「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 自分で考え、行動できる子に育てる“ことば”

    「自分で考え、行動できる子」に育てるには

「自分で考えて行動できる子になってほしいのですが、どうしたらいいでしょうか」アンケートで2番目に多い悩みです。今回は、そのために親ができることを考えます。

「親の言うことを聞ける子にしたい」と願うお父さんお母さんが多いのですが、その先にある親の本当の願いは、「親が言わなくても、自分で考えて自分で行動できる子に育ってほしい」です。そしてそれは、子どもが自律していく、とっても大切なことです。

「私が言う前に、宿題をしてほしい」「言われなくても、片付けをしてほしい」というご相談、本当にその通りですよね。

小さい頃は「親の言うことを聞きなさい」と叱っていたのに、大きくなると「親が言う前に、自分で考えて行動してほしいのに……」とイライラしてしまいます。

社会人であれば、何度も教えたんだから言われなくてもできるようになってほしい、と思うところですが、成長期の子どもにはこれは通用しないのです。

「教える」前に、「頑張りに気づく」親になる

自分で考えて行動できる子にするためには、小さい頃から親が言い聞かせてやらせるのではなく、子ども自身のやりたい気持ち、考える力を育てることが先です。前回取り上げたように、私はそれを「器(自己肯定感)を育てること」と表現しています。

実は子どもは、生まれた時から好奇心いっぱいで、やりたい気持ちに溢れています。いろいろな物を見て、触って、考えて、自分で仮説を立てて、試してみて、確認して、目を輝かせていますよね。

それをお父さんお母さんが気づき、一緒に認めて喜んでくれる環境にあると、子どもの器はどんどん大きくなります。

逆に、いつも途中でやめさせられたり、叱られたりすると、次第に自分で考えることをやめて、親の言うことを聞いていればいいんだ、と自分の考えを育むことに集中できなくなってしまいます。

子どもが興味を持ったことと、親が望むことが一致している場合は何の問題もないのですが、そうではない時にどうするのかが分かれ道であり、親の力が試されます。

例えば、せっかく作った夕食(離乳食)を、子どもが食べずに遊び始めたり、スプーンを投げたり、歩き回ったり、スマホをしながら食べたりしていたらあなたなら、なんて声をかけますか。

「スプーンなげないで!「歩き回って食べるのはお行儀が悪い。やめなさい」「今は食べる時間、遊ばないで」どの言葉も正論です。

でも、お子さんの心の中はどうでしょうか。

スプーンを投げた子が、この世に出てきて、初めて物をうまく投げられた日だったとしたら……親指と人差し指を上手に使ってスプーンを持ち、腕を振りかぶって、タイミングよく指を離したら、飛んで行った。すごい成長です。

そう思うと、初めて歩いた日を記念日として大喜びしたように、初めて物を投げられた日も記念日としてお祝いしたいですね。

歩き回るのも、お子さんは歩くことの面白さに夢中なのです。これまで2Dの平面な世界から、3Dの立体の世界に立ち、自分が動くと棚が大きくなったり、離れると小さくなったりと、距離感を実体験しているのです。物理の学びのはじめかもしれませんね。そんな面白いことに出会って夢中になって実験しているのに、叱られてしまう、やめさせられてしまう。それが高校生になって物理の授業を嫌いになってしまうことに繋がったら……とてももったいないと思います。

スマホもゲームも同じです。園や学校で、今日もいろんなことがあったはずです。その中で、自分の気持ちや考えをスマホなどを使って整理している時間なのかもしれません。

つまり、親がすべきことは、言うことを聞かせることではなく、お子さんが今やりたいことや夢中になっている気持ちに気づき、まずは認めることです。これが器を育てることです。

「自分で考える子」にするためには、話しかける順番が大切

器を育てる大切さは分かったけど、しつけは、どうしたらいいの? と心配になったお父さんお母さん、その通りです。間違えてはいけないのは、苦々しい顔をしながら、やりっぱなしにさせることではありません。

かける言葉の順番が大切です。

1.まずは、認める言葉をかけること。
「わあ、初めて物を投げられたね!すごいね」「歩くの楽しいね」「そんな難しいゲーム、すごい集中力だね」「スマホ、もう使いこなせるようになったのね」「最後までやり遂げる力はすごいね」などなど。

2.次に、親がお手本を見せること。
例えば、スプーンを投げない、スマホを触りながら食事をしない。もっというと、親が美味しそうに楽しそうにご飯を食べる姿を見せて、子どもが食卓の幸せを体感できるといいですね。

3.そのあとで、社会のルールやモラルを教えること。
「投げられるのはすごいけど、スプーンは投げる物ではないから、ボールを投げようね」とボールを渡す。「歩きながら食べるのはお行儀が悪いから、もう食事はおしまいにして、追いかけっこで遊ぼう」と食事を片付ける。「スマホも面白いけど、ご飯もおいしいよ。あったかいうちにご飯を食べてから、スマホをするのはどう?」と食卓の楽しさを伝える。

1→2→3この順番が大切です。 ほとんどのお父さんお母さんは、1・2を言わずに3の正論から話してしまうので、子どもは「わかってくれない、いつも僕のやりたいことは叱られる」と否定された気持ちになってしまいます。そうすると器が育まれず、もったいないですね。

間違えやすいのは、しばらく我慢してやらせたけども、やめないため、堪忍袋の尾が切れて「やめなさい!」と怒鳴ってしまうこと。“黙認”は、認めることにはならないので、気をつけましょう。

認める言葉を声に出して全力で伝えることで、子どもの器を大きくして、自分で考えて行動できる子に育てていきたいですね。

執筆者プロフィール :天野 ひかり

・親子コミュニケーションアドバイザー
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師などを実施。
自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰する。

■公式HP: h I k a r i a m a n o
■著書
・Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
・最新刊
「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。