仕事終わりの外での一杯は、いつの時代になってもビジネスパーソンの心と体を癒してくれる。その一杯を活力に「明日もまた頑張ろう」と思っている人も少なくないはずだ。そんなサラリーマンたちに旨い酒と肴を提供してくれる名店を本連載では紹介していく。

今回紹介するのは、世にも珍しい日本酒のカクテルが味わえる「サキ ホール ヒビヤ バー(SAKE HALL HIBIYA BAR)」だ。

  • 日本酒カクテルの気になる味わいとは……?

都内各所にバーを展開する日比谷バーが運営する同店は、カジュアルに日本酒を楽しめる日本酒カクテル専門店として2011年にオープンした。

「『日本酒を飲む方が減ってきている』というお話があり、カクテルで『まったく新しい日本酒の楽しみ方』をご提案する、日本酒の新しい飲み手を創る新業態開発をしました」と、オープンの経緯を振り返るのはマネージャーの見澤直哉氏。店内には浦霞(宮城)、大山(山形)、吉乃川(新潟)など7つの蔵元がそれぞれの蔵元のお酒を提供する蔵元店のようなしつらえになっている。

「個室利用の場合、それぞれの部屋でその蔵元のお酒を出すというかたちです。各蔵元さんの特徴が最もよく出た日本酒をカクテルに使い、その個性を活かすことを大切にしています。カクテルを『入り口』にすることで、気に入ってもらえればそのままストレートでもおすすめしやすく、実際に1~2杯カクテルで飲んだ後、1~2杯をストレートで、といった飲み方で楽しまれるお客様が多いです」

カクテルやワイングラスで日本酒を提供するバースタイルで、客層も20代後半~40代前半と比較的若く、個室は貸し切りも可能。1軒目での食事利用も多く、友人同士での飲み会のほか女子会や合コン、会社の歓送迎会など利用シーンも幅広いようだ。

「フローズンカクテルやエスプーマというムースのような泡状にした日本酒をのせたカクテルなど、どなたでも楽しみやすいスタイルで提供しています。お酒やお料理はおすすめさせていただきますので、日本酒に全く詳しくない方も大歓迎です」

  • カジュアルに日本酒を楽しめる日本酒カクテル専門店「サキ ホール ヒビヤ バー(SAKE HALL HIBIYA BAR)」

カクテルで日本酒をカジュアルに楽しむ

日本酒に興味を持ってもらうための入り口として、多彩な日本酒カクテルを用意している同店だが、一番人気はカクテル専用の蔵元酒「MOTOZAKE」を天然水トニックと天然水ソーダで割り、オレンジピールを加えた「SAKENIC」だ。カクテルの味を大きく左右するという水や氷に天然水を使うこだわりぶりで、アルコール6~7%ほどのすっきりとした口当たりの乾杯酒となっており、グイグイ飲み干せる。ちなみにオープン当初のメニューには生ビールもあったが、注文する人がいないため現在は用意がないそうなので、悪しからず。

  • 一番人気の「SAKENIC」

同様に「旬の果実のFresh Mist Style」も定番人気の一杯だ。季節性や地域色を楽しめるという日本酒ならではの特徴も活かし、この日は旬のキンカンと高知の蔵元のお酒で合わせたシンプルなカクテルをいただいた。ほぼストレートで日本酒を飲むのとアルコール度数は変わらないはずだが、柑橘系の風味が爽やかに香り、ほとんど悪魔的な飲みやすさである。

「一般的なカクテルで使うジンやウォッカは40度くらい、日本酒は15度くらいとアルコールの度数帯が全く違うので、日本酒カクテルでは水っぽくならないよう、基本的に1:1で割って6~7度ほどにしています。考え方によっては、そのままでも日本酒はカクテルに使いやすく、春は桜の花の塩漬けを入れて桜餅のような風味をつけたり、桜パウダーをグラスの淵につけるスノースタイルにしたり、割らなくてもおいしいカクテルになるんです」

  • この日の「旬の果実のFresh Mist Style」は、高知の蔵元のお酒「司牡丹」とキンカンを合わせた一杯だった

また、料理では塩麹香醸焼きなど日本酒の製造工程で出る麹や酒粕を使用した「香醸惣菜」という創作料理を中心に豊富なメニューを取り揃えている。

「日本酒というと料理ありきで料理に日本酒を合わせるイメージも強いんですが、僕らは日本酒に合わせるようなかたちなので、料理は単においしいだけでなく、少し濃いめに味付けしたり、コショウなどのスパイスを利かせたりして、お酒が進むようにしています」

  • 料理もお酒が進むような趣向をこらしている

蔵元仕込みの塩麹を合わせて焼き上げた名物『塩麹香醸焼き』とカクテルのマリアージュを存分に堪能したが、今では4合瓶(ワインと同じ瓶)換算でオープン当初の約2倍、年間約1万本の日本酒がこちらのお店で飲まれているという。新たなファンを発掘する日本酒の新しい楽しみ方として、日本酒カクテルに熱視線が注がれているのも納得だ。

「オープン当時、日本酒カクテルは邪道扱いでしたが、さまざまな飲食店さんや当店の蔵元さんとは別の蔵元さんの蔵開きでも振る舞うケースも増え、徐々に広がってきているかなと思います。日本酒ブームと言われて久しいですが、まだまだ一般の人に街中で飲まれていない現状もあるので、日本酒の魅力や新しい楽しみ方を知ってもらえるような活動を続けていきたいです」

19時台には満席になることも珍しくないそうなので、利用の際は電話などでの予約がおすすめ。4月上旬には周年イベントも開催予定とのことなので、公式サイトなどから詳細をチェックしてみてほしい。