よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

デスペローが持っているのは剣ではなく、針。針を剣のように扱って戦うのだ

今回は珍しくゾンビもエロもアクションも封印。未公開のDVDストレートにするなんて非常にもったいないフルCGアニメ作品『ねずみの騎士 デスペローの物語』を紹介しよう。

アメリカの児童文学作家ケイト・ディカミロの原作は20カ国以上で翻訳された大ベストセラーで、アメリカで最も優れた児童書に送られるニューベリー賞をはじめ、数々の賞を獲得。我が国でも小学5年生にオススメの1冊として取上げられたほどである。

監督はサム・フェルとロバート・スティーヴンヘイゲンの共同で、サムにとっては『ATOM』(09)のデヴィッド・バワーズとタッグを組んでメガホンを取った未公開クレイ・アニメ『マウス・タウン ロディとリタの大冒険』(06)に続く監督第2弾作品。サム監督は、どうやらネズミを題材にしたアニメがお好きなようだ。

声優陣も未公開作品の割にはかなり豪華だ。まず、主人公のネズミであるデスペローを日本では知名度は高くはないが、しっかりとメジャー作品にも出演しているマシュー・ブロデリックが担当。ちなみに妻はサラ・ジェシカ・パーカーだ。脇を固めるのがダスティン・ホフマンを筆頭に、エマ・ワトソン、ケヴィン・クライン、ロビー・コルトレーン、ウィリアム・H・メイシー、スタンリー・トゥッチ、クリストファー・ロイド、シガーニー・ウィーバーと一級の芸達者がズラリと揃っているのだ。特にエマ&ロビーは、本作と同じく児童向け文学が原作の『ハリー・ポッター』シリーズでお馴染みであり、本作のキャスティングに相応しかったと言える。

ヨーロッパのある国ではスープが盛んで、スープの日になると街は賑わい、その日のために作られた最高に美味しいスープが宮廷内で振舞われる。光に憧れるドブネズミのロスキューロ(声:ダスティン・ホフマン)は城内に侵入するが、女王様に供されたスープの中へ誤って落下してしまった上に女王様をショック死させてしまい、地下牢へ放り込まれる。一方、耳がやたらと大きな、小型のハツカネズミのデスペロー(声:マシュー・ブロデリック)も城内で自由奔放に楽しく過ごしていたが、母親を亡くして悲しむピー姫(声:エマ・ワトソン)に出会って恋心を抱き、人間と関わった罪で地下牢へ。そしてピー姫の召使いで日頃はブタの世話係をやっているミグ(声:トレイシー・ウルマン)は姫の座を狙っており、ロスキューロと手を組んでピー姫を拉致する。デスペローは憧れの騎士になり、持ち前の勇気を振り絞ってピー姫の救出に立ち向かう……というお話。

学校で恐い物を教わるネズミたち。耳が大きいデスペローは一番目立つが、よく見ると色んなルックスのネズミがいるね!

まずは、主人公デスペローの存在感が大きくて印象深い。ルックス同様に、性格や考え方も他のハツカネズミたちとまったく違うのだ。究極の恐い物知らずの上に好奇心も旺盛なため、学校ではちょっとした問題児扱い。両親や兄貴、3人組の友達も困らせてしまう。そんな変わり者のデスペローが捕らわれた姫を助ける騎士の物語を読んで騎士のカッコ良さや生き様に強く憧れ、冒険を通じて様々な経験を重ね、騎士らしく成長していく姿が見モノだ。

ドブネズミ軍団に捕らえられたデスペローがコロシアムのような決闘場で鎖に繋がれた大きなネコと苦戦するシーンをはじめ、持ち前の勇気と希望でピンチを乗り越えていく模様は実に好感が持てる。

ピー姫と念願のご対面を果たすデスペロー

デスペローだけでなく、ロスキューロとミグも良い仕事をしている。ロスキューロは自分がスープに落下したことで、街をスープ&ドブネズミ禁止にさせたことをピー姫に正直に詫びるのだが、ピー姫は聞く耳を持たない。一方的に怒りをぶつけられ、心が歪んでしまったロスキューロはピー姫拉致という悪事を働いてしまうが、クライマックスにおける彼の一大決心は素晴らしかった。

ロスキューロと共犯のミグは明らかにブサイクであるにも関わらず姫になりたいと強く思い込んでおり、ブタ飼育でもこき使われているちょっと可愛そうな女の子。彼女の首にあるハート型のアザには、彼女の秘密が隠されている。この2人のキャラクターもストーリーを面白く昇華させる重要キャラクターなのである。

赤ん坊の頃のデスペロー。この可愛らしいさ、女性や子供にはウケること間違いなし!

観る者を前向きな気持ちにさせるようなラストシーンは実に清々しく、ほんのりと感動させられる。過ちを許すことの大切さ、恐いものをただ恐れるだけではなく、勇気をもって立ち向かうすることを教えてくれる本作は、子供だけでなく、大人の心にも十分に響く。

原作を読んだ方はもちろん、クリスマス、冬休みシーズンは家族揃って本作を堪能することをオススメする。きっと温かい気持ちになれるはずだ。

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『ねずみの騎士 デスペローの物語』作品概要

  • 2008年 アメリカ、イギリス
  • 原題:「THE TALE OF DESPEREAUX」
  • 監督:サム・フェル、ロバート・スティーヴンヘイゲン
  • 声の出演:マシュー・ブロデリック、ダスティン・ホフマン、エマ・ワトソン、トレイシー・ウルマン、クリストファー・ロイド、ロビー・コルトレーン、スタンリー・トゥッチ、ウィリアム・H・メイシー、シガーニー・ウィーバー
  • 上映時間:93分
  • レンタル開始:2012/12/5
  • DVD発売:2012/12/26
  • 発売元:ミッドシップ
  • 販売元:角川書店
  • 価格:3,990円

題字・イラスト:五月女ケイ子