先週12月3日、この日発表されるECB理事会の政策決定には、マーケット全般に大きく期待が寄せていました。

というのも、前回10月22日の理事会後の記者会見でドラギECB総裁は、次回12月3日の理事会で追加緩和を示唆していたからです。

12月3日が近づくに連れ、さらの大胆な緩和も噂され、いやが上にも、マーケットのテンションは上がりました。

当日ともなると、米系大手投資銀行からは、今日中に1.03台(当時のマーケット水準は1.05台後半)まで下落するという予告まで、出る始末でした。

ECBの追加緩和策は期待外れの内容、マーケットは大パニック

ところが、いざふたを開けてみると、ECBの追加緩和策は期待外れの内容だったことから、過度にユーロ売りに傾いていたマーケットは、大パニックとなり、1.05台半ばから1.0981まで400ポイント強の急騰となりました。

この一件で相当な犠牲者が出たもようで、多く聞かれたのは、結果発表後、いったんは素直に損切りしたものの、なかなか気持ちの上でのユーロベア(ユーロに対して弱気)は払しょくできず、また売り直してしまったようです。

しかし、マーケットは買い戻したいと思うマーケット参加者の買いが引かず、さらに上げました。

いったんポジションを切って、しかし売り直してしまうと、不思議なもので、今度はなかなか切れなくなり、深手を負うことになってしまったもようです。

1時間足で見る相場の値動きを見ると、急騰相場にありがちなパターン

尚、1時間足で見るこの相場の値動きを見ると、急騰相場にありがちなパターンが見えてきます。

ユーロ/ドル 1時間足

まず、なぜ急騰が起きるのか、これは、先にお話ししましたように、マーケットがショートになっていたところに、それに対してアゲンスト(不利)なニュースが入ったことで、マーケットは、出来るだけ早くアゲンストポジションを手仕舞おうと買戻しに走ったわけです。

つまり、急騰とは、ショートを持っていたマーケット参加者が、我先にと、損失を最小限に止めようと買い戻しを急ぎました。

しかし、売りは往々にして引いてしまうため、買い手は売りを探して、さらに買い値を上げていくというパニック状態になるため、どんどん値が上がるということが起きます。

そして、とうとう、売り手がでてきたところで、上昇にブレーキがかかり、徐々に上昇スピードが下がり、最終的には、一段高となるファイナルラリー(最後の買い戻し)が入って、上げは一服します。

その後はどうなるか!?

そして、その後はどうなるかについては、意外に語られていませんので、お話ししておきますと、買戻しが一巡したということは、ショート筋もロスカット的な買戻しが一服し、また上で戻りを売ったロング筋も売り一巡となります。

つまり、マーケット全体的に、ほぼポジションはスクエア(ノ―ポジ)になるため、相場は高止まりしてしまいます。

この高止まり状態は、意外と長く続くものです。

たとえば、良く見受けられる、例としては、上昇過程でレベル感から売り上がったものの、上げが止まらず、やむなく買戻しをしたものの、損切らされた悔しさか、高原状態になったマーケットで、また売ってしまうとことです

これは、ほぼマーケットポジションがスクエアにも関わらず、そこを売るわけですので、マーケットがショートになるだけで、下げるとしても多少のことで、むしろ、ショートになった分、買戻し圧力が強まる、つまり高値圏の中で下がって上がってを繰り返すだけです。

要するに、急騰後の相場とは、結構長く横ばいを続けるのが、一般的です。

ですから、ここで、どうにか早く、損失を取り戻そうとしても、なかなか簡単ではありません。

むしろ、損失の上塗りをすることになりますので、高値圏で横ばいになったら、とりあえず静観です。

通常のマーケットに戻るにはかなり時間がかかることが一般的

実は、通常のマーケットに戻るにはかなり時間がかかることが一般的です。

確かに、場合によっては、Vの字カーブを描く場合もあります。

それは、急騰局面で高値で倍返しして買い過ぎてロングになるようなケース、それは稀なことだと見てください。

Vの字カーブ

それでは、どうすれば、普通のマーケットに戻るかですが、ひとつには、マーケットの大勢が納得する新しいテーマが現れるとか、新しいフロー(資金の流れ)が出来るといったことが必要になります。

以上のような急騰の原理、急騰後パターンを知っておかれますと、今回の"ユーロの悲劇"のようなことが起きても、損失をミニマイズでき、さらには、損失から収益チャンスに持って行けることも可能となりますので、どうぞ覚えておかれてください。

尚、この分析法を、「値動き分析」と言います。

執筆者プロフィール : 水上 紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀に於いて為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。