連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

子供ができたときに必要な保険は「定期死亡保険」

結婚して子供ができると、万が一自分が死亡した場合などのことを心配して「生命保険に入らねば!」と考える人は多いでしょう。そのときに必要なのは「定期死亡保険」や「収入保障保険」です。つまり、一生涯保障が続く「終身死亡保険」ではなく、期間限定(定期)の保険です。

なぜなら、そのとき必要な保障は、主に子供の教育費や子供が小さくて配偶者が働けない時期の生活費だからです。子供が生まれて大学を卒業し、自立するまでの期間は23年から25年程度です。それ以降、一般的に教育費はかかりません。だから保険期間は長くても25年程度でよいのです。

その代わり、大きな保障が必要です。教育費だけでも子供が大学を卒業して自立するまでに1人当たり1,000万円程度かかります。子供が2人だと2,000万円程度必要になります。不足する生活費等を含めると、3,000万円から5,000万円程度の死亡保険金額を設定する必要があるでしょう。

ただし、死亡保険金額は、子供の成長とともに見直して少なくして構いません。なぜなら、子供が成長すれば、それだけ自立するまでの期間が短くなり、それ以後必要な教育費等も少なくなるからです。なお、「収入保障保険」は、時間の経過とともに自動的に死亡保険金額が少なくなるタイプの定期保険なので、途中で見直しをする必要がありません。

「終身死亡保険」は保険料が高くて現実的に払えない!

定期保険は基本的に「掛け捨て型」の保険です。保険期間中に万が一のことが起こらないときは“保険料の払い損”になってしまいます。そのため、中にはもったいないのではないかと考える方もいるようです。

では、払い損にならない「終身死亡保険」がよいかと言うと、そうでもありません。なぜなら、終身死亡保険で必要な保障を確保しようとすると、保険料が極めて高くなり、一般的な家計では負担できない金額になるからです。

例でみてみましょう。オリックス生命の定期死亡保険「ブリッジ」と、終身死亡保険「ライズ」で月額保険料を比較してみました。

■条件 30歳男性、死亡保険金:3,000万円

終身死亡保険の月額保険料は、定期死亡保険の実に7.4倍もの保険料水準です。これでは家計の負担が大き過ぎます。もちろん、子供が自立したあとも保障が続くため、配偶者の老後は安心かもしれません。しかし、そのために足元の家計を犠牲にしては本末転倒です。

終身死亡保険に入る代わりに、貯蓄に励む!

終身死亡保険は、将来解約すると解約返戻金を受け取ることができることから「貯蓄の代わりになる」とも言われます。しかし、現在は、市場金利が超低金利であるため、保険料の運用利率として保険会社が契約者に約束する予定利率も極めて低く、貯蓄の代わりになると言える水準ではありません。

このような日本の金利情勢のもと、生命保険会社は、比較的金利水準が高い外国の通貨建ての終身死亡保険の販売に力を入れています。ただし、外貨建ての生命保険には為替変動リスクがあり、将来受け取る解約返戻金や死亡保険金は円安・円高の影響を受けます。

終身死亡保険の基本的な役割は「死後の整理資金」と言われています。自分が死亡したときの葬儀代や墓代などとして200万円から500万円程度を死亡保険金額にして契約するのが一般的です。

しかし、この程度の金額であれば、貯蓄でもカバーできるのではないでしょうか。現在の金利情勢が続く限り、終身死亡保険の魅力は相当低いと言わざるをえないでしょう。貯蓄代わりに保険に入るよりは、シンプルに貯蓄に励んだ方がよいでしょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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