もうかなり昔の話ですが、ベトナム戦争時、武器もままならなかったベトコン(南ベトナム民族解放戦線)と圧倒的な軍事力を持つ米軍との戦闘でのエピソードを、トレーディングと重ね合わせて思い出すことがあります。

それは、何機もの米軍機をベトコンは銃で撃墜したという話です。米軍のジェット戦闘機は、地上攻撃の際にコンピュータ制御による自動操縦を使用しました。ベトコンは、米軍機が同じパターンで飛来してくることに気づき、これを迎撃する戦法を編み出しました。

その戦法とは、飛来してくるルートの中で銃弾が届く低空部分で、空に大きな四角をイメージして、米軍機が飛んでくると、その四角の部分に集中して銃で一斉射撃をし、墜落したというものです。 この迎撃手法による米軍の損害は、無視できないほどに及んだと言われています。

このエピソードで言えることのひとつは、相場においてもパターン化して相場を見るということの危険性です。

たとえば、ショートのロスカットの入れ方が、皆が置きたくなるような、108.00超えとか108.50超えといった水準に集中すると、そのパターンによってロスカットが集中し、ロンドンのようにショートスクイズ(ショート筋を買い上げてポジション切らせて利食うロンドン勢の得意技)を狙うものにとっては、願ったりかなったりということになります。

もうひとつ、このエピソードから感じることは、武器もろくになく経験度も十分でなくても、知恵と工夫によって、圧倒的なマーケットの中でも十分に生き抜いていけるということです。

皆と同じことをしていても、それは単にパターン化している中に加わるだけですので、やはり創意工夫が必要になるということだと思います。 創意工夫には、限りがありません。 ただし、あくまでも、フェアプレーで臨むことが大切です。

独自性を持つ

今回の新型コロナウィルスの感染拡大によって、ほとんどの企業あるいは個人が、いろいろな意味で甚大な害を被っています。しかし、そうした中でも、早期に立ち直り、一歩先を進む企業なり個人なりが出てくるものと思われます。

そうした企業・個人に共通するキーワードは、「独自性」だと思います。独自性が正しく行われていれば、他との差別化ができ、好不況に関わらず競争を優位に運べます。

個人的には、為替のトレーディングでも、この独自性が大事だと言えるのではないかと思っています。 相場観という点でも、皆と同じような相場の見方になって同じようなポジションを持てば、マーケットのポジションは一方向に偏ってしまい、結局はポジション調整に巻き込まれてしまいます。

たとえ同じような相場観を持つにしても、人より早く相場に入って、皆が気づいてポジションを持ち始めたところを、逆に利食いのタイミングにするとか、全く大勢とは違う見方でポジションを張り、大勢が違うと気づいてロスカットしてくるところを涼しい顔をして利食うとか、独特の相場観を持つという独自性によって道は拓けます。

また、流動性の低い通貨はお勧めしませんが、あまり一般的でない通貨ペアの達人になるとか、トレーディングの一般的とされる期間や時間帯を変えるとか、MACD・ストキャスティックス・RSIなどポピュラーな分析法でないものに精通するとか、いろいろ工夫の余地はあると思います。

つまり、「人の行く裏に道あり花の山」なのです。

そのためには、相場観を鍛え、いろいろなことを経験し、また学ぶ必要があります。 利益を得るということは決して簡単ではありませんし、道端に落ちているものでもありません。

知恵と工夫と努力があってこその利益獲得だと思います。

ストラテジスト 水上紀行

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら