よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

今回ご紹介する作品は、カナダ産の低予算お手頃モンスターパニック作品だ。

原題の「prey for the beast」は「ケモノの餌食」的な意味。超ストレートですね

主演のブレット・ケリーは監督、編集も務めている。彼は、自身が経営するプロダクションで『トレジャー・オブ・スネークアイランド』(09)や『恐怖のモンスターパニック 吸血巨大ヒル襲来!』(08)といった未公開B級モンスターパニック作品を手がける立派なB級映画メイカーなのである。

舞台は山奥の森林。そこには、訪れた人々を襲撃しては喰い尽くす獰猛なモンスターが棲息しているという噂があった。しかし、その姿を見た者は誰一人ない。記者ジェリーはその全貌を明らかにし、一大スクープを入手するべく森を突き進む……。

ついに遭遇したモンスターはこの世のモノとは思えないルックスの未知なる生物であり、必死で撮影しまくるジェリーを凄まじい勢いで襲撃。その頃、8人の男女(内訳:男4人、女4人)がバカンスを楽しむべくこの森に入り込むが、当然のごとく彼らもこのモンスターの恐怖に晒されるハメに……。

低予算B級以下作品らしく、テンポやモンスターが人を襲撃するシーンの勢いは良いとは言い難い。だが、モンスターの造形は安っぽさを感じさせないし、グロ描写にも力を入れて描いているのが何よりも素晴らしく、大いに評価したい。モンスターに関しては、『仮面ライダー』や『宇宙刑事』をはじめとする“メタル・ヒーロー”シリーズに登場するような怪人に近いため、「子供たちが喜びそうなカッコいいヒーローと壮絶なバトルを繰り広げるシーンが相応しいのでは?」と思えたほど。

これ、顔とかどうなっちゃっているの……

モンスターは野生のクマのように鋭い爪で人間の胴体をかっさばき、大量の血にとどまらず腸まで飛び出すという悪趣味パワー全開。また、ディープすぎる深手を負ったジェリーのあまりに痛々しい姿には思わず目を背けたくなった。こちらはぜひ鑑賞して確かめていただきたい。

さて。冒頭にチラリと触れた男4人と女4人の一行はモンスターの恐怖から逃れるべく森林からの脱出を試みるが、続々と餌食になってしまい、結局は真っ向から挑むことを決意する。一丁の拳銃と弓矢という絶好の武器があるにもかかわらず、モンスター出現の際にうまく活用できていないのが残念。そこをうまく描いていれば、面白さがレベルアップしていただろう。

最終的には金髪のキレイなお姉さん2人だけが生き残り、目の前に現れたモンスターに真っ向から対決を挑む。このクライマックスで面白さが最大限に発揮されるのだが、銃弾を一発撃ち込み、大きな鉈で頭部を斬りつけてモンスター退治終了。散々暴れまわってくれたモンスターは、最終的には美女2人に簡単にやっつけられてしまうのだ。1人の男が美女を守るべく孤軍奮闘するのはよくありがちだが、そこをあえて女2人が無傷で簡単にやっつけるというのがユニークであると同時にちょっとした目新しさすら感じられた。このような風変わりな面白さが味わえるのが未公開作品の良きポイントなのである。

お嬢さーん、うしろうしろー

ストーリーは簡素化されており、見せるべきところはしっかりと見せている本作。モンスターパニック作品やグロゴア描写がお好きな方には大いにオススメしたい。また、上映時間は75分という短さだから、「暇つぶしに気楽に楽しめる映画を観たい」とか「寝るまでに少し時間があるから観易い映画をのほほんと楽しみたい」という方には絶好の作品。

『テリトリー』

  • 2007年 カナダ映画
  • 原題:「PREY FOR THE BEAST」
  • 出演:ブレット・ケリー、アナスタシア・キメット、アマンダ・リー、レイ・ビシャラ、ジョディ・ピットマン、リサ・エイトケン
  • 監督:ブレット・ケリー
  • 上映時間:75分
  • 発売:トランスワールドアソシエイツ
  • 発売日:2012/0704 価格:4,935円
ささき・たかゆき

「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する

タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子