今年はいくらぐらい貯金ができましたか? 住宅ローンは残りどれくらいになりましたか?

「貯金はできたしローンも減ったはずだけど、具体的にどれくらいと言われると…」とはっきり答えられない人も多いのではないでしょうか。このようなことに意識が及ばないと、家計の健全度がわからなくなります。

企業の財政も個人の家計も理屈は同じ

みなさんは「バランスシート」という言葉を聞いたことがありますか? バランスシートとは「貸借対照表」のことで、「資産」「負債」「資本」の面から、ある時点での企業の財政状態を示す表です。

でも、実はバランスシートが示す財政状態は企業だけでなく、個人の家計にも当てはまるのです。家計の場合は「資産」「負債」、そして「資本」の代わりに「純資産」を要素として作成します。まずはバランスシートを作成してみましょう。

バランスシート作成の手順

(1) 左側に資産、右上に負債、右下に純資産と書き込む。

  • バランスシートのテンプレートを作る

(2) 資産、負債を列挙する。

■資産
 ・金融資産(預貯金、株式、国債、投資信託など)
 ・動産(リゾート会員権、貴金属、絵画、骨とう品など)
 ・不動産(自宅、別荘、投資用マンションなど)
 ・生命保険の解約返戻金
 ・その他(車など)

■負債
 ・住宅ローン、自動車ローン、教育ローン
 ・その他借入金

それぞれの金額は、以下のように評価すると良いでしょう。

 ・価格変動のあるものは時価
 ・財形は報告書ベース(+報告書以降の積立額を加算した額)
 ・保険(解約返戻金のあるもの)は解約返戻金
 ・不動産は近隣の相場
 ・自動車は査定額
 ・貴金属、絵画、骨とう品は買い取り業者による査定額
 ・負債は残債元本額(返済予定表を参考に)

(3) 資産合計から負債合計額を差し引いた額を純資産合計欄に記載する。

  • 差し引き額を純資産合計欄に記載

これでバランスシートは出来上がりです。作成手順自体に難しいことはないと思いますが、これらの金額を集めるのに少し手間がかかったかもしれませんね。でも、通帳記帳する、証券会社の取引報告書を確認する、住宅ローンの返済予定表を確認するなどで、今みなさんが持っている資産や負債を把握できたのではないでしょうか。

最初に作成するときは大変かもしれませんが、一度作成してしまえば次からは金額をアップデートしていけば良いので、次回からはそれほど苦にならないはずです。

バランスシートの見方のポイント

作成したバランスシートはどこを見れば良いのでしょう? ポイントは3つです。

<ポイント1>純資産(資産-負債)がプラスであるか
純資産は、プラスの資産からマイナスの資産を差し引いた正味の資産です。つまりそれがマイナスだとすると、手元の資産をすべて充当しても借入金を返済できない=債務超過の家計となります。健全な家計の前提として、純資産がプラスであることを維持しましょう。

<ポイント2>資産の持ち方をチェック
金額だけでなく、保有資産のタイプ(金融資産/動産/不動産など)も確認しましょう。例えば、資産のうち不動産(自宅など)の占める割合が大きい場合、償却資産なので住宅ローンの返済額以上に資産価値が減少する可能性があります。特にマンションなど土地の持ち分が少ない場合はより顕著です。資産を不動産だけに頼るのではなく、キャッシュを増やしておくことも重要です。

また、金融資産があっても、財形や債券、保険など換金性の低い資産の占める割合が大きいと、いざ必要というときにキャッシュを準備できない可能性が高くなりますし、株式や投資信託、外貨など、価格変動する資産が多い場合は、大幅に資産を減らす可能性もあります。資産の持ち方によって家計のリスク度も違ってきますので、保有資産のバランスにも気を配りましょう。

<ポイント3>毎年チェックを継続すること
資産は償却や価格変動などで評価額が変わります。したがって毎年継続し、貯金が増えていない、評価額が大きく変動した、資産のバランスが悪くなってきたなど、変化に気づき、必要な対策をとることが重要です。

年末年始は家計の総点検をする良い機会です。難しいことではないので、是非実践してみてください。

鈴木暁子

鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。