連載コラム『サラリーマンが知っておきたいマネーテクニック』では、会社員が身につけておきたいマネーに関する知識やスキル・テクニック・ノウハウを、ファイナンシャルプランナーの中村宏氏が、独断も交えながらお伝えします。

2017年8月の物価は1年前より0.7%アップしている!

今年に入ってから、物価がじわじわと上がってきています。物価のモノサシである消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比の推移を見てみましょう。

物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比の推移

上の表は、各月が1年前と比較して物価がどの程度変動したかを示しています。2016年は8月から12月まではいずれの月も1年前より物価が下落する、いわゆる「デフレ」の状況でした。しかし、2017年に入ってからは物価が上昇に転じています。

2017年1月は、前年1月よりも+0.1%の上昇にとどまっていますが、その後、じわじわと上昇を続け、2017年8月は1年前よりも+0.7%上がり、インフレの様相を呈してきました。

日本銀行は、2013年の春から物価上昇率+2.0%の目標を掲げて金融政策を実施しています。現在の物価上昇率はまだ目標に及びませんが、私たちは、将来物価が上昇することも念頭に置いて、生活を送る必要があります。

インフレは暮らしを直撃する!

インフレは、私たちの生活に直接大きな影響を及ぼします。インフレの中で何もしないでいると、私たちは買えるものが徐々に減っていき、生活水準を落とさざるを得なくなるかもしれません。

例えば、現在1万円のモノが物価上昇の影響で1年後に1万2,000円に値上がりしたとしましょう。同じものなのに1万2,000円を支払わなければ買えなくなります。値上がりした2,000円分は、他の支出を切り詰めて捻出するか、貯蓄から出すか、もっと働いて収入を増やすかしなければならなくなります。

インフレになっても、物価上昇率以上に賃金がアップすれば、モノの値段が上がった分を十分に吸収できるでしょう。しかし、賃金の上昇率が物価上昇率に追いつかない場合は、生活が苦しくなっていきます。

貯蓄などの金融資産も、金利や利率が物価上昇率を上回る水準であれば実質的に「お金が増えた」といえるのですが、逆に下回る水準だと、見た目にはお金が増えていても実質的には「減った」ことになります。

そして、2017年の8月の物価上昇率は1年前と比べて+0.7%上昇していますが、足元の主な定期預金(1年満期)の金利は0.01%にとどまっています。

いつも物価上昇率を意識して生活をする!

家計のヤリクリをしながら買い物をしている主婦の方は、最もモノの値段の動きに敏感でしょう。しかし、私たちは常日頃、「物価上昇率」を意識して暮らすことはほとんどありません。

できれば、時々報道される「消費者物価指数」に意識を向けたいものです。 というのも、「消費者物価指数」は、私たちが生活をしていく上での様々な評価のモノサシになるからです。賃金がアップするときに、その上昇率が物価上昇率を上回っているか、あるいは、下回っているかで評価しましよう。

また、貯蓄型の生命保険や預貯金を選ぶときにも、その利率が、物価上昇率を上回っているか、あるいは、下回っているかで判断するようにしましょう。さらに、投資をする場合でも物価上昇率を上回るリターンを目標利回りに設定して資産配分などを決めるようにしましょう。

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。

「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。新著:『老後に破産する人、しない人』(KADOKAWA中経出版)

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