よいこのQ&A

Q:『節子、それタイタニックやない!』ってなあに?
A:某客船映画みたいにお金かけてません。有名な俳優さんも出てません。でも、作り手の意気込みは負けちゃいないぜ! という知られざる優良エンタメ作品を貪欲に紹介していくコラムだよ。アクション、SF、ホラー、面白いものは何でもアリ! レンタル屋さんに行きたくなること請け合いだァ!

未公開のB級アクション映画と言えば、ストーリー展開が退屈な上にアクション映画に必要な三大要素である爆破・銃撃戦・カーチェイスがショボい作品群も少なくはない。

レンタル店にて面白そうな未公開B級アクション作品を探しまわり、パッケージにド派手なアクションへの期待を抱きつつ借りて帰った『ボディ・アーマー』。ハリウッド製アクション大作に比べるとパワーダウンは否めないが、ツボがしっかりと押さえられたB級アクション映画として楽しめた。

本記事のタイトルに特に意味はありません。すみません

一流ボディーガードのリドリー(ティル・シュヴァイガー)はアメリカ大統領候補の女性を護衛していたが、敵の銃弾で負傷したパートナーを救出したことで大統領候補は殺し屋マクスウェル(チャズ・パルミンテリ)に殺害され、自身もケガを負う。この事件が原因で仕事を辞めたリドリーは3年後には妻に逃げられ、ボクシングトレーナーとして冴えない日々を過ごしていた。そこに、昔の仲間から政府の要請である人物を護衛するようにという依頼が寄せられる。ある人物とは、リドリーの人生をハチャメチャにしてくれた憎きマクスウェルだった……。

ボディーガードと殺し屋という異色のタッグが巨悪に挑むのがウリである本作。「殺したいほど恨んでいる相手がなぜ護衛を頼み込んできたのか!?」、「善を行うことを決意したマクスウェルの本当の狙いは!?」ということが観る者を惹きつける。

主人公リドリーにはドイツの実力派、ティル・シュヴァイガーが扮している。かつて『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』では製作・脚本・出演の3役をこなして大ヒットへと導き、その後も『トゥームレイダー2』や『イングロリアス・バスターズ』といったヒット作へ出演。最近では『Black&White /ブラック&ホワイト』で悪役を演じていたことが記憶に新しい。本作では短髪で黒いスーツとネクタイというシンプルな衣装がクールな雰囲気を漂わせた男臭さが魅力的で、男性ウケ必至のアクションを盛り上げてくれる。

監督はジェリー・リブリー。劇場公開作品は『ダンジョン&ドラゴン2』のみで、あとは未公開作品が本作を含めて4本のみという立派なB級映画メイカーなのである。

女性大統領候補のスピーチ中に車が大破炎上し、建物から炎が噴出、群集がパニックになって逃げ回る序盤では大掛かりな爆破シーンが堪能できる。そのままリドリーとパートナーが女性大統領候補をガードしながら、敵との銃撃戦にもつれこむ。これは期待できる立ち上がり。

その後、裏切り者マクスウェルを仕留めるべく組織から送り込まれた敵どもを相手取り、ハードな肉弾戦や拳銃をブッ放して蹴散らしていく。他に、ちょっとしたカーチェイスと車が宙を舞うクラッシュシーン、リドリーのかつての戦友が経営するクラブでの大銃撃戦といった演出は、大迫力とまでは言えないもののなかなか良質のアクションに仕上がっている。

男ウケするアクション映画には、こういう短髪で無骨な雰囲気の野郎が一番相応しい

クライマックスでは、リドリーのかつての戦友の豪邸で敵たちと壮絶なバトルが繰り広げられる。銃弾が飛び交い、テーマパーク風の庭の地面はボンボンと爆発しまくり、リドリーは雑魚キャラの敵をボコスカたこ殴りにし、マクスウェルも応戦する。爆破シーンはクライマックスに相応しいハイテンションな見せ場として仕上がっており、手に汗を握って楽しめることは確かだ。

アクションシーンだけでなく、ドラマ部分でも見逃せないシーンがある。マクスウェルが久々に再会した娘との親子の距離を縮め、娘を必死に守るべく奮闘し、亡き妻や娘を愛していたことを吐露するといった良き親父らしい一面を描いたシーンは観る者に好印象を与える。

ド派手でもなければ地味でもない。B級アクションと呼ぶに相応しい丁度良い感じの演出だからこそ、安心して楽しめる一作だ。

(C)2006 ApolloProMovie GmbH & Co.2.Filmproduktion K.G.All Rights Reserved.

『ボディ・アーマー』作品概要

  • 2007年アメリカ、オーストラリア、ドイツ、スペイン、イギリス
  • 原題:「BODY ARMOUR」、「DER BODYGUARD」(ドイツ語タイトル)
  • 監督:ジェリー・リブリー
  • 出演:ティル・シュヴァイガー、チャズ・パルミンテリ、クリスティーナ・ブロンド
  • 上映時間:90分
  • DVD発売中
  • 価格:¥3,990
  • 発売:日活
  • 販売:ハピネット
ささき・たかゆき

「映画ライター。1982年、大阪府出身。アクション映画、任侠ヤクザ映画といった男泣き&男臭い作品が大のお気に入り。他にはホラー、コメディー、ミュージカルも……とにかくB級映画、おバカ映画をこよなく愛する

タイトルイラスト&題字:五月女ケイ子