仕事終わりの外での一杯は、いつの時代になってもビジネスパーソンの心と体を癒やしてくれる。その一杯を活力に「明日もまた頑張ろう」と思っている人も少なくないはずだ。そんなサラリーマンたちに旨い酒と肴を提供してくれる名店を本連載では紹介していく。

今回紹介するのは、東京メトロ銀座線田原町駅近くにある「立呑み 浅草 洒落者」だ(※緊急事態宣言が発令される4月2日に取材)。

立呑み 浅草 洒落者(浅草)

  • 東京メトロ銀座線田原町駅近くにある「立呑み 浅草 洒落者」

    東京メトロ銀座線田原町駅近くにある「立呑み 浅草 洒落者」

同店は、常時20種類以上の日本酒を用意する立ち飲みスタイルの居酒屋として、2016年12月にオープンした。

「もともと蔵前で20年以上ダイニングバーをやっていたのですが、次の展開を考えていたときに、大阪で立ち飲みのお店に出会ったことが、このお店をオープンするきっかけでした」

そう語るのは、「立呑み 浅草 洒落者」のオーナー・寺田肇氏。

「大阪で立ち飲みという文化を知り、この値段と内容で小1時間飲み食いできるお店って素敵だなと。立って飲むって別にしんどくないし、おつまみもおいしくて。それからは東京中の立ち飲み屋さんを見て回るようになりましたね」

  • 店内は温かい照明で照らされた、落ち着いた雰囲気に包まれている

    店内は温かい照明で照らされ、落ち着いた雰囲気に包まれている

リーズナブルな価格や、お客さん同士の距離感の近さといった、立ち飲み屋ならではの魅力を持つ同店だが、メインの客層は30代~40代と比較的若く、20代も多く来店しているという。

下町の立ち飲み屋、それも日本酒メインとなると、若い人のなかにはかえって敷居が高く感じる人も少なくなさそうだが。

  • 手書きメニューにはその日のメニューが書かれている

    手書きメニューにはその日のメニューが書かれている

「値段は立ち飲み屋さんと近い価格帯ですが、よくある雑多な立ち飲み屋にはしないよう、女性でも気軽に立ち寄りやすい雰囲気づくりにこだわってきました。ここ数年は立ち飲みもとても流行っていますが、オープン当時は立ち飲みのお店は浅草にあまりなく、慣れていない人もたくさんいて。特にうちは禁煙なので、そういう意味でも少し倦厭される理由もいくつかありました。ですが、若い人たちの間でも日本酒は人気ですし、そうした点も逆に魅力的なコンセプトとして、口コミなどから受け入れられていった感じがします」と語る寺田氏。

  • 「鱈とアサリの和風アクアパッツァ」

    「鱈とアサリの和風アクアパッツァ」

最近では、仕事帰りなどに1人でふらりと一杯ひっかけに来るような女性客も少なくないという。

最高の肴と日本酒を、立ち飲み価格で堪能

和食の世界で厳しい修行をしてきた経歴を持つ、料理長の諏訪内剛氏による料理の数々も、同店が人気の理由のひとつ。

カウンターからオープンキッチンを見ながら肴を待つ時間も、楽しいひとときだ。

「季節の食材を取り入れて、ちょっと変わり種の調味料を使うなどひと手間加えて、日本酒が進むように仕上げています。コスパを重視して、少しずついろんなものを味わってもらえるようなかたちで提供しています。平均予算は2,000円ほど。値段を気にせず飲み食いされる方でも、5,000円くらいですね」(諏訪内氏)

  • ゴロリと具材が入った「ホタルイカと菜の花のペペロンポテサラ」

    ゴロリと具材が入った「ホタルイカと菜の花のペペロンポテサラ」

料理1品の価格帯は400円~500円が中心。2時間の飲み放題付きのおまかせ5品(4,400円)と、7品(5,500円)からなるコースも人気で、店舗奥にある個室スペースには、最大8人ほどで利用できるテーブル席を用意している。

また、寺田氏がセレクトする日本酒は、季節感を重視したラインナップで、定番を置かずに希少なお酒が数多く取り揃えられている。

  • 「農口尚彦研究所」

    「農口尚彦研究所」

  • 「栄光冨士 森のくまさん」

    「栄光冨士 森のくまさん」

「基本は2軒目、3軒目といった使い方が多く、なかには0次会のようなかたちで予定の前に軽く一杯、と立ち寄るお客様もいらっしゃいます。1次会として、メインの時間帯にテーブル席を予約してくれる方も増えましたね。お客さんとの距離感も近いお店ですし、常時振り幅広くいろいろなお酒を用意しているので、『甘い』『辛い』のように、単純な表現でいいので気軽に好みを伝えてくれればと思います」(寺田氏)

取材では裏十四代とも呼ばれ、キレのある飲み口とみずみずしいフレッシュな旨味が特徴の「花邑」や、まろやかなブリの脂とさっぱりとした柚みそがマッチした「ぶりの柚みそなめろう」などを堪能した。

  • 「花邑」

    「花邑」

  • 「ぶりの柚みそなめろう」

    「ぶりの柚みそなめろう」

魅力的な飲食店がひしめく一方で、予算や時間帯などによっては、飲み屋探しで意外と苦戦することもある浅草。同店は、0時まで営業しているのも嬉しいポイントだ。上質なお酒と料理をリーズナブルな価格で楽しめる憩いの場として活用してほしい。