連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

住宅ローン返済後も払い続けなければならない費用がある

マンションは集合住宅ということもあり、建物は専有部分と共用部分に分かれています。専有部分とは個々の居住空間のこと。一方、共用部分はエントランス、共用廊下、エレベーター、電気や給排水などの共用設備、屋上など、専有部分の以外の建物部分のことです。

専有部分の維持・管理、修繕は、入居者が自分で行いますが、共用部分はマンション管理組合が行います。そのため、マンションでは一戸建ての場合にはかからない「管理費」と「修繕積立金」がかかります。

住宅ローンを借りてマンションを購入すると、それ以降、長期に亘って毎月ローンの返済をしますが、それとは別に「管理費」と「修繕積立金」も毎月支払う必要があります。これらは、ローン返済が終わったあとも払い続けなければならない費用です。

家計の中の固定支出として長期的にかかる費用であるため、トータルではバカにならない金額になります。そのため、マンションを購入する場合には、事前に「毎月いくらかかるのか?」、「将来その金額がどうなるか? 」をしっかりと確認しておきたいものです。

マンションの「管理費」「修繕積立金」とは?

管理費とは、マンションの日常的な管理や設備の維持などにかかる費用のことで、マンション管理会社への委託費、管理組合の運営にかかわる費用、共用部分の水道光熱費、共用部分の火災保険その他の損害保険の保険料、軽微な損傷等の補修費などがあります。マンション管理会社への委託費の中には、管理人の人件費、共用部分の設備の維持管理・点検費、清掃費などが含まれます。

修繕積立金は、共用部分の大規模修繕に必要な費用を、計画的に積み立てるお金です。建物は長期間経過すると劣化していき、大きな修繕が12年、15年、30年といった一定期間ごとに必要になります。これらをその都度一括で徴収することは入居者にとって大きな負担になります。資金不足で修繕ができない事態になるかもしれません。そうならないように、あらかじめ長期修繕計画を立て、それにもとづいて修繕積立金の額が決められています。

管理費の平均は月15,970円、修繕積立金の平均は月11,463円

国土交通省の「平成25年度マンション総合調査結果」によると、管理費、修繕積立金の月額平均は以下の通りです。

  • 管理費、修繕積立金の月額平均(平成25年度 マンション総合調査結果)

マンションに駐車場があり、それが稼働している場合、その使用料を管理費や修繕積立金に充当すれば各戸の負担が少なくなります。ただ、現在は都市部ではマイカーを持たない人も増えています。

管理費は、総戸数規模が大きくなるほど低くなる傾向があります。その理由は、管理人の人件費のような固定的な費用を、たくさんの戸数で分担することができるからです。

例えば、管理費が月額1万5,000円、修繕積立金が月額1万1,000円かかるとすると、合計で月額2万6,000円。50年間居住する場合、単純合計で1,560万円かかることになります。大きな額なだけに、マンションを購入する前には、物件の価格だけでなく、これらの額がいくら程度かかるのかをしっかりと確認する必要があります。

なお、これらの額は定額とは限りません。修繕積立金の積み立て方法には、「均等積立方式」と「段階増額積立方式」があり、新築マンションの場合は、購入する人の月額負担を軽減するために「段階増額積立方式」を採用している場合がほとんどです。そのため、当初は安くても、将来は段階的に値上げされていきます。

その他にも、マンション管理組合の財務状況によっては、修繕するための費用が不足して修繕一時金を負担しなければならないケースが生じたり、インフレ等によって管理費などがアップしたりすることも考えられます。

マンション購入前のチェックポイント

将来のインフレ等に伴う管理費や修繕費用の変動を予想することは難しいでしょうが、少なくとも確認しておきたいのは、購入時の管理費と修繕積立金の金額、さらに、長期修繕計画、及びそれにもとづく修繕積立金の将来の推移です。中古マンションの場合は、そのときのマンション管理組合の財務状況も確認したいものです。マンション販売業者や不動産会社経由で入手してチェックするようにしましょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

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ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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