家族の皿や冷蔵庫のストック食材、飲み会の大皿料理……他人の分まで平然と食べ尽くしてしまう“食い尽くし系”。

あるものは何でも食べてしまう食い尽くし系は、身近にいるととても困る存在です。あらかじめ食べないよう伝えておいても、何度も繰り返し注意しても、一向に改善が見られないケースも多いもの。

同じことが繰り返されると、食い尽くされる側は疲弊や諦めを抱かされてしまい、関係性そのものにも悪影響を及ぼします。

このような、なかなか変容に至らない食い尽くし行動は、自己中心性や他者の視点に立つことに関する不得手さがベースにあると考えられます。こうした食い尽くし系の意識は見直すことができるのでしょうか。

実際の「食い尽くし系」体験をもとにした人気マンガ連載『身近な“食い尽くし系”生態記』(みつほし・画)をもとに、臨床心理士の視点から、このタイプの行動原理を読み解いていきます。

■なぜ「悪いと思っていない」のか? 食い尽くし系の認識

食い尽くし行動が続いてしまうのは、本人が問題を自覚していないからだと考えられます。何度も「やめて」と言っているのになぜ問題だと自覚できないのか、される側には理解に苦しむところですが、食い尽くす側は相手から言われることを軽く受け止め、言うほど困っていないと捉えます。

自分の行動が周囲を困らせている問題だと分かれば、その行動を改めなくてはなりませんが、どんなことでも長らく習慣になっている行動を変えるのはエネルギーを要することですし、食い尽くし行動を咎められたことがない人にとっては、これまでの自分が間違っていたと言われているようで、苦痛を伴うこともあります。

そのような葛藤を感じざるを得ない場面では、自分の意識や行動の変容よりもコストのかからない方、つまり、相手の気持ちの矮小化や自己正当化を無意識的に選択しやすいため、結果的に食い尽くし行動が続くことになりがちなのです。

■「食い尽くし系」の被害エピソード

  • イラスト/みつほし『身近な“食い尽くし系”生態記』より

    イラスト/みつほし『身近な“食い尽くし系”生態記』より

会社のフロアに置かれた“お菓子の共有ボックス”。みんなで持ち寄るのがローカルルールですが、最近お菓子の減りが目に見えて早くなり……ある日、その原因が判明しました。(※『身近な食い尽くし系生態記26話より』)

✅お菓子ボックスの食い尽くし犯、いた!! →→続きは漫画で読む

■伝え方を変える・ルールをつくる――行動変容への具体策

指摘されても食い尽くし行動が問題だという自覚が持てない人は、他者視点に立ち自らの言動を省みて変容するという経験をしてこなかったのかもしれません。「あなたと私は違う人間であり、あなたが困っていなくても、私が困っているのだ」という当たり前のようなことを明確に言葉にして伝えるのも大事なことと思います。

また、言い方や環境などを変えて、今までとは違う伝え方をするのも、気づきや自覚を促す効果が期待できます。食い尽くし行動による困り事の具体例とともに、このままでは関係性にヒビが入るくらい心身にダメージを受けていることを話すと、被害者側のつらさの認識につながるかもしれません。

それだけだと責められていると捉えられるおそれもあるため、あくまでも食い尽くし行動をやめてほしいと言っているだけであり、その行動をする人自体を否定しているわけではないこと、そして、今後も良い関係を築いていくために話しているのであり、家庭内でのルールを作るなど可能な対処を一緒に考えていきたいことも合わせて伝えると良いでしょう。

■まとめ

人と食べ物を共有する場面で相手を困らせる行動を選んでしまう背景には、自らの行動を変えるより周囲を我慢させていた方が楽であるため、相手の訴えや気持ちに反して、大した問題ではないと変換してしまう思考パターンが挙げられます。これまでの人生で、そうしてきても困らなかったため、それが思考や行動の癖と化しているのだと考えられます。

つまり食い尽くしは、本人の思考習慣や人間関係のあり方とも深く関わる行動と言えます。その人にとって当たり前だった思考や行動を見直すのは容易ではないですが、関係性の維持や改善のためには食い尽くし行動の変容が不可欠であることを伝え、そのためのルール作りなどをすることで、変化も期待できるでしょう。

\他人の食べ物まで食べ尽くす…/「 食い尽くし系」の実態とは!? ✅『身近な「食い尽くし系」生態記』全話を一気読み