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サーフボードという板を使って波に乗り、テクニックを競う。東京2020大会で新たに採用される競技。古代ポリネシア人によって始められ、ハワイで育った海のスポーツだ。これを広めたのはストックホルム1912大会とアントワープ1920大会の水泳で金メダルを獲得した、ハワイ出身のデューク・カハナモク(アメリカ)。カハナモクは近代サーフィンの父と呼ばれている。

サーフィンはサーフボードのサイズによって大きく2つに分けられる。古くから親しまれたのは、長さ9フィート(約274センチメートル)以上のロングボードで、ボード上を歩くテクニックが中心となる。

一方、1970年前後に登場したショートボードは、長さ6フィート(約183センチメートル)前後でボードの先端がとがっている。こちらは細かいターンがしやすいタイプだ。ショートボードは、それまで平面的な動きだったサーフィンに縦の動きを与え、三次元のダイナミックな技を可能にした。東京2020大会のサーフィンは、このショートボードで行う。

競技としてのサーフィンは、波を乗りこなすライディングテクニックをジャッジが採点し、勝敗が決まっていく。いかに難易度が高く創造的な技を繰り出すか、スピードがあってダイナミックかなどが評価される。選手は定められた時間内に10本前後のライディングを行い、高い2本の合計点によって得点が決まる。競技は男女20人ずつの選手で行われる。

海という大自然と戦う選手たち、ダイナミックな技に感動する

競技が行われるのは自然の海。波の状態は、風の強さや方向、潮の満干などによって変わる。同じ波は2つとない。いかにいい波をつかむか、刻々と変化する波にどのタイミングで乗るかが重要になる。自然の中で運を味方につけながら戦うスポーツがサーフィンなのだ。

1つの波に乗れるのは1人だけだ。崩れる直前の波の頂上をピークというが、ピークに最も近い人にその波に乗る権利があり、これを「優先権」という。つまり、いい波をつかむためには、まずは優先権をとれる位置を確保するということが必要だ。一方、優先権を持った選手の邪魔をするとペナルティーが課されることになり、減点の対象になる。ただ、優先権があるにもかかわらず波に乗らないでいたり、選んだ波に乗ろうとしてパドリングを開始したものの途中でやめたりすると優先権を失ってしまう。

選手同士のかけひきも行われる。波に乗らないふりをして乗ったり、パドリングを開始するふりをして実際はいかなかったりすることで、他の選手を翻弄することもある。

オリンピックでは、2~5人ずつで競技を行い、1位~3位の上位者が勝ち抜ける「マンオンマンヒート」、「4メンヒート」、「5メンヒート」のトーナメント方式を採用する。1ヒート(試合)は波の状態によって異なるが、20~35分程度。その間に波に乗り、そのうちの点数が高かった2本の合計点が順位に反映する。

採点は、選手が行う技の種類や難易度、オリジナリティに、スピード、パワーなどの要素を加え、5~7人のジャッジが行う。選手は波に多く乗ればよいということではなく、1本の波における技の数が多い方がよいということでもない。大事なのは技の質だ。

波をトップ(上部)に向かって上がっていき、そこから回転して降りる360(スリーシックスティ)や、波を駆け上がって空中に舞い上がり体勢を崩すことなく着水するエアリアルなどの高度な技を、リスクの高い大きな波でダイナミックに行い成功させると、必然的に高得点になる。

一つ一つの技に決められた点があるのではなく、ジャッジが総合的に見て判断するため、いくつかの技が流れるように連続していると印象も良くなり、さらに得点が高くなる。いかに難易度が高く創造的で質の高い技を繰り出すか、ライディング全体がダイナミックでスピードがあるか、などに注目して観戦したい。

イラスト:けん

出典:公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会