iDeCoと違って会社が拠出金を出してくれる企業型確定拠出金制度。従業員にとっては大きなメリットですが、もしもその会社を60歳前に退職したらどうなるのでしょうか。結論から言うと、60歳になるまで原則そのお金は受け取れません。

確定拠出年金制度には、「ポータビリティ」という仕組みがあります。これは「資金を持ち運ぶ(移管)」という意味があり、退職時にはそれまで運用した資金を他の確定拠出年金へ移管することを示します。移管先は、退職後のスタイルなどによって異なります。

  • 転職時の企業型確定拠出年金の移管先

移管手続きは自分自身で行います。転職先の確定拠出年金に加入する場合は、転職先の総務や人事の担当者へ申し出します。iDeCoに加入する場合は、自分で金融機関へ連絡しましょう。

確定拠出年金の注意点

確定拠出年金の注意点として覚えておいていただきたいのは、運用次第で60歳以降に受け取る金額が変わるという点です。確定拠出年金で運用したお金が従業員自身の老後の生活資金のもとになりますから、運用の際はリターンとリスクの割合、そして運用コストなどに注意が必要です。

加入する金融機関は会社が決め、従業員のリスク許容度などを考えながら、金融機関と相談し数種類の運用商品を用意しています。とはいえ従業員それぞれでリスク許容度は異なりますから、自分自身の許容度に合った商品を選ぶようにしましょう。会社によっては、ファイナンシャルプランナーなどによるセミナーを開催する場合があります。よくわからない場合は、まずは担当者に相談してみましょう。

また、60歳までに退職したときの移管手続きは、退職日の翌日の属する月から6カ月以内と決められています。この期限を過ぎてしまうと、自動的にそれまでの資産が現金化されて国民年金基金連合会へ移されてしまいます。その後の運用はできないうえ、管理手数料が徴収されてしまいます。退職時には速やかに移管手続きをすることが大切です。

参照: 厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」

※写真と本文は関係ありません

■ 筆者プロフィール: 續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター。ファイナンシャルプランナー(CFP)
生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。