(3)鎮咳・気管支拡張剤: 中枢神経に働いて咳を抑えたり気管支を拡張して咳を出にくくしたりする成分

リン酸コデイン、ジヒドロコデイン、デキストロメトルファン、ノスカピン、エフェドリン、メチルエフェドリンなど。

リン酸コデイン、ジヒドロコデインはもともと麻薬(モルヒネ系)鎮咳薬・鎮痛薬なので比較的効き目(鎮咳)が強力です。これらを含む薬剤は便秘になりやすいので、普段から便秘の方はこの成分の入った風邪薬には要注意。なおコデイン類が入った医薬品は原則、12歳未満への使用が禁じられています。

エフェドリンやメチルエフェドリンは気管支拡張薬で、心臓機能障害・不整脈治療中の方や重症の喘息患者さんでは、主に交感神経興奮作用のため症状がひどくなり、胸が苦しくなるケースがあります。葛根湯や麻黄湯などの漢方薬原料植物(マオウ)からはエフェドリンを抽出できます。つまりこれらの漢方薬にも交感神経興奮作用があるので、眠気を催すことはあまりありません。

余談ですが、エフェドリンとメチルエフェドリンは、いずれも世界アンチ・ドーピング規程の禁止表に掲載された禁止薬物です。アスリートは風邪薬に注意しましょう。

(4)去痰剤:痰を出にくくしたり痰を切れやすくしたりする成分

グアイフェネシン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、アンブロキソールなど。

咳というのは「痰を除去する」「バイ菌を体外に追い出す」ために必要な生理反応であり、基本的には無理に止めない方がいいものなのです。ただやたらと痰が出る際に適切に「痰を切る」と楽にはなりますね。

(5)その他: 他の成分を補佐(手助け)したり副作用を抑えたりする目的で添加する成分

ビタミン剤、カフェイン、ヨウ化イソプロパミド(抗コリン薬)、ブロムワレリル尿素(鎮痛補助薬)など。

結局どれを使えばいいのか

かぜ薬は結局、対症療法なので自分の症状に合った薬を選びましょう。不快な症状が何なのか(咳は乾性か湿性か? 特に鼻水・鼻づまりがひどいのか? 頭痛・熱が強いのか? のどが痛いのか?)、できるだけ的を絞って製品を選びましょう。

一般的な風邪の症状が複数出ている場合、総合感冒薬ならどれを飲んでも大して効き目に変わりはありません。ただ、やたらと成分が多いものは避けたほうがよいでしょう。副作用も増えるからです。なお、総合感冒薬を飲んでも高熱・筋肉痛・頭痛などが改善しない場合は、アスピリンなどの鎮痛・解熱薬を併用してもかまいません。

また、購入時は薬局(薬店)の薬剤師さんに自分の症状をくわしく説明し、適切なアドバイスを得てから薬を買うようにしましょう。積極的に質問もしたほうがいいですね。安い製品でもかまいません。薬の効き目は、価格と比例するとは限らないからです。

最後にあらためてになりますが、風邪薬は事情があって症状を一時的に抑えたいときに使うもので、「風邪を根本的に治す」ものではありません。風邪を早く治すには、消化がよくて栄養価の高いものを食べて早めに寝てしまいましょう。それが一番の「薬」です。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: フリードリヒ2世

薬剤師。京都薬科大学薬学部生物薬学科卒。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。洋画と海外ミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。