副業を始めると税金関係の他にも気になる点が出てきます。税金の話の前にまずはそこから紹介していきましょう。
副業用の銀行口座は必要?
お仕事をするともちろん売上の入金があります。最近では現金でもらう場合よりも銀行口座に振り込まれる方が主流です。
ではその振込は普段使っている銀行口座で大丈夫なのか、さもなくば新しい口座を作るべきか。そこで迷う方もいるようです。
税金の面から考えるとどちらでも構いません。どこに入金されようが売上は売上ですから、税額に与える影響は特にありません。
ですが、私自身は副業のための口座を新たに作った方が何かと便利だろうと考えています。
特に自分で確定申告することをあきらめて税理士に依頼するような場合。確定申告にあたって私たち税理士は「通帳の写しを下さい」ということをいいます。
しかし普段使いの通帳には余計な情報が入っています。私たちもプライベートな情報を知りたいわけではないですから、余計な情報は作業を面倒にするだけ。
そういう意味でも別口座を作るということは税理士からするととてもありがたいです(完全にこっちの都合ですね)。
中には別の口座を作れば売上をごまかせるのではないか? と考える方もいるかもしれませんが、割とばれてしまうものですし、そもそも単なる脱税ですよ!
副業で金融機関からの借入は可能?
副業をされる方の多くは元手のかからない仕事を選択しているようです。確かにお小遣い稼ぎくらいの副業であれば大きなリスクをとる必要はないですからね。
「副業で中古DVDの販売を始める。まとまった仕入代金がほしいから、融資を受けられないか?」という相談を、以前受けたことがあります。
売上規模も小さいし、「サラリーマンをやりながら週末だけ活動」という片手間感があるため厳しいかなと思ったのですが、結果としては問題なく融資を受けることができました。
金融機関が一番気にするのは「ちゃんと返してくれるか」という点。その意味ではサラリーマンとしての給料がある方は、副業で多少こけたとしても給料をベースに返済することができますので金融機関としては貸しやすいのかもしれませんね。
資金が必要であれば、副業の場合であっても融資を1つの選択肢に入れてもよいかもしれません。
副業したら確定申告すべき?
さて、ここからは本格的な税金のお話です。
副業を始めたからといって、今までやってこなかった確定申告を急にやらなければならないものでしょうか。
給料に対する税金に関しては勤務先の年末調整でカタがついているわけですが、勤務先が把握できていない要素がある場合、その部分は自分で確定申告をすることとなります。
たとえば副業で利益が出た場合は、税金が増えることになりますし、ふるさと納税をしたような場合では税金が減ります。しかしこれらの要素は勤務先では把握できませんので年末調整には織り込まれていません。
このように年末調整との差額がでてしまう場合、自分で確定申告をすることとなります。
確定申告は2つある
一口に「確定申告をする」といってはいますが、実は確定申告には2つのもの(本当はもう1つありますが、副業とはあまり関係しませんので割愛)があります。
1つは「税金を納付する確定申告」で、もう1つは「税金を戻してもらう(還付を受ける)確定申告」です。私は前者を「しなければいけない」確定申告、後者を「した方が良い」確定申告とよんでいます。
申告の種類 | 義務/任意 | 期限 |
税額あり | 義務 | 3月15日まで |
税額なし/還付あり | 任意 | 特になし(時効は5年) |
法律上、確定申告が義務とされているのは前者だけ。期限もしっかり定めています。そりゃそうです。義務も期限もなければ誰も税金を納めなくなってしまいかねません。
裏を返すと、納税をしない人は確定申告をしなくても問題ありません。義務ではないので。しかし、国に「確定申告しなさい」といわれなかったとしても、確定申告によってお金が戻ってくるのであればする方がお得です。
国は納付が必要な人に対しては「ちゃんと申告と納付を!」といってくるくせに、「あなたには還付金がありますよ」というような話はまったくしてくれません。なんかちょっと不親切。
とはいえ決められた制度ですから、還付を受ける場合には自分でそれを認識して確定申告しなければなりません。得する話ですから頑張ってみましょう。
利益があっても確定申告しなくて良い場合
基本的には給料以外の利益があれば確定申告をしなければなりません。追加で税金が発生してしまいますので。しかし、微々たる利益にまで厳密に税金を課そうとすると、払う方も取り立てる方も大変です。
1,000円の税金のために仕事を休んで税務署に行ったり、税務署の職員さんが時間を取ったりするのは不毛です。ですから、給料以外の利益が少ない方は確定申告をしなくても良いルールが作られています。対象となるのは次のような方です。
(1)2カ所以上から給与の支払を受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
(2)1カ所から給与の支払を受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
ともに20万円という基準はあるのですが、ここで気をつけなければいけないのは(1)は給与の額面であるのに対し、(2)は利益である点です。
売上じゃなく利益。つまり収入が100万円あっても経費が90万円あれば利益は10万円なので確定申告をしなくて良いわけです。
もちろん税務署に聞かれたときには経費90万円がなんなのかの説明をしなければなりませんけれど。
と、「確定申告をするしない」のお話をしてきましたが、これはいったん計算をしてみないと結論が出ない問題です。どうせ計算をするのであれば確定申告をしてしまった方が良いような気もしますよね……
著者プロフィール: 高橋 創(たかはし はじめ)
専門学校講師、会計事務所勤務を経て2009年に新宿二丁目で高橋創税理士事務所を開設。新宿ゴールデン街のバー「無銘喫茶」、YouTube「二丁目税理士チャンネル」の運営なども行う。著書に『税務ビギナーのための税法・判例リサーチナビ』(中央経済社)、『図解いちばん親切な税金の本18-19年版』(ナツメ社)がある。『フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑』(中央経済社)が近日発売予定。