入っている生命保険を解約することなく、しかも保障期間はそのままで、以後の保険料負担をゼロにする方法があります。それは「払済保険」にすること。

生命保険の見直し方法のひとつです。

ただし、「払済保険」に変更すると保険金額が減額されてしまいます。

今回は、どんな場合に「払済保険」にすることができるのか? また、その注意点を考えてみましょう。

貯蓄生の高い保険に入っていれば、「払済保険」に変更できる

加入している生命保険を整理して保険料負担を下げたい場合、最初に頭に浮かぶのは「解約」だと思います。確かに、解約をすれば以後の保険料を支払わなくてよくなりますが、その代わりに保障もなくなってしまいます。

「払済保険」は、既契約の保障を一部残して、保険期間は変えず、以後の保険料の支払いをストップする方法です。保険を全部解約すると万が一のときに備えられなくなるので、必要な保障は残しておきたい場合などに有効な見直し方法のひとつです。

ただし、「払済保険」に変更できる保険は限られます。今の契約が終身保険、養老保険、学資保険(こども保険)など、貯蓄性のある保険のみ。つまり解約すれば「解約返戻金」を受け取れるタイプの保険です。定期保険など掛け捨ての保険を「払済保険」にすることはできません。

長く続く低金利のため、貯蓄代わりの養老保険に入っている人はあまり見かけなくなりました。子供の教育費を準備する学資保険は、計画的に入っている人が多く、見直しの対象にはなりにくい。いっぽう、終身保険については、過大な死亡保険金の保険に、高い保険料を払って入っている方をときおり見かけます。そんな方には見直しの余地があります。

「払済保険」にすると保険金額が減額される

実際にあった事例をご紹介しましょう。

  • 44歳・女性・独身・会社員

  • 変額終身保険

  • 死亡保険金:500万円

  • 保険料:月額8,210円(37歳~65歳まで)

この方は独身です。万が一亡くなっても経済的に困る遺族はいません。

また、1千万円以上の貯蓄がありました。そのため、葬儀代など死後の整理資金は貯蓄からまかなえます。

これらのことからすると、この変額終身保険じたいが不要だと考えることもできます。しかし、解約すると、これまで支払った保険料の総額よりも相当少ない解約返戻金しか戻ってこないことが、コールセンターに確認してわかりました。37歳から現在の44歳までに支払った保険料の総額は約69万円ですが、解約して戻ってくるお金は約40万円だと言うのです。

それなら、今後の保険料の支払いをストップして「払済保険」にするとどうなるか? を確認したところ、死亡保険金が500万円から約72万円に減額されることがわかりました。

結局この方は、「払済保険」にすることを選択し、浮いたお金は貯蓄に回すことにしました。生きているうちに自分で使える貯蓄を増やすほうが、「生きたお金の使い方」だと判断したのです。

「払済保険」にすると、「特約」がなくなってしまう点に注意

既契約の保険を「払済保険」に変更すると、その保険についていた「特約」がなくなってしまうことに注意が必要です。保険の契約は、「主契約」という基本部分と、「特約」というオプション部分から成り立っており、「特約」として、入院特約や手術特約、特定疾病保障特約などがついている場合がよくあります。

「主契約」を「払済保険」に変更することで、入院や手術時の備えがなくなって困ることがないよう、別途医療保険に加入するなどして、必要な保障は確保しておきたいものです。

「払済保険」への変更をするには、まず、保険証券を手元に用意し、コールセンターに電話をして、次のことを問い合わせてください。検討材料を手に入れることができます。

  • いま払済保険に変更すると、保険金額がいくらになるか?

  • 払済保険に変更することで、なくなる特約は何か?

執筆者プロフィール : 中村宏(なかむら ひろし)

ファイナンシャルプランナー(CPF認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。(株)ベネッセコーポレーションを経て、2003年にFPとして独立し、FPオフィス ワーク・ワークスを設立。「お客様の『お金の心配』を自信と希望にかえる!」をモットーに、顧客の立場に立った個人相談やコンサルティングを多数行っているほか、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などで生活のお金に関する情報や知識、ノウハウを発信。

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