東京2020オリンピック競技大会では、史上最多となる33競技339種目の開催が予定されている。本連載では、イラストを交えながら各競技の見どころとルールをご紹介。今回は「ハンドボール」にフォーカスする。
ダイナミックさと華麗な連係プレー、展開の速さに注目
1チーム7人ずつで、ボールを手で扱ってコートの相手ゴールへと投げ入れ、得点を競う「ハンドボール」。19~20世紀初頭のヨーロッパに起源を持ち、世界へと広がったスポーツである。
1946年創設の国際ハンドボール連盟には2017年時点で200を超える国と地域が加盟しており、アジア、アフリカ、南米などでも普及が進んでいる。古くはドイツ発祥の11人制が主流であったが、スカンジナビアを中心に広がった7人制が次第に支持を得て現在に至っている。
オリンピックではベルリン1936大会で初めて実施された後は正式競技から外れていたが、ミュンヘン1972大会から再び採用された。競技はベルリン1936大会のみ屋外で、ミュンヘン1972大会以降は屋内で行われている。女子はモントリオール1976大会で初めて採用され、東京2020大会では男女各12チームがメダルを争う。
7人のプレーヤーのうち1人はゴールキーパーとして自陣ゴールを守り、6人がドリブルとパスでボールをつないで相手ゴールを攻略するという点はサッカーと共通性がある。ボールを足で扱ってはならない、ボールを持ったまま3歩を超えて歩いてはならない、1人の選手がボールを扱える時間には制限があり、交代は無制限、といったルールはバスケットボールに近い要素と言える。
ハンドボールならではの要素は、ゴールから6メートルのゾーンにはゴールキーパーしか入ることができず、シュートはこのゾーンの外側から、またはゾーンの外側から内側に向かってジャンプしている状態で打たなければならないというルールや、体の正面からの接触プレーには反則がとられないため格闘技に近いボディコンタクトが見られることなどがある。
これら、複数の競技に共通するチームスポーツの楽しさと独自のダイナミックさ、双方合わさったものがハンドボール競技の魅力と言える。特に6メートル以上離れたゴールにボールを投げ込むために必要とされる力と勢いは並大抵ではなく、選手がジャンプをしながら全身のバネを使ってシュートを放つ場面は迫力満点だ。
時にはゴールキーパーが自陣から相手ゴールをめがけ超ロングパスやシュートを放ち、プレー開始から数秒で得点が決まってしまう。そんなシーンもあるので、一瞬たりとも試合から目を離すことができなくなるだろう。他にも多彩な個人技や頭脳的な連係など、ぜひ試合を見てその魅力を体感してほしい。
コートの広さ40メートル×20メートルは、フットサルコートと同じ。前後半各30分を戦い、決着がつかなければ延長前後半各5分の延長戦が行われる。ここ最近のハンドボールはよりスピード展開を重視しており、両チームとも攻撃回数が60回・70回を数えるため、得点は20点以上になる試合がほとんどである。オリンピックでは12チームによるグループリーグから決勝トーナメント戦を経てメダルが争われる。
イラスト:けん