陸(おか)マイラーという言葉をご存知だろうか。最近では比較的ポピュラーな言葉となり、陸マイラーを扱った書籍・雑誌等も数多く出版されている。簡単に言うと、「ほとんど飛行機に乗らず、"陸"で買い物をしてマイルを貯めている人」を指すのだが、侮るなかれ。この世には、陸地にいながら1年間で12万マイルを貯め、世界一周旅行を無料でゲットした"ツワモノ陸マイラー"もいるのだ。

しかし、電子マネーは持っていたものの、ものぐさな性格な私「矢島みらい」は「すごい裏技を使わないとマイルは貯まらないんだろう」「買い物ごとに電子マネーカードを提示するのが面倒」という気持ちが先立ち、そのうち「どこかへ旅行に行く暇もないし……別にいいや」と投げ出してしまうのが常だった。そんな訳で、マイルを貯めることは「夢のまた夢」と考えていたのだが、そんなある日のこと。懇意にしていた会社の広報担当者から「無理せず、自然とマイルを貯めて、毎年国内旅行チケットをタダでゲットしている人がいるんですけど、取材してみませんか? 」という誘いを受け、東京・台東区にあるサンデン東京本社に向かうこととなった。

※本連載は事実に基づいていますが、一部フィクションが含まれております。

取材したのは、カーエアコン用のコンプレッサーや自動販売機などを製造・販売するサンデンに勤める町田広行さん(41)。「マイルを貯めるために、お金を使うのは本末転倒。ライフスタイルに合わせて無理なくマイルを獲得するのがモットーです」と力を込める。ただし、無理なくと言えどもそこは陸マイラー。毎年コンスタントに1万5,000マイルを貯め、国内往復航空券をタダでゲットしているという。そこで、早速そのコツを教えていただいた。

陸マイラーにも流派がある?

まず、陸マイラーには大きく分けて2つの" 流派"が存在するという。すなわち、ANAマイルを貯めるかJALマイルを貯めるかということだ。そう話す町田さんはANAマイル派の陸マイラー。「新幹線に乗った場合はSuicaの電子マネー機能を搭載したクレジットカードで支払うと、JALポイントが貯まります。ですから、私もSuica機能を搭載したクレジットカードも一応保有しています」とするが、それでもANAマイルを選ぶのにはそれなりの理由がある。それは、ビットワレットが運営する電子マネー「Edy(エディ)」だ。

通常マイルはクレジットカード会社のポイントをマイルに移行して付与される。しかし、Edyの場合、200円支払うごとに1マイルが加算されるため、クレジットカードとEdyを賢く利用すれば、通常クレジットカードだけで支払うよりもお得にマイルを貯めることができるのだ。

さらに、Edyは全国の約68,000店舗で利用できるため、大手のコンビニエンスストア(ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクス、am/pmなど)やドラッグストア(マツモトキヨシ)といった、近所でよく利用する店舗でマイルを貯められるのが強みだという。「僕のように、無理せずマイルを貯めるには、生活の中でマイルが貯められる環境が近くにあることが重要なのです」と町田さんは説明する。そこで本連載ではANAマイルを貯める方法について伺うことにした。

陸マイラーの"必需品"とは?

陸マイラーとしてANAマイルを貯めるにはまずは何を揃えたらいいのだろう……。そんな私の素朴な疑問に答えるかのように、町田さんはEdy機能付きのANAカード(クレジットカード)を取り出した。町田さんいわく、「ここで最も重要なのはクレジットカードを1枚に統一するということです。複数のカードに分散されたポイントをマイルに合算すると効率が悪いですから」。クレジットカードに貯まったポイントをマイルに移行するにも手数料がかかる。分散されたポイントごとに手数料が引かれるのだからたまったものではない。

そうなると、クレジットカードをどれにするかで、今後のマイルの貯まり方が変わってくると言えよう。下記に主なANAカードを挙げてみたい。

カードの画像 カード名 マイル換算最少移行単位 マイルの移行手数料
ANA三井住友VISAカード 支払い1,000円につき1ポイント(=10マイル) 年間2,000円
ANA JCBカード 支払い1,000円につき1ポイント(=10マイル) 年間2,000円
マスターカード 支払い1,000円につき1ポイント(=10マイル) 年間2,000円
ANA ダイナースカード 支払い10,000円につき10ポイント(=100マイル) 無料

なお、町田さんは以前から、三井住友VISAカードと決めていたという。「ANAカードを手に入れたら、モバイルEdyのアプリケーションを起動させ、クレジットカード番号を登録すれば移行は完了です。登録はすぐに済みますが、実際におサイフケータイを利用できるようになるのは2日程度後になります」。

これで、必要なものは一通り揃ったようだ。すると、町田さんはポケットからブルーの携帯電話を取り出した。「ふふふ……。クレジットカードだけでは、年間1万5,000マイルは貯まりませんよ。"これ"が必要なのです」。

つづく

イラスト : でこくーる