よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

相変わらず盛んに制作されているゾンビ映画。未公開作品でもゾンビ映画は毎月続々とリリースされており、その勢いは衰える気配が一向になさそうだ。

今回は、一風変わった未公開ゾンビ映画を紹介する。ジェイソン・ボリンジャーとマイク・サウンダースが共同でメガホンをとった『デッドタウン・ゾンビ』だ。

結末は話さないで、というお願いが大書されているパッケージ。これには納得の深いワケがあるのだ

農夫ロバート(クリス・マルキー)の住む小さな町に突如ゾンビが出現し、彼の長男ウィルがゾンビに噛まれてしまった。家の中が安全だと考えたロバートは妻モリー(カレン・ランドリー)とウィルをかくまい、窓に板を打ち付けるなど補強してあらゆる出口を塞いだ。しかし、ウィルの治療薬や食料、ガソリンを入手するため、ロバートは単独で町の中心部へ。そこには果たしてゾンビの大群が……。

基本的な見どころと言えば、もちろんゾンビ軍団を蹴散らしていくロバートの姿だ。ちなみに本作に登場するゾンビはノロノロと歩くオーソドックスなスタイル。特殊な能力を駆使したり、凄まじい攻撃を仕掛けてきたりといったタイプではない。あくまでもごく普通のゾンビなのである。撃退方法に関しては、拳銃をブッ放すのがメインというよくありがちなもの。

本編開始から15分後に1匹目のゾンビが登場するが、ロバートにスコップで殴りつけられて退場。その後、ロバートの武器はスコップからショットガンにレベルアップし、どんどん増えるゾンビを次々と撃ち殺していく。中には頭部に見事命中して顔面丸ごと木っ端微塵になったヤツもいれば、キッチンの窓から侵入してきたヤツはロバートにより包丁で首と肩をメッタ刺しにされていた。序盤のゾンビ撃退劇は残虐性やグロ描写は抑え気味ではあるものの、単純な面白さだけは味わえるのでよろしい。

ロバートが車を走らせて町の中心部に出かけてからは、ゾンビの数もじわじわと増える。どうやら、この町に普通の人間は1人もいない。町の人々はみんなゾンビ化しているのだ。そんな危機的状況に屈することなくロバートは拳銃でゾンビを次々と蹴散らしていく。見る者が待ち焦がれていたロバート対ゾンビ軍団の激闘が本格化され、ドラマは一気に盛り上っていく。

ゾンビは意外と人間そのままな感じ

食料を確保するべく店に入り、そこにいたゾンビどもを撃退したロバートは、ついに普通の若い女性を発見する。「町の人々はみんなゾンビ化してしまった」と思い込んで観ていた方なら、「やっと普通の人間が登場した! しかも女!」と、この女性の存在に大いに驚かされることだろう。ロバートが彼女に「自分の家に来れば大丈夫!」と怒鳴りながら言い聞かせて車に乗せたところまで良いが、ロバートが持っているバッグを彼女が何気なく開けてしまった瞬間から目をむく展開が待っている。そのバッグの中に入っている“あるモノ”に驚いた女性は思わずバッグを車外へ放り投げた、まさにその時! ロバートの怒りのヴォルテージがマックスに達し、なんと女性をあっさり銃殺してしまうのだ。やっと普通の人間が登場し、2人の逃避行やゾンビ撃退劇が見られるのでは!? と期待したのに、肩すかしを食らったような気分になった。

終盤、ロバートの妻はウィルの治療薬を必死に探しまわり、ロバートの名が記載された“ある薬品”を発見する。この発見でストーリーは一気に形勢逆転! 見る者は一風変わった新たなるゾンビ映画の面白さを目の当たりにすることになるのだ。この形成逆転劇こそ本作最大の見どころであり、キャッチコピーである「人間VSゾンビ、本当のモンスターはどっちだ!?」の意味が理解できるのである。私も「おぉ、そんな設定があったのか!! こんなゾンビ映画、今まで見たことなかったぞ!!」と驚かされてしまった。是非ともDVDを買うかレンタルしてじっくりとご堪能して頂きたい次第だ。

とにかくゾンビ映画のファンやマニアなら未公開映画だからと言って侮ってはならない。真のゾンビ映画ファン、マニアを豪語するなら終盤の大どんでん返しを見逃す手はない。上映時間は83分と短めだから、ホラーやゾンビに興味がない方にも気軽に楽しんでもらいたい。

ちなみに夫婦役のクリス・マルキーとカレン・ランドリー、このお2人は実生活でも夫婦なのである。

『デッドタウン・ゾンビ』作品概要

2010年アメリカ映画

  • 原題:「COLLAPSE」
  • 出演:クリス・マルキー、カレン・ランドリー、イーサン・ヘンリー
  • 監督:ジェイソン・ボリンジャー、マイク・サウンダース
  • 上映時間:83分
  • DVD発売日:2012/04/27
  • 販売:エプコット
  • 価格:3,990円