日本は世界でも最も薬の値段が高い国の一つです。その理由として、厚生労働省が管轄する中央社会保険医療協議会(中医協)が医療用医薬品の価格を決定していることが指摘されています。

中医協は厚労省の役人や医師、公益委員など合計20~30名ほどで構成されていて、薬価以外にも医療に関するさまざまなミッションを持っています。各国にも薬の価格をある程度コントロールする組織はあるようですが、中医協のような組織は先進国の中では日本にしかないようです。

アメリカでもイギリスでも、医療用医薬品も含めた薬の値段は基本的に製薬会社が決めています。その値段で買うか買わないかは、保険会社やNHS(国民保険サービス)に入っている保険者次第で、値引き交渉もおこなわれます。

ところが日本は中医協という一つの組織が決定権を独占し、医療現場の最前線にはいない中央官庁の職員が薬価を決めているのはおかしいという人もいます。また、別の人は中医協が「医療業界の利益確保」を第一に考えているところが問題だと言います。筆者には何とも言えませんが……。

いずれにせよ、注意したいのは「薬の効果は薬の値段には比例も反比例もしない」ということです。価格はメーカーの経営戦略の一環であることもあります。価格で薬を選ぶのではなく、あくまで自分の体に合った薬を選びましょう。

「日本の薬価決定システムはまったくブラックボックスだ」と言う人もいますが、医療保険組合や厚生労働省などが「民意」を正しく汲み取って、薬の価格についてより深い議論がなされることが望まれますね。

※写真と本文は関係ありません

筆者プロフィール: フリードリヒ2世

薬剤師。京都薬科大学薬学部生物薬学科卒。徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程単位取得退学。洋画と海外ミステリーを愛す。Facebookアカウントは「Genshint」。主な著書・訳書に『共著 実務文書で学ぶ薬学英語 (医学英語シリーズ)』(アルク)、『監訳 21世紀の薬剤師―エビデンスに基づく薬学(EBP)入門 Phil Wiffen著』(じほう)がある。