相場で、重要情報が束になって転がっているということは、基本的にありません。情報は地道に足で集めることが大事です。ただし、現在では、コンプライアンス(法令順守)が厳しくなり、情報を簡単には入手できなくなっています。

したがって、公表される情報と推理で相場を読むことが大変重要になっています。

それでは、ここでは、4月の末以来7月前半までのドル/円相場を例にして、お話を進めたいと思います。

まず、実際に公表されていた以下のような記事についてお話ししましょう。

生命保険会社(生保=機関投資家の大手)各社の新年度方針が決まった4月30日付けの記事です。

タイトルは、「大手生命保険各社の2019年度の資産運用方針が出そろう」とあり、中には、こんなことが書かれていました。

「(生命保険各社は)外国債券への投資に注力」

また、他の記事では、「各社の方針は、ドル/円が下がったら買う」

このことから、機関投資家の方針は、外債運用を新年度増やすけれども、ドル/円が下がらないと買わないということが公表されていました。

ここで、5月以降の相場展開を見てみましょう。

  • ドル/円 日足

トランプ大統領の対中追加関税表明、対メキシコの不法移民に関する追加関税表明など、度重なる過激発言に、ドル/円はリスク回避の円買いが頻発し、下落しました。

そして、ここからは推理ですが、大量の買い下がりが、109円台前半から106円台後半まで続いたことを、値動きからわかりました。

これだけ買い下がれるのは、下がったら買う方針の日本の機関投資家しかいないと思われました。

しかし、同時に、彼らが想定していた以上に下落は早くてかつ深く、かなり積み上がったロングポジションを軽くしたいと考えていると推理しました。

そこへ、6月29日、30日の週末に、米中首脳会談で貿易協議再開で合意し、なおかつ米朝首脳会談が実現したことで、リスクが回避されたとする円売り(リスクオン)が大々的に月曜の早朝に出て、週末越えでドル/円相場に窓が開きました。

  • ドル/円 1時間足

もちろんドルショートのストップロスもあったと思いますが、むしろ、月曜早朝に買いから入ってきた海外投機筋の方が多かったと思われます。

こうして海外投機筋が買ってきてくれたのですから、待ち構えていた日本の機関投資家は、108.50近辺で大量に売ってロングポジションを軽くしたのだと思います。

海外投機筋は、108.50の売りに対して、繰り返し買い上げましたがビクともせず、とうとう7月2日のニューヨークタイムから、買いを断念して投げ売りとなり、一気に窓埋めとなったもようです。

ただし、それだけで話が終わったわけではありません。

  • ドル/円 1時間足

7月5日に発表された6月の米雇用統計で非農業部門就業者数が22.4万人と予想の16.0万人を大きく上回り、早期の利下げ期待が後退しドル/円の買いは再び強烈に強まり、109.00接近となりました。

しかし、この場面でも、機関投資家と思われる指値の売りは引きませんでした。

要は、109円台前半から106円台後半で買い下がったロングポジションをさらに売って、身軽になろうとしていることが読み取れました。

こうして見てみると、機関投資家が、新年度に決めた方針にしたがって、粛々とミッションを遂行していることがわかります。

要は、彼らのミッションとは。「下がったら買い、上がったら売る」ということですが、なかなかこれをやるのは、余程懐が深くないとできないものです。

いずれにしましても、このように公表された情報と推理だけでも、相場はかなりの程度読むことが出来ますので、情報収集とその読み方については、日頃から回数を重ねて慣れることが重要です、

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら