相場の局面局面で、相場が何で上げているのか下げているのかは、大体分かりますが、今でもたまに、突然相場が急上昇したりすると、理由が全くわからないときがあります。

その後、それなりに後づけ的な理由も耳には入ってきますが、本当のところは上にストップロスがあったからという、実に技術的な原因であることが多く、そんなに深い意味があったわけではありませんでした。

非論理的なFXの世界を生き抜くには

いろいろ論理的に考えていても、相場は論理どおりには行かないものです。特に、マネー(金利取引)の世界に比べてFX(為替取引)の世界はそういうところが多く、単なるロジック(論理)だけでは、うまくいかないものです。

そうした非論理的なFXの世界で生き抜いていくためには、マーケットセンチメント(市場心理)をどう読むかということが極めて重要だと考えています。

  • 相場は心理戦(画像はイメージ)

マーケットセンチメントとは、相場がどうなってほしいのか、あるいはどうなってほしくないのかというマーケットの大勢の期待と不安であり、これをどう把握するかということで、それは日々の値動きの中からも把握できるものだと思っています。

マーケットセンチメントを読むということは心理戦であり、大勢が期待する結果と失望する結果を読めることが必要で、それなりの経験の蓄積が必要とされます。

また、そのときのマーケットセンチメントによって、同じ指標でも反応は一様ではないことも理解しなくてはなりません。特にマーケットが失望すると、ロスカットが集中して相場は大いに動きます。この場面で涼しい顔をして利食えることが、トレーダーとしての醍醐味だと言えます。

マーケットセンチメントの読み方

では、マーケットセンチメントの読み方について、ご説明しましょう。

まず、マーケットがそのとき、なにに最も関心を寄せているかを知ることが重要です。 これはある程度、相場の概況を伝える日々のネットやFX会社などのマーケットレポートを継続して読んでいると、わかることです。

マーケットレポートから、いろいろな材料の中でもその時点の相場展開の理由として、例えばトランプ米大統領やニューヨーク株式市場など、一番頻度が多く記事に掲載される材料が、やはりマーケットの一番の関心事です。

日頃からのトレーニングとしては、相場概況を継続的に読むことに加え、さらに踏み込んで、一番頻度の高い記事からマーケットの大勢が今どう相場を考えているのかを推理する習慣をつけることだと思います。

また、注意しなければならないことは、ひとつの材料をテーマ(中心課題)にしてある程度の期間相場が展開すると、そのテーマにマーケットは飽きてしまいます。最初こそ、そのテーマに対する相場のリアクションが大きかったものの、段々とリアクションが限定的になります。なぜなら、テーマへの期待からできたポジションが積み上がってしまうからです。

そうなると、「その件は織り込み済み」などとして反応が鈍くなり、変わって目新しい違う材料に飛びつき、まだ今までの材料に固執している出遅れ組のロスカットも巻き込んで、相場は反転することになります。

このように、マーケットが飛びつく出物を物色し、早く相場に入り、旬が過ぎたと思えば、早く今までの材料に則して持っていたポジションを閉じ、できれば次の出物に乗り換えるということが必要になります。

そのためには、マーケットにとっての一番の関心事とそのテーマがまだ鮮度が良いかどうかを見極めることが、マーケットセンチメントを読む上でのコツです。

水上紀行(みずかみ のりゆき)

バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら