税金を納付しなければならないのであれば確定申告は義務ですし、義務ではない場合でも還付金があれば確定申告はした方が良いわけですが、確定申告では計算の部分以外でも注意が必要な点があります。
確定申告をしなかったらどうなる?
確定申告をする義務がある人がしなかった場合にはもちろんペナルティーが待っています。それがなかったら皆さん頑張らないでしょうし、当然といえば当然です。
そのペナルティーはどんなものでしょう。そういえばたまに「脱税で逮捕」というニュースを見ることもありますが、それは皆さんの身にも降りかかるようなものなのか。
結論から言えば、通常はそれほど恐ろしいペナルティーはありません。正しい納税額を申告し、そこで発生した税額の10%を罰金(無申告加算税といいます)として納付して終了です。
刑事罰になるのは脱税額が1億円くらいからだといわれています(最近はもっと低い額のときもありますが)。
「そんなもんか」と思うかもしれませんが、過去にさかのぼって数年分の税金を納めなければいけないこともありますし、なによりもそもそも守るべきルールですからね!
納付の方法は?
確定申告の計算をした結果、納税額が出てしまった場合にはどうしたら良いでしょうか。確定申告をしたことがないという方は、当然個人での納税作業もしたことはないはず。
所得税の納税にはいくつかの方法が認められています。
納付手続 | 納付方法 | 必要なもの |
ダイレクト納付 | e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法 | ・e-Taxの開始届出書の提出 ・ダイレクト納付利用届出書の提出 |
インターネットバンキング | インターネットバンキング等から納付する方法 | ・e-Taxの開始届出書の提出 ・インターネットバンキング又はモバイルバンキングの契約 |
クレジットカード納付 | 「国税クレジットカードお支払サイト」を運営する納付受託者(民間業者)に納付を委託する方法 | ・クレジットカード ・決済手数料 |
コンビニ納付 | コンビニエンスストアの窓口で納付する方法 | QRコード バーコード付納付書" |
振替納税 | 預貯金口座からの振替により納付する方法 | 振替依頼書の提出 |
窓口納付 | 金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法 | 納付書 |
今まで主流だったのは窓口納付と振替納税でしたが、キャッシュレスの流れが加速していけばダイレクト納付やインターネットバンキング、クレジットカードでの納付も増えていきそうです。
しかし現状では問題もあります。まず、ダイレクト納付とインターネットバンキングは前提としてe-Taxでの申告が必要となる点。
税務署の窓口で、申告書を持って手続きするような方は選択することはできません。来年からスマホで申告ができるようにもなりますので、使いやすくなるかもしれませんけれど。
クレジットカードによる納付の問題点は手数料です。現状ですと1万円の納税につき76円(税別)の手数料がかかります。
私のような貧乏性な人間にとっては税金を払うために手数料を払うというのはちょっと釈然としない話でもあります。
とはいえ様々な方法が用意されているのはありがたいこと。ぜひ自分に合った納付方法を探してみてください。
利益の計算方法
ここからはちょっと具体的な話になります。
副業について確定申告をする場合、一番大事なのは利益の計算です。その利益は、
売り上げ-経費=利益
という計算算式で計算することになります。このうち売り上げは相手から入金されたものを計上するだけですので工夫や調整の余地はありません。
「税金をちょっとでもセーブしたい」と思ったときに努力の余地があるのは経費の方です。ですから経営者の方々は一生懸命領収書をもらうわけですね。
経費と生活費を区分しましょう
では、そもそもどういうものが経費となるのか。「領収書やレシートをもらっておけば何でも経費になるんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には個人の支出は大きく分けて2種類のものがあります。それが経費と生活費です。
経費は「商売に関係するもの」で、利益の計算に影響します。多ければ多いほど利益は少なくなりますし、税金も減ります。
これに対し、昼ご飯用にコンビニでおでんを買いました、というものは商売とは関係ない単なる生活費です。
こういったものをうっかり経費にしてしまうと、税務署の目にとまったときには「これは経費じゃないですよね。外して確定申告をやり直してください」と言われてしまいます。
この区分に関しては、「経費になるかどうかは国がかっちりしたルールを作っているんでしょ?」と思ってしまっている方が多いのですが、実際には「個人の主観」がベースになっています。
考えてみてください。自分がやっている商売に一番詳しいのは自分ですよね。そうであれば、その支払いが商売上必要なものかどうかを一番ちゃんと判断できるのも自分です。
事情もよく知らないお国や税理士の顔色を必要以上にうかがう必要はありません。
「個人の主観」が入る以上、「絶対的に正しい判断基準」はありませんし、その人なりの正解が存在しますので、自分なりの基準で気楽に考えましょう。
経費にも生活費にも分けづらいものは?
「支払いは経費と生活費に分けられますよ!」と書いてきましたが、厳密にいうとこれは正しくありません。実は第三の選択肢である「経費とも生活費ともどちらともいえないもの」という曖昧なものがあります。
たとえば自宅で副業の作業をしている方ですと家賃や光熱費。プライベートでも副業でも車に乗る方の場合にはそのガソリン代や車の維持費。こういったものは一つの支払いの中に経費と生活費の両方が含まれてしまっています。
法律を作っている方々は相当に賢いですから、そういったことも当然想定しています。そしてその「どちらともいえないもの」を経費にする際の条件を定めています。
個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます)となるものがあります。
(例)交際費、接待費、地代、家賃、水道光熱費
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取り引きの記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
家賃であれば面積や部屋数、自動車関係でいえば使用頻度などをベースに、ちゃんと説明できるようになって初めて経費となりますので、くれぐれも適当な計算をしないように気をつけましょう。
よく「経営者の先輩に聞いたんですが、家賃は1/3までは経費にしていいんですよね?」という質問をいただくことがありますが、そういうアドバイスには軽々しくのってはいけません。その理由については次回ご説明します。
著者プロフィール: 高橋 創(たかはし はじめ)
専門学校講師、会計事務所勤務を経て2009年に新宿二丁目で高橋創税理士事務所を開設。新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」、YouTube「二丁目税理士チャンネル」の運営なども行う。著書に『税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ』(中央経済社)、『図解いちばん親切な税金の本18-19年版』(ナツメ社)がある。『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)が近日発売予定。