「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第50回のテーマは「家事はいつも脳内小姑との戦い」です。

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恐怖!!!!! 脳内小姑!!!

常々ことあるごとに私は「家事はそんなに頑張らなくていい」とか散々言ってるわけですが、散々わざわざ言うってことは言わなきゃならない価値観が自分の中にあるってことです。私の中ではそれを「脳内小姑」と言います。『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎刊)という単行本でも書いたんですが、お客さんが自宅に来る前や、自分が人のおうちに行くときなどに、むくむくと「脳内小姑」が出てくるんですね……。

「正しい家事かくあるべし」みたいな価値観をすり込まれちゃってると、ホコリとかトイレや水回りの汚れのレベルが気になってしまいます。その辺って「どれくらいマメに掃除してるか」が計れる場所なんですよね……。

そういうポイントについて「気になる、気が付いてる」のと「気にならない、気が付かない」では、かなりの差があると感じています。

私の場合、「あそこの汚れが気になる」と気が付くたびに「これくらいでいい。死なない程度に清潔だ」と「気にしない」ようにしています。でも、気が付いてるわけで、そのときに脳内に「あらあら、いいのかしら~」と罪悪感とともに「脳内小姑」がやってくるわけです。

仕事も育児もしている。時間は限られてる。だったら「このくらい」まででOKと日々割り切る必要があります。でも、できるんだったら掃除したほうが気持ちいいですよね。わかっちゃいる~けど~でも、いいの~。楽に生きるの! と日々戦っています。

で、最近むっちゃくっちゃキレイなおうちにお邪魔しまして、私の「脳内小姑」が「素晴らしい! 完璧ね! 隙がないわ!!」と大絶賛したわけです。「ワーキングマザーなのにどうやってるの!?」と思ったのですが……さ、さては寝てないな!? と思いました。仕事して家事も完璧にするなら、削るのは睡眠時間ですよね。……でも、私は寝たいんです。

私も若いときは「寝られないくらい忙しいほうがいい」と考えていました。寝ないでやりたいことはたくさんあったし、たくさん寝ると甘えてるみたいでダメだと思っていたこともありました。太く短く生きる! みたいな。

でも、アラフォーになって子どもができてから、「息子がおじさんになるまでは生きていたい」と思うようになりました。

マンガ家の水木しげる先生が「たくさん寝ないと早死にする」とおっしゃっていたそうで、確かに有名で偉大な名だたるマンガ家の先生は早く亡くなったりしてることもあり、「私も水木先生を見習おう」と、なるべくたくさん寝る方向で考えています。子どもができたほうが寝る時間は減ると思っていたのですが、夫婦で家事シェアをして自分の分担も頑張りすぎないようにしたら、ある程度の時間、寝られるようになりました。

と……ここまで言っておいてなんですが、私の「脳内小姑」は「掃除・片付け」にしか出てきません。

炊事とか料理についてはまーーーったく出てこないのです。初婚で毎日頑張って元夫のために料理を作った後、離婚したらまったく料理ができなくなっちゃった私なのですが、それについて「ちゃんと料理しなさい」という「脳内小姑」は出てきません。

ちなみにうちの実家の母は、ものすごく料理上手で毎日いろんな手作りの料理を食べていました。ちゃんとした「食育」をされて育ったほうだと思います。だからこそ、初婚では「そうあらねば」と毎日頑張ってやっていたし、そのときは「脳内小姑」がガンガン私に指示していました。

にもかかわらず、現在はまったくこだわりがなくいいかげん……。たぶんもともと料理や自分が食べるものについてのこだわりやモチベーションが低かったというのもあると思います。でも一番の理由は、パートナーが炊事担当になってくれているから……。「脳内小姑」が出てくる背景には「責任感」もあります。「私がやらなきゃ! でも、こんなので大丈夫かな?」という葛藤からも「脳内小姑」が現れるのです。

炊事担当になった我がパートナーにもばっちり「脳内小姑」が現れました。「家族の健康を担う食事を担当している」という責任感から「こんなんで大丈夫か?」と葛藤すると「あ~らマコトさん、こんなお料理でいいのかしら?」と脳内に小姑のセリフが流れてくる……。「脳内小姑」は性別じゃなくて役割による「規範・理想」と、自分とのギャップで現れるんですね!

我が家は「掃除・片付け」は私、「炊事」はパートナーという分担なので、お互いが「脳内小姑」に苦しめられているときは、「もっと気楽でいいかげんでも大丈夫だよ」とお互い声かけするようにしています。

「脳内小姑」の言うコトを聞きすぎると寝られなくなったり、いろいろ大変になったりします。「脳内小姑」の撲滅は無理だとしても、ある程度距離を取ってお付き合いすることを心がけたいなと思っています。

新刊『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/税込み1,080円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。