健康保険には、主に中小企業の従業員とその家族が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と、主に大企業の従業員とその家族が加入する「組合管掌健康保険(組合健保)」があります。所有している健康保険証に「●●健康保険組合」と書かれていれば、組合健保です。

協会けんぽが法律で決められた給付を行うのに対し、組合健保は各健康保険組合が独自で給付内容を決めています。法律どおりに給付する場合もあれば、それ以上に給付する会社もあります。

傷病手当金に関しても、例えば会社(健康保険組合)によっては支給額を上乗せしたり、本来の支給期間である1年6カ月を過ぎても療養が必要な場合、支給期間を延長して支払ったりすることがあります。

そもそも傷病手当金は、自営業者などが加入する国民健康保険にはない制度で、会社員のための法定福利制度です。しかし、勤める会社や業種によっては、法定福利以上に任意で手当される法定外福利の側面も持つ制度であることが、こういった事例からおわかりいただけるでしょうか。

手当を受けるには自ら申請を

法定福利の一つとはいえ、傷病手当金の支給を受けるには、従業員自身が申請手続きをしなければなりません。東京都福祉保健局が2014年5月に発表した「『がん患者の就労等に関する実態調査』報告書」によると、「傷病手当金制度を知らなかったので利用しなかった」という人の割合が39.5%もいます。

支給条件に該当するからといっても、会社で自動的に処理はしてくれませんし、そもそも知らなければ、休業中の無給期間は貯金などで生活費を工面しなければなりません。知っていれば、貯金を大きく崩す必要も、民間保険などに余分な保険料を支払う必要もないかもしれません。

傷病手当金の申請には、医師の診断書および事業主の証明などを用意しなければなりません。まずは就業の可否を医師に相談してみましょう。そこで「就業不可」との所見を得たなら、会社に報告し、証明書類を作成してもらいます。その他の必要書類を揃えて協会けんぽへ申請します。

組合健保に加入している人は、会社の手続き基準に従って申請しましょう。この場合も、まずは従業員自身が申請の問い合わせをすることから始まります。総務や人事などの担当者に相談してみましょう。

※写真と本文は関係ありません

参照: 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき」および東京都福祉保健局「『がん患者の就労等に関する実態調査』報告書」

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。