今回はレイプ・リベンジ作品!

「恨み晴らさでおくべきか。」とはまた古風な……

女性の復讐劇と言えば、B級アクション映画の定番であり、中でもレイプされた女性が犯人を徹底的に痛めつける“レイプ・リベンジ”作品は、70年代に量産され、『発情アニマル』(78)や『鮮血の美学』(72)、『リップスティック』(76)といった作品は未だに一部のファンに語り継がれている。2000年代後半になると、『鮮血の美学』、『発情アニマル』がリメイクされ、我が国でも廃盤済みのDVDも再リリースされ、『リップスティック』に関しては初DVD化にも関わらず1500円というお求め易い価格でリリースされるなど、このジャンルが見直されているような感じがしてやまない。

今回ご紹介する『処刑人チェリー』は、「レイプ・リベンジ」と「女処刑人VS.暗殺者」を前面に押し出したB級アクション映画だ。ソフトリリースの時期に関しても、レイプ・リベンジが見直されつつあるタイミングでちょうど良い。

セクシーなダンスシーンもサービス満点

ストリップクラブで働く美人ストリッパーのチェリー・ボム(ジュリン)は、ある日、常連客である野郎どもにレイプされてしまう。負傷して入院中のチェリーのもとに刑事が事情聴取に来るが、犯人にはアリバイがあり、嵌められたことを知る。病院を抜け出したチェリーは憎き仇を1人ずつ殺害していくが、謎の凄腕黒人殺し屋のブルに命を狙われることになる……。

冒頭のストリップクラブのシーンでは、チェリーのセクシーダンスが堪能できる。ポールダンスもしっかりと披露してくれるが、全部は脱いでくれないのが残念。そのかわり、半裸の美女がチラホラ登場するので、お色気を期待する方にもオススメだ。

"チェリー"のタトゥーの入った艶めかしい肢体で男たちを虜に

最初の見せ場はチェリーがレイプされるシーンだが、驚くことにかなりあっさり描かれてしまっている。エロスもイマイチ、陵辱劇ならではの陰惨な雰囲気も味わえない。肩透かしを喰らわされたような気分になるが、題材が題材だけにこの程度の描写が良心的なのかもしれない。

その後は、長らく音信不通状態であったチェリーの兄貴も彼女のことを心配して病院に駆けつけ、兄妹のレイプ犯に対する復讐劇と、アフロ姿の黒人殺し屋からの追跡をかわしながらも闘いを挑むアクション劇が見どころとなる。

目には目を! エロにはグロを!

いよいよリベンジがスタート。まずは、金髪のカツラを被ってクラブでダンスに興じているレイプ犯に接近し、色仕掛けで迫りつつ小さなナイフで腹部を刺して処刑完了。続いて、会社内で取引先の男性と商談中のレイプ犯に対しては、風変わりなやり口を実行。無理矢理会議室に押し入り、持参したラジカセから音楽を流してストリップ仕込みのダンスを披露して、取引を不成立にさせるという復讐方法は、まさにユニークだ。少し酷くて可愛そうな復讐シーンもある。チェリーに手出しはしなかったものの、レイプされているところを見て見ぬフリをした黒人青年を妻子の目前で銃撃してしまうのだ。突然、銃弾に倒れ込んだ父親の姿に泣き叫ぶ妻子の姿には良心が痛み、感心はできないが、印象に残ることだけは確かだ。これらの復讐劇は同趣向の作品に比べると地味ではあるものの、逆に観る者の印象に残るようなアイディアを活かせたシーンだと実感した。

アクションシーンを盛り上げてくれるのは、殺し屋ブルの存在だ。ブルが運転する車とチェリーの兄貴が運転する車のカーチェイス、車を走らせながらの銃撃戦で楽しませてくれる。迫力満点でスリリングとは言い難いが、アクション映画らしいシーンをしっかりと用意した点は評価したい。

"スゴ腕殺し屋のブル。不敵な表情で冷酷さが漂い、クールにシゴトをこなす恐いヤツ。なぜチェリーの命を狙うのか?

後半からクライマックスにかけては、残虐バイオレンスのテイストがにわかに発揮される。特に、クライマックスの●●をナイフで抉り出すシーン(ぜひ鑑賞して確認を!)は、本作におけるグロテスクシーンの中でも、気持ち悪さと残虐さが最大限に発揮されたシーンだ。

低予算で派手さは抑え気味であっても、随所に見どころを散りばめ、観る者を楽しませようとする努力は感じられた本作。暇つぶしにオススメの気楽なB級娯楽作品だ!

『処刑人チェリー』作品概要

2010年 アメリカ映画

  • 原題:「CHERRY BOMB」
  • 出演:ジュリン、ニック・マニング、ジョン・ガブリエル・ロドリゲス、デニス・ウィリアムソン、アーロン・アレキサンダー、トニー・ボットルフ
  • 監督・脚本:カイル・デイ
  • 上映時間:85分
  • 発売:アメイジングD.C.
  • 発売日:2012/08/03
  • 価格:4,300円