預金や投資をしてお金が増えると、増えた分の約20%が税金として引かれます。この税金が非課税になるのが、「NISA」や「401K(確定拠出年金)」。非課税という共通点はありますが、仕組みはかなり違います。それぞれの特徴を把握して使い分けるのがポイントです。

投資の利益が期間限定で非課税になる「NISA」

税金は様々なところにかかってくる。預金や投資でお金が増えた場合も課税の対象だ。預金の利子や、投資により得られた利益からは20.315%(所得税、復興特別所得税、住民税)が差し引かれ、残りが手取りとなる。投資については、2013年までは特例により税金は約半分に減額されていた。特例の終了に合わせて2014年から始まったのがNISA。正式名称は「少額投資非課税制度」だ。

年間100万円までの少額(人によっては少額ではないかもしれない)の投資であれば、配当金や値上がり益にかかる税金が非課税になるというもの。対象となるのは、株式、株式投資信託、REIT、ETF。最大500万円までの元本を非課税で投資に振り向けられる。NISA専用の口座を、証券会社や銀行に開いて利用する。税金がかからないから、利益が出た場合は、とてもおトクだ。しかし、利益が出るかどうか不確定なのが投資。逆に損失が出た場合は、そもそも税金もかからない代わりに、おトクもない。

預金もOK、リタイア後の生活費を支える「401K(確定拠出年金)」

一方、401Kは確定拠出年金の愛称で、公的年金に上乗せする企業年金の一種だ。DCとも呼ばれる。勤務先が企業型401Kを導入していれば、好むと好まざるにかかわらず加入することになる。すでに約460万人の人が加入していて、今後も導入する企業が増えそうだ。

掛け金は勤務先が出してくれて、リタイア後に年金として受け取ることになる。ただし、どんな商品で運用するかは自分で決める。リスクの度合いが異なる金融商品が用意されていて、そこから選ぶ仕組みだが、何を選んだかで将来の年金額が違ってくる。投資商品のみならず、預金などの元本安全な商品も選択することができる。

勤務先に企業年金制度がない人は、個人型401Kに加入することができる。税金面でのメリットはあるが、掛け金は自己負担、口座管理の手数料も自分で負担する。

401Kは、勤務先の企業年金として加入する場合(企業型)も、個人型も、運用中(現役時代)は預金の利子や運用益が非課税になり、将来年金として受け取る際も税金の優遇がある。

NISAと401Kの違いは流動性

投資に興味がある、将来のために貯蓄や投資をしようと思っているなら、NISAや401Kはぜひ使いたい制度だ。ただし、NISAや401Kには注意点もある。

注意点のひとつは限度額。NISAは1人年間100万円、5年で最大500万円まで。401Kは、企業型は月額5万1000円まで(他の企業年金があって併用する場合は2万5500円まで)で勤務先の規約に定められた金額。個人型は月額2万3000円(会社員の場合)を上限に自分で掛け金を決める。これ以上は利用できない。

また、冒頭にも書いたが、NISAは値下がりした場合はメリットがない。それどころか、非課税期間中に売却せずに非課税期間が終了し、課税口座に引き継いだ場合は、引き継いだ時点の価格(購入時よりも値下がりしていたら、その価格)が元本となり、そこからの値上がり益に対して税金がかかる。この点はNISAの最大の注意点と言える。値下がりしない銘柄や商品を選びたいが、こればっかりは誰にもわからない。

そして、NISAと401Kの大きな違いは、流動性だ。NISAは売りたいときにいつでも売って現金にできるが、401Kはリタイア後に受け取る仕組みのため、その前にお金が必要になったからといって解約できない。401Kに入れたお金は、原則60歳以降のリタイアまで使えないのだ。

さて、では、おひとりさまは、このふたつをどう利用したらいいのだろうか。

勤務先に制度があるなら401Kを優先

投資信託の購入を検討していて、勤務先に401Kが導入されているなら、401Kの運用商品として投資信託を選択しよう。401Kでは途中で金融商品の乗り換えもできる。401Kで元本保証ではない投資信託を選択したのだから、しかも60歳までは引きだせないから、別途、自分で定期預金の積立を行いたい。いざというときに引きだせる預金は、どれくらいあるだろうか? 並行して元本安全な預金もしっかり確保しておこう。

勤務先に401KがないならNISA

勤務先に401Kが導入されていないなら、NISAで投資信託の購入を検討しよう。その際の条件は、やはり一定額の預金が貯まっていること。目安は、少なくとも生活費3か月分程度。NISAは2014年に始まったばかりの新しい制度で、口座開設は今後10年間(2023年まで)できるから、あせらずに自分の状況に合わせて時期を選択しよう。その年にNISA口座にお金を入れていったん取引を始めると、投資の元本が年間の限度額の100万円以下でも、残った枠を翌年に繰り越すことはできない。

個人型401Kについては、自営業者で今後も会社員になるつもりがない人なら選択肢になるが、会社員の場合は、企業年金制度の変更や転職などの可能性を考えると、当面はNISAの方が使いやすいだろう。

収入が安定していて、元本安全な預金が一定額あるなら、勤務先の401Kで投資を行い、NISAも並行して利用する方法も。子どもの教育費などの負担がないおひとりさまの場合、投資の知識と経験があり、非課税の枠を使い切りたいなら、これもありだ。

2014年は大手企業数社が401Kを導入する。401Kの導入企業は増えることはあれ、減ることはなさそうだ。またNISAは、現在は期間限定だが、延長や恒久化などが検討される可能性もある。仕組みを知って活用したい。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 坂本綾子

20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)、セミナー『子育て力のあるお金の貯め方、使い方』『小さな消費者へのお金の教育』など。