前回は、社会人になったら世の中の仕組みをしっかり理解したうえで、お金のことを考えるのが大切だとしました。世の中の仕組みを知らずにお金を考えられるはずがありません。とは言っても、新社会人の薄給で、やりたいこともエネルギーもいっぱい、そうそう節約を考える余地はないと思うかもしれません。そこで、今あるモノや生活スタイルを削る方向で考える前に、ゼロの状態をイメージしてみる方向で考えてみたらどうでしようか。
新社会人にふさわしい生活水準とは?
「断捨離」「ミニマリズム」という言葉が注目を浴びています。ものにあふれた状況がストレスを大きくしていき、シンプルな生活を見直す機運が芽生えたのだと思います。
モノが人に与えるストレスは私たちが考える以上に相当のもののようです。筆者が最初に住んだ部屋も間借りで6畳の中にキッチンがある部屋でバスなし、トイレ共同でしたが、これでも当時は6畳という広さが贅沢な部類でした。
その時の電化製品は冷蔵庫と実家で使っていたスタンドとラジオ、これだけです。本当にこれだけで、冷蔵庫は食品の衛生面と節約を考えれば必需品で、6か月間お金を貯めて独立と同時に購入しました。後は、なくても全然問題ありません。次に買ったのがアイロンで、社会人としての身だしなみ上、これも必需品でした。新社会人が親から独立するときに整えると思われる家電製品は多くは今も我が家にはありません。なくて済むものはない方が、ストレスがありません。マンション暮らしであるためと、喘息患者のために我が家には高性能の電気掃除機がありますが、箒(ほうき)でサッサッと庭に埃を掃き出すスタイルがどんなに簡単でストレスがないかといつも思います。
新社会人が、昔のようなシンプルライフを行えば相当な貯蓄がたまると思います。本来まだ力がないのに、親元の生活と同レベルを期待して、贅沢な暮らしになっているのは間違いがないでしょう。若い世代は現在の高齢者やその予備軍への負担が大きく、自分たちが高齢になっても、同様のサービスを受けられないと不満を持っているようですが、少子化にならないように自分たちが子供を多く作れば済むのではないかと言うと、経済が低迷しているので、子供を作るのは不安と答えが返ってきます。戦後間もなくの日本の人口は約8000万人で、人口は短期間で急増するのです。「子供にお金が係る」は、自分たちの贅沢に気づいていない結果のように思えます。
子供の教育にはお金が係るのは事実ですが、グローバル化の時代、世界の国々の子供たちが自力で大学に行くのに比較して、親がかりの日本の子供がどれだけ対抗できるでしょうか。最近仕事に積極的にかかわっている比率が日本人は国際的に最低基準だという記事を見ました。学ぶ意味を実感せずに卒業したら当然かもしれません。
節約すればどれくらい貯まる?
最近は喫煙しない人が増えてきましたが、下記の図は、たばこを1日1箱吸った場合は65歳までにどれだけの損失になるのか、その額を運用すれば、65歳にどれだけの資金がプールされるかを検証したものです。メビウスで1年間に約15万円です。65歳までに約700万使います。毎年その分定期預金などにすれば65までに780万プールできます。より積極的に3%で運用すれば、なんと1,480万にもなります。またペットボトル150円をマイポットに買えれば、差額は65歳までで207万、定期預金で226万、3%の運用で430万となります。
呑み代、会食代、通信費、衣服費、住居費…… 少しずつどれだけ贅沢をしているでしょうか。私は社会人になってしばらくお茶の葉も買えませんでした。「お茶の葉が自分にとって贅沢」だということに少なからぬショックを受けた記憶があります。
何も今あるものを捨てる必要はありません。自分の立ち位置、ベースを自覚して、健全な生活スタイルを模索すればよいのです。新社会人で、まだなんの力もない、資産もない状態の人間が、どのような生活が健全なのか、そのうえでどうお金をコントロールしていくかを考えるのが大切だと思います。節約の前にベースラインを決めれば、「節約」がストレスではなく受け入れられるように思います。
<著者プロフィール>
佐藤 章子
一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
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