次に小児喘息と成人後に発症する、いわゆる「大人喘息」についてお話ししていきます。

小児喘息は、6歳までに80%以上が発症すると言われています。小児喘息の約30%はその後、思春期になると症状が軽快しつつも、完全には消失せずに大人喘息へと移っていきます。そして、症状が消失した50~70%の小児喘息のうち、約30%が大人になって再発すると言われています。

その一方で、大人で喘息持ちの方の70~80%は、小児喘息を経験することなく、成人後に初めて症状が出る成人発症喘息(大人喘息)です。特に40~60歳代での発症が多く、60%以上を占めると言われています。

大人喘息と小児喘息の違いとは

大人喘息と小児喘息の大きな違いは、発症の原因にあります。小児喘息では、環境アレルギーに対する特異的IgE抗体が存在するアトピー型が約90%と大半を占めますが、大人喘息ではアトピー型と非アトピー型の割合は半々程度となります。大人喘息では、非アトピー型喘息の割合が多いため、原因となるアレルゲンがはっきりせず、発症の原因が不明であることが少なくないです。

また、小児喘息の50~70%は後に症状が消失しますが、大人喘息の場合は引き続き治療が必要なケースが多くみられます。さらに小児喘息に比べて慢性化、重症化しやすい特徴もあります。小児に比べて罹病期間が長いため、適切に治療が行われていないと、気道の炎症とそれに引き続く気道傷害のため気道構造の変化(リモデリング)が起こりやすく、非可逆的な気道の狭窄の原因となります。

そのうえ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患や心不全などの心疾患を合併することで、重症化しやすくなります。大人喘息は、慢性化や重症化を防ぐために、しっかり自己管理と治療を継続していくことが重要です。